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コングのグルメ〜第3話〜

暑い。

外に出る気も失せるぐらい、暑さがやる気を奪っていく。

こんな日はクーラーの効いた部屋でアイスを食べながらゴロゴロするのもいいなぁ。

よし。

次の休みはゴロゴロしよう。


そう思いながらいざ迎えた休日になると、『出来たらいいのになぁ』と思っていた贅沢を選択出来ないのがKONG。

時計を見ると

朝の5時43分。



「今日の夕飯は17時だな。」



さっそく冷蔵庫を開け、メニューを考える。


うーん。


悩む。


非常に悩む。

こうも暑いと必然的に"サッパリ"としたくなるが、いざ晩酌のスイッチが入ったら、


『ガッツリしたのにすれば良かったなぁ。』


と後悔してしまう事が多々あるのが夏の夕飯である。

だが今の気持ちも大切。


「サッパリか‥‥」

サッパリ‥‥。

サッパリ?

「サッパリ!!」


「サッパリか!!!」


「これだ!」と言わんばかりに、鳴りもしない指パッチンをして、KONGの体内に搭載されているAIロボットに声を掛ける。


「アレクs‥‥おっと
アンドリュー。今日の日程は?」


『本日ハ、午前10時カラ、歯医者デス』


うむ。


続いて


「Hey。しり。調子はどうだ?」


『昨日モ、『カライモノ』ヲ、タベテナイノデ、痛クナイデス』


うむ。


いける。


何もサッパリするのは口の中だけである必要はない。


体も心も"サッパリ"させる激辛料理がいい。


想像してみよう。


何事もシュミレーションは大切だ。


風呂上がりにキンキンに涼しい部屋でキンキンに冷たいお酒を飲み、辛い物を食べて気持ちいい汗をかく。

その後再びシャワーでも浴びるのも良し。


おぉ。


絶対楽しい。


なんか、もう楽しい。


そうと決まれば17:00に標準を合わせて、仕込みを開始する。

ゆで卵を作り、

鳥肉。
ニンニク。
塩、酒、醤油、水をいい感じに混ぜた物。

タバスコ1/3ぐらい。

さらにチリペッパーを加えて煮る。

『タバスコアドボ』である。


いいぞ。


「コレぞ男飯って感じだ。」


最後に弱火でグツグツしたら後は放置。


その間に亀の水換と家の掃除を終わらせる。

時計を見たら8時。


「予定通りだ。」


歯医者にはまだ時間がある。


歯を磨きながら、この汗だくな姿のまま歯医者に行くのは申し訳ないので、シャワーを浴びようと服を脱ごうとするが、一旦手が止まる。


本当にこのタイミングでいいのか?


再びAIに尋ねる。


「へい。しり。
シャワーは今でもいいのか?」


『‥‥トイレハ地獄デス。大量ノ汗ガ予想サレマス‥‥』

ふぅ。


あぶなかった。


危うく、シャワーの後にまた汗をかく所だった。

こうして、午前中に家でやるべき事を終わらせ、シャワーを浴びて、ついでに風呂掃除、洗濯機と風呂のタイマーをかけて歯医者に向かいう。

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歯医者が終わり、一旦家に戻り『タバスコアドボ』に再度火をつける。


洗濯機が止まっている事も確認して、洗濯物を干しながら考える。



う〜む。


「もう一品欲しいな。」


冷蔵庫の中身をガサゴソして、もう一品の準備をする。

ニラ
豚のホルモン
キムチ


「‥‥後はもやしと炒めるだけだ。」


完璧。


ふと、
隣でグツグツしている『アドボ』が気になったKONG。

紳士が水溜まりにハンカチを敷いてレディーをエスコートとるような"ヒラリ"とした手つきで、そっと鍋の蓋を開ける


「あ"ぁぁ〜!!
目がぁ〜〜!!!」


煮えたったタバスコの湯気により視界を奪われる。 

まるで『ムスカ大佐』


思わず

「これはわずかだが、心ばかりのお礼だ。とっておきたまえ」


と、蓋をする。


だが、辛さは申し分なさそうだ。


アドボの火を切ってクーラーを16時にセットし、いつもの休日のように外に飛び出す。


もちろんいっぱい汗をかく為に徒歩で。


プラプラしなが本屋に行って集めている漫画の最新刊を買ったり、適当に時間を潰して時計を確認すると時刻は16時30分。


「ふふふ。

リビングが楽しみだ。」


そのまま風呂に直行して汗を流し、
"サッパリ"した姿でリビングの扉をあけたKONG。


「おぉぉぉぉお‥‥」



まるで別世界。


自分の家とは思えない程の快適さ。


そのまま冷蔵庫に進みビールを体内に流し込む。


「‥‥悪魔的うまさだ。」


この悪魔的気持ちよさにソファから動けず、数分間カイジごっこが行われる。


これぞ休日。


楽しくて仕方がない。


暑い所から汗をかいて、キンキンの部屋でキンキンのビールを飲む。


「こういうのでいいんだよ。」


海面に漂うクラゲのようにフワフワしながら骨抜きにされたKONG。


そして、


ここにきて、

 

言ってはいけない言葉を呟く。




「ざる蕎麦食べたい‥」



これだけリラックスしているのに『辛い物』を食べて汗をかくなど効率が悪すぎる。


しかし腹は減っている。


『これじゃない感』が押し寄せる中、アドボに火をつけ、一口食べる。

「っ!!!!」


激辛である。

だが、


不思議と箸が止まらない。


「コレはコレでありだな。」


食べ始めたら食欲エンジンもかかり炒め物も作る。


「うまそうだ。」


大量の汗をかきながら、辛い物をムシャムシャ食べる。



「夏って感じだ。」



一息ついた瞬間、呼んでもいないのにKONGのAIが反応する。


「Hey。しり。
どーした?」


『空キッ腹ニ、アルコールト"カライモノ"‥‥モウダメデス』


こうして、


休日の最後は地獄的暑さのトイレから出れなくなり幕を閉じた。


それでは!

また!

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