見出し画像

トニー賞授賞式が近い

※趣味に関する日記です、猫成分はありません。

今年のトニー賞ノミネートの確認をしていた。その中の"A Strange Loop"という新作ミュージカルの簡単な説明を読んだ瞬間、またバックステージミュージカルか?と安易に嘆息しそうになった。
ミュージカルというジャンルは、他の演劇形式に比べるとやたらとバックステージ物もしくはショービズ関連の題材の作品が多い。ぱっと思いつく有名な物だけでも、オペラ座の怪人、プロデューサーズ、ドリームガールズ、アニーよ銃を取れ、キスミーケイト、ヘアスプレー、キャバレー、ジャージーボーイズ、グレイテストショーマン……ほら多い。もう少し日本での知名度が落ちる物で言えばドラウジーシャペロンやサムシングロッテン、他にももっといっぱいある。シカゴだってショービズでの成功を夢見るロキシーの話なので、ある意味同類だ。(バックステージミュージカルに関する面白い見解はこちらを参照の事→https://www.jstage.jst.go.jp/article/ctr/15/1/15_33/_pdf
だから、嘆息しそうになった、いや実際嘆息した。けれどその嘆息を今は取り戻したい。
理由は"A Storange Loop"のウィキペディアであらすじを読んでいただければきっとお分かりになると思う。英語版にしか記事がないし、ラストまで説明されているので完全ネタバレになってしまうので、これから見に行く予定がある方は避けた方が良いかもしれない(とはいえこの作品が日本で翻訳上演されるとはとても思えないのだが)。

かいつまんで説明すれば、ブロードウェイでライオンキングを上演する劇場の案内係をしながらミュージカルを制作している若い黒人クィア男性の、現実と創作と脳内会議を扱ったミュージカルである。
……かいつまんだはずの説明だけでも濃すぎるほど濃い。人種、家族、同性愛、HIV、仕事、創作、そしてマイノリティコミュニティの中ですら起きる差別。ありとあらゆる問題がこれでもかと詰め込まれている。そしてそれを見事にミュージカルに昇華しているのだそうだ。Netfli映画"Tick, tick…BOOM!"を思い出される方もいるだろうが、おそらくそれ以上の濃厚さだと思われる。見られるものなら見てみたい……が、先ほどかっこ付で書き記したが、これはおそらく日本では見られないだろう、と既に諦め気味だ。なぜなら、この作品が描く問題が、日本では理解しづらい『と思われている』問題だからだ。RENTやラ・カージュ・オ・フォール、キンキー・ブーツのおかげで同性愛に関しての作品の上演ハードルはだいぶ下がったし、人種問題であってもヘアスプレーのように明快にハッピーエンドになるフィールグッドな作品ならばみな喜んで見る。けれど、これはどう考えてもそういう話じゃないだろう。問題は解決せず、それどころか混沌とした塊のまま観客に投げつけられるミュージカルだ。日本にも同じ問題があるはずなのに、TPOや事情に応じて『なかったことにされる』類の題材だ。
もちろん、アメリカの南北問題やユダヤ人差別問題が主題となっているパレードが翻訳上演されるご時世なので、絶対に無理とは言い切れないが、望みは薄いだろう。ブックオブモルモンやハミルトンのように、ニューヨーク、もしくは他の英語圏の大規模な劇場街にいかなければ見られない作品になるはずだ。見たいなぁ……とても見たいなぁ……でもニューヨークに行く金も暇もないなぁ……金と暇があった所で、猫を置いては行けないなぁ……

猫成分がなかったはずの話にまで猫が顔を出したので、今日はこれまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?