大きすぎるはみ出し~ジーグフェルド・フォリーズ

前回まででミュージカルの源泉と言われる5つのジャンルのおさらいをしたのですが、今回はその中でも特にミュージカルに直接つながるレビュー『ジーグフェルド・フォリーズ』に関してのお話です。
実は、ここの話を詳しく調べて行くうちに、関わっていた人の逸話などがあまりにも興味深くて調べ物沼にずっぽり嵌まり込んでしまい、その先に進まなくなってしまったんです。調べると言っても英語版のWikipediaのリンクを飛び回りまくり、Googleで人名や作品名を検索をしまくって英文と格闘する程度の事しかできていないのですが、それだけでもものすごく面白い事を色々と知ることができました。
なので、これは備忘録に付属した、長すぎるトリビアのような物だと思ってください。

ジーグフェルドとは何者か

フローレンツ・ジーグフェルド・Jr(1867~1932)
父はドイツ移民で音楽学校の経営者。裕福な家庭に育った。1893年、シカゴ万博の客を見込んで父が作ったナイトクラブが失敗、ピンチを救うため「近代ボディビルの父」ユージン・サンドウを使ったショーや宣伝で客を掴む。この経験で”性的魅力は強い集客力を持つ”と”商品の宣伝で露出を増やし、演者の顔を売る”という方法の有効性を学ぶ。1896年、ポーランド生まれのフランス人女優アンナ・ヘルドを牛乳風呂のコマーシャルを使ってスターにする事に成功。メディアを使ったスターメイキングの仕組みを確立する。1907年、パリのフォリー・ベルジェ―ル(※1)のショーを参考に、『ジーグフェルド・フォリーズ』スタート。アンナ・ヘルドとは1897年から事実婚状態だったが、ヘルドが既婚者だったため正式に結婚しないまま1913年に別れた。1914年、ビリー・バーク(※2)と結婚、1女をもうける。1929年の世界恐慌をきっかけに財産を失い、負債を追う。1932年、胸膜炎で死去。残された負債は巨額だったが、未亡人となったバークは20年以上休みなく働いて返済した。

ショーの内容

歌手、寸劇、ミンストレルパフォーマー、曲芸、活人画、ダンスなどのレビューショーが行われた。ショーに出ていた若い女性たちは”ジーグフェルドガールズ”と呼ばれ、大人気だった。とある演劇評論家はジーグフェルドガールズだった母を回顧して、
「当時の母は、中に宝石の仕込まれた花束以外受け取らなかった」
と語った。
レビューは人気となり、フォリーズ以外にもレビューショーが上演されたり、レビューの専用劇場などが作られたが、現在も常設でレビューを行っているのはラジオ・シティ・ミュージック・ホールだけである。


※1 フォリー・ベルジェ―ルとは
パリ9区リシェ通り32番地に建てられた歌劇場。トレヴィズ通りとリシェ通りの角にあったことから、1869年5月2日『フォリー・トレヴィズ』としてオープン。しかし同名の貴族から苦情が出たため、近くにあるヴェルジェ―ル通りにちなんで『フォリー・ヴェルジェ―ル』と改名。
フォリー(folie 複数形folies)とは狂気、激しい情熱、出費などを意味するほか、貴族やブルジョワのヴィラ、パヴィヨンも意味した。ただし、住居用ではないフォリー(folly、装飾用建築)とは異なる。
開店当時は無名の歌手によるオペレッタやパントマイム等がメインだったが、1870年にアクロバットや蛇使い、カンガルーボクシング、世界一の大男などの見世物的ヴォードヴィルショーが始まると人気となり、大人の社交場となった。
1882年、マネの『フォリー・ベルジェ―ルのバー』が描かれた。背景の鏡には空中ブランコの様子が映っている。
1886年に経営者が変わり、薄着のコーラスガールたちによるレビュースタイルの音楽ショー”Place aux Jeunes”が大ヒット。ダンサーの衣装は次第に過激になっていった。
ロートレックのお気に入りのモデル、イヴェット・ギルベールもここの舞台に立っていた。他にロイ・フラー(サーペンタインダンスなどモダンダンスの最初のパフォーマーと言われる女性)、ジョセフィン・ベーカー(黒いヴィーナスと呼ばれた女性ダンサー)、ジャン・ギャバン(両親ともにミュージック・ホール俳優だった)、チャップリンなども出演した。

※2 ビリー・バーク(1884~1970)
バーナム&ベイリーサーカスの歌手兼クラウンの、ウイリアム・”ビリー”・バークの娘として生まれ、アメリカやヨーロッパの巡業に同行して育つ。自身のステージデビューは1903年。『ジーグフェルド・フォリーズ』にも出演した。のちには映画女優として活躍し、『オズの魔法使い』のグリンダ役で知られる。


このビリー・バークの事を知り、「ああああ!!あのグリンダの人か!!」と思ったところから、他にどんな出演者がいたのだろうかと思い立って調べ始めたのが泥沼の始まりでした。ミュージカルや映画、果てはディズニーアニメに至るまで、フォリーズの出身者の活躍の場は想像以上に広かったのです。次回は、数多いフォリーズの出演者の中から、興味深い人物たちを取り上げて紹介していきたいと思います。

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