ホームビデオに映っていたもの
またお盆の帰省の話。
実家というのはちょっと気合いを入れて帰ったはいいもののすぐにやることが尽きる場所であり、かといって落ち着いて本が読めるわけでもなく(「家族」のペースで動く空間なので「個人」のアクティビティには勤しみにくいのだ)、暇を持て余した私と妹は物置から昔のホームビデオを引っ張り出してきた。
なつかしのハンディカムで撮影されたテープたちは物置の引き出しいっぱいに入っていた。「平成8年 ◯◯小2運動会/△△年少ピアノ発表会」「平成10年 糸魚川家族旅行」などと手書きでキャプションしてある。親との思想の合わなさにグッタリすることも多いが、こういうふうにマメに家族の記録を残そうと思った当時の親たちはいまの私とそう違わない歳なのであり、彼らを同世代の大人として思うとき、いままでにないくらい親を近しい存在に感じる。
茶の間で放映したらウケがいいだろうと思って、「△△誕生」の巻を持ってきた。妹が生まれた病院での記録だ。
ハンディカムをテレビにつなぎ、「テープを巻き戻す」という、ここ15年はしていないことをして映像を映し出す。産院の病室のベッドに座る若い母、周りにいる兄たちと私。小さいベッドで寝ている生まれたての妹、撮影する父の声。全く覚えていないはずなのに、始まってみれば記憶が蘇ってくるから不思議だ。
ほっこり幸せファミリー映像ではあるのだが、私がいたたまれなかったのはカットが切り替わったあとだ。
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