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盆に来るおばさん

帰省というのは否応なしに「伝統的家族観」に想いを馳せてしまうイベントであり、とくに盆の帰省は一族が集まって墓参りなど様々な「先祖を想う儀式」が行われるので、「自分は自分で自由に生きていきます!」といった普段の独立独歩な自分を一旦脇に置かされがちである。

お前もなんだかんだいうても「血族」の一員であり、連綿と続く大いなる「家族」の一部であり、続いてきた「命のバトン」ってやつを次代に繋ぐことが結局人間のつとめなのである、と。そういう”なんかでっけえ波”にひとたび入ってしまうと、いつもは波に抗って生きていたいはずなのに「なんか、こっちが正しいのでは…?」みたいな気がだんだんしてきてしまうから不思議だ。生まれ育ったこの波に飲まれてそのまま生きた方が、本当は楽だったりするのだろうか?本当に?

しかし、結婚しても子供を持とうとせず、職業も「銀行員」とか「公務員」とか「専業主婦」とかではなく、なんかパソコンでチャカチャカよくわからないことをやっている30代の娘というのは、やっぱり”なんかでっけえ波”の中では異物寄りの存在で、そもそもお盆なのに義実家にも行かないで実家に来ている時点でやっぱり異端なのであった。

異端児だけれど実家は憎みがたいところがあるし、家族といがみ合っているわけではないから帰省はしたい。なんだかんだ楽しい。しかし、いつまでも次の世代を生み出さない娘が帰省してやることといえば、台所の手伝いか、外に遊びにいくか、子供らとUNOに興じるなどといった、およそ小五の夏休みと変わらないラインナップである。
これが自分の子供を連れた帰省となればやることも変わってくるんだろうが、母になる予定はないので「娘の延長戦」としての帰省が繰り広げられる。これが30代だからまだいいのかもしれないが、50や60になったとき私は実家でどうしたらいいのだろうか。

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子供を持たない選択にまつわるあれこれ、夫婦二人での暮らし、地方と東京を行ったり来たりする生活などにつ…

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