クリスマスの時期が来ると
どうも。
KONGです。
アッと言う間に12月。
賑やかな街並みに浮き足だってしまうこの時期。
KONGは洗濯物を干し終え、一息つきながら人生でたった一度だけ呼ばれた事のあるクリスマスパーティーを思い出す。
さてさて。
遡る事十数年前。
寮生活を終えて一人暮らしをしていた22歳のKONG。
同期の寮仲間達も二十歳を越えお酒を飲める年になるものの、卒業ともに離れ離れになり、それぞれが己の目標に向かって日々奮闘していた頃。
ある日。
突然、寮の仲間(ツヨシ(仮))からメールが入った。
【今年のクリスマス前にみんなでパーティーしよう!】
なんと。
人生で初めて"クリスマスパーティーの招待"と言っても過言ではない文章が送られてきたのだ。
心が踊るKONGだったが『暇』だと思われないように、その日の夕方に連絡をした。
【いけるんやけど、みんなって誰だ?】
(ピッ!)
そう。
"みんな"ってのが気になってしまう。
過去に、この男からの連絡で
「"みんな"食堂にいるよ。」
やら、
「"みんな"でコンビニ行こう。」
と言われて、"みんな"がいた事は殆どなかったのだ。
その時、食堂に行った時も知り合いじゃない不特定多数を含んで
「ほら"みんな"いるじゃん。」
と、この男は
"みんな"="知らない人も含む"。
ひょっとして『ドレミファドーナツの住人なんじゃないか説』を唱えられてもおかしくない為、一年ぶりの再会で『なんでやねん!要素』を取り除く為に一応聞いておく。
仮にもし"2人"なら、それはそれでいいから先に言って欲しいKONGであった。
すると、すぐさま返信は返ってきて
【タッピ(仮)ボッチ(仮)キナコ(仮)は来るって。】
ふむ。
(寮のメンバーばかりではないか)
こちらもすぐさま返事をする。
【本当にみんなだな。】
(ピッ)
ホッと一息ついた時に
【あと、俺の知り合いの女の子達が来る予定。】
予期せぬ文章にKONGの時が止まる。
「なんだと?」
もう一度読み返す。
【あと、俺の知り合いの女の子達が来る予定。】
この男…
『魔王(寮長)』と戦った戦友であり、苦楽を共にした寮の仲間が揃うというのに見知らぬレディーを参加させるだと?
いったい何を考えているんだ?
上等な料理にハチミツをぶちまけるが如き思想。
この行動にKONGは感情を抑えながら、震える指でメールを打つ。
【大義であった!!絶対行く!】
(ピッ)
こうして、アニメの世界でしか存在しないと思っていたクリスマスパーティーが幕を開ける。
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クリスマスパーティーの参加が決まり、久しぶりに他のメンバーに連絡をするKONG。
なんせ、
久しぶりに会うにも関わらず、そこに知らない人達もいたらヨソヨソしくなるに決まっている。
当時は現在のような『グループLINE』的なのがなく、それぞれが個々に連絡を取るか、『転送』などで情報を共有するぐらいしか手段を知らなかった。
すると不思議な事に、連絡をすればするほど知らない情報が沢山出てくる。
『女の子は5人いるらしい。』
『女の子は3人になったらしい。』
『女の子が早く帰るから、少し早めの時間からスタートするらしい』
『プレゼント交換をしたいから3000円分のプレゼント、を買っとくらしい。』
『飲み会ではないらしい』
はいはい。
よくわからん。
疑問はあるものの、KONGは当日までに出来る事としてプレゼントを買いに行く事に決める。
が、
合コン的なのにも参加して来なかったKONGは『何を買うべきが』『どうするべきか』全くわからない。
悩みに悩んだ結果、毎度お世話になっている同じ駅に住む先輩に連絡をすると、快く『プレゼント探し』を引き受けてくれ、後日一緒に買い物をしてくれる流れとなった。
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買い物当日。
待ち合わせ場所に到着したものの、一向に姿を表さない先輩。
距離は遠くないので結局家まで迎えに行き呼び鈴を鳴らす。
(ピンポーン)
部屋着のまま登場した先輩は、そのまま上着を羽織り外に出ようとする。
KONGはおもわず
「ちょい!着替えないんすか?」
と、聞くと"やれやれ"といった表情で
「コレだ…
プレゼントを新宿とか街で買う必要はねぇのよ。」
と、言いスタスタと歩いて行く。
歩きながら先輩は半笑いで
先輩
「したっけぇ。
オメーはどんなプレゼント買おうと思ってたの?
クリスマスだからひっくり返すと雪がブワァ〜ってなるヤツか?w
クリスマスだからツリーか?w
うひひw」
K「何もわからないから、手伝ってもらってるんです。」
先輩「どーせオメェの事だから、男よりも女の子意識してんだべ?
オメェのプレゼントは男が持って帰る可能性もあるんだべ?」
間違ってはいない。
だが男に渡すとなればこんな相談はしていない。
先輩は溜め息混じりに
「ダメだなぁ。
プレゼントは誰が何あげたとかより、インパクト残した奴の勝ちなんだから、来年にはホコリ被っちゃうような物はダメなんだよ。」
確かに。
そしてスタスタと歩き躊躇もなく店に入り
「コレだろ。」
と、ある商品に指をさす。
「マジっすか?」
予想外の商品を選び、
「コレならインパクトはデカいに違いない。
だってこんなプレゼント見た事ある?w
いやいや、想像しなさい?
お前の顔で"飾る系"のプレゼント渡したら怖いだろw」
ぐうの音もでない。
KONGは少し傷つきながらもプレゼントを無事購入し、後は当日を待つだけとなった。
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迎えた当日。
指定された小さなビルの前に辿り着くと、タッピ、ボッチ、キナコの3人は既に到着していた。
「おう!!!」×4
久しぶりの再会に少し照れてしまうKONG。
「元気そうだね。」
と、タッピから言われ、彼からそんなアニメのワンシーンのような言葉が出て来ると思わなかった為、一気に大人びた印象を感じてしまう。
(もう"ジャングルの王者ターちゃんゴッコ"なんてしないんだろうな。)
少し自分が取り残された気持ちになり寂しさを感じてしまう。
既に卒業してから2年近く経っているから不思議な事ではない。
すると、ボッチが
「で!
今日は何の会になるんだ?w」
と、4人で今回のクリスマスパーティーの憶測が始まる。
タッピは
『俺はツヨシの事だから女の子は来ないと思う。』
とか言っているが、ちゃんとプレゼントらしき物を持っている。
ボッチは
『プレゼント交換なんて絶対ないと思うから、俺3000円入れた封筒持ってる。』
と、封筒をチラチラ見せてくる。
KONGが
『ときメモの伊集院家でやってるクリスマスパーティーを想像して来た』と伝えると
2人は笑いながら
『絶対ない!!!』
と完全否定されてしまい、数日間の浮かれ気分が開始前に崩されてしまう。
なんてこった。
唯一の救いはキナコがKONGと同様に"華やかなクリスマスパーティー"を想像しており、それを見越してスーツ姿だった事だ。
たが、
決して可能性が消えたわけでもないので、最後まで望みの火を消さないようにお互いで励まし合う。
少し雑談をしていると、遠くの方から手を振りながら小走りのツヨシが姿を見せる。
あの年齢で手を振りながらの小走りは非常に愉快であった。
目の前の信号で止まっているツヨシを見ながら全員が言う。
「ひとりだな。」
「ひとりだ。」
「でもアイツもスーツじゃね?」
「アイツいつまで手を振ってんだ。」
「なんなんだアイツ。」
「やっぱひとりだよな?」
「一体なんなんだアイツ。」
「まだ手ェ振ってんだけど…。」
「笑ってんだけど。」
「アイツのプレゼントデカくね?」
「誰が手ェ振り返してやってよ。」
「何がおかしいんだ?」
「なんでスーツなんだ。」
久しぶりの再会とはいえ、登場だけでここまで小言を言われるヤツも珍しい。
息を切らしながら登場したツヨシは、
「いやぁ〜ごめんごめん!早く店入ろう!」
と、
待たせていた時間を巻き返すかのように、イソイソと予約していた店に4人を案内し手際良くドリンクを注文して
「ふぅ…」
と一呼吸おき、集まったメンバーにこう言った。
「今日は集まってくれてありがとう。」
KONGとキナコは不貞腐れている。
タッピが
「んで、今日は何なんだ?w」
と、聞くと
「俺、東京出て青森に帰る事になった!」
予想していなかった一言に言葉を失う一同。
(……。)
毎日会っていた頃から、数年ぶりに会うぐらいの関係になったが、いざ"東京を離れる"と聞くと寂しくなってしまう。
「マジか…」
「そっかぁ…」
それぞれが言葉を漏らす。
少し暗くなりそうな雰囲気を察したのか、ツヨシは登場した時と同じようなテンションで
「何年も会ってないから別に今更って感じになるしぃ、一生会えないわけでもないけどぉ
俺からお別れ会やってって言ったら誰も来てくれないんじゃないかなぁ?
と思ってクリスマスパーティーを企画したとさ!
だから女の子は来ませぇーん!」
不貞腐れていたキナコは
「だったらそう言えばよくね?」
と、言うものの、ツヨシは笑いながら
「いやいや、キナコ絶対来ないでしょ。
女の子って言ったら一番早く返信来たし。」
残念ながら恐らくその通りだろう。
隣に座っていたボッチがキナコの肩を"ポンポン"と叩く。
そして、
何かしらのプレゼントが欲しいかった事、
それは"お別れのプレゼント"よりも男達が"女の子の為に用意したプレゼント"の方が後々笑えると思った事を打ち明けられ、各自が公開処刑される。
なかでも、タッピのプレゼントから『スノードーム』が出現した時は、KONGは先輩からのアドバイスをそのままぶつけてやる機会となった。
……。
ついにKONGのプレゼントが開けられる。
(ガサゴソ)
頭にハテナが浮かんでいるのがわかる。
中身を理解したツヨシは
「コレってさぁ!!マジか!」
(ゴソッ!!)
袋から姿を現したのは
『3000円分の洗濯バサミ』
お酒が入っている事もあり、愚の骨頂男子達は大笑いだった。
胸を張ってKONGは伝える。
「洗濯する度に、俺を思い出すがいい!
多分数年は持つだろう!」
こうして、KONGの偽クリスマスパーティーは幕を閉じた。
おそらく、この時期に洗濯をした誰かしらは思い出してくれるだろう。
このnoteを書いているKONGのように。
それでは。
また。