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魔法にかけられて

どうも。


KONGです。


毎朝起きて外に出る。

蝉の鳴き声と数十年後が心配になる程の暑さを肌で感じながら何度もこう呟く。


「夏だな。」


さてさて、本日はここ数日で何度も見かけた『お祭り』でのお話。

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遡る事数十年前。


当時、小学1年生だったKONG少年。


その日は、遊んでいた公園の近くの神社に提灯が飾られ『お祭り』の準備が行われている事に気づく。

少しずつ仕上がっていく屋台の存在を


『誰かに知らせなければ』



と、謎の使命感が湧き出てしまい、普段より早めに家に帰り親にその事を知らせた。



親も『お祭り』の開催を知っており、既に同じアパートに住んでいる友達の家族と一緒にお祭りに足を運ぶ夢のような流れになった。



お友達と祭り。


当時のKONGからすれば、太陽が沈んでからの活動は特別感があり心を躍らせる。


神社に到着すると、親から500円を渡されて各自自由行動になった。

 

ウキウキしながら友達と歩くKONGだが、少年KONGの脳内は大忙し

『500円で好きな物買っていいんだ!!』


その事ばかり考えており、最初に目に飛び込んだ『フランクフルト』の文字で脳内ブレーキが制御不能となり、当時一本150円の『フランクフルト』を3本買うのだった。

祭の醍醐味、

屋台見ながらを練り歩く事もせず、

一店舗目から所持金を使い果たすこの行動。



一緒にいた友達からは、



「えぇぇーー!!!

もう、終わりじゃん!!!」



と、ツッコミをされるが、


「おでは、コレでいいんよ!!」


と、開始数秒で別行動。


神社の狛犬付近にしゃがみ込み『フランクフルト』を頬張る食いしん坊を発揮する。


(ムシャムシャムシャムシャ。)


「おいひーな。(美味しいな)」


しかし、


2本目に口を付けようとした時、フランクフルトに異物が付着している事にKONG少年は気付く。




それもそのはず。


食べていた場所は入り口付近で、人が一番往来する場所なのだ。

そこに子供がしゃがんで食べていたら、砂埃やら何やらは付着するに決まっている。

フランクフルトがあまり美味しそうに見えなくなるが、買ってしまった物は仕方がない。

付着した砂埃等を『ピッピッ』と手で払い除けるが、ケチャップやら油やらで手もベチャベチャになる始末。


それでも1人で食べる少年KONG。


ようやく

3本目が食べ終わり、
友達を探そうとその場に立ち上がると、目に飛び込んで来たのは
『りんご飴』
『くじ』
『ポテト』
『焼きそば』
『イカ焼き』
等の屋台。

(え…。)

(こんなにあったんじゃ……)

よく周りを見回すと、食べる為の小さいテーブルも数箇所設置されている。



(こんな場所もあったんじゃ……)



『持ち慣れない500円』『お祭り』の魔法により周りが見えなくなっていたKONG少年は。


する事もなく、

ただボッーと立っていたら、

はぐれた友達に声をかけられる。


「おった!!何しとったん?」


 

手には『綿菓子』『りんご飴』が握られており、お祭り楽しんでますオーラは虹色だった。


数分後。


全員集合して家に帰る。


ニコニコしながら一緒に回った『お祭り』の会話が楽しそうに繰り広げられている。


会話に入れないKONG。


小学1年生のKONG少年にもう少し我慢と落ち着く事が出来れば、もっと楽しい思い出になっただろう。


それからと言うもの、
『お祭り』はあまり楽しくない場所と認識し、行く事もめっきりなくなり、KONGは少しずつ大人になっていく。

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月日は経ち数十年後。


スクスクと成長した20歳の青年KONG。


上京した東京で先輩に連れられ、数十年ぶりのお祭り会場に向かう。

移動中に少年時代の『お祭り話』をすると、
情に厚く涙脆い先輩は、少しウルウルしていた。

「おうおう!オメェも大変だったなぁ!


んで、フランクフルトはどーした?」


(食べたっつーの。)

どこまで話を聞いて、どこでウルウルしているか分からなかった。

「今日は、そんなオメェの為に俺が何でも奢ったる!!

好きな物食べろ!!!」


(今日でお祭りを好きになるかもしれない。)

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到着した会場では、
昔のような魔法にかかる事もなく、ゆっくり屋台を見渡しニコニコしながら先輩にお願いする。

K「ポテト食べたいっす!」

先「おう!うまいよな!!マックで買えるぜ!」

(ポテトの気分じゃなかったのか。)

K「フランクフルト食べましょう!!」

先「おいおい!成長してねぇなぁ!」


(まぁ、フランクフルトの話をしたばかりだからな。)

K「イカ焼きなんてどうでしょう?」

先「イカくせぇーなぁ!!」

(何がだよ。)


半笑いで困った顔をするKONGに先輩は

「おい!どーした?

祭りだぜ?

もっと祭りっぽいヤツあるだろ!!」


と、勢いよく進み出しビールの列に並ぶ。


「まずはこっからだろ!!」

(確かに)


それはアリだと思いビールの順番を待つ。


待ちに待ったKONGの順番が来て、店員さんからビールを受け取った先輩が一言。



「財布落とした。」

とんでもないサプライズ。


結局KONGが会計を済ませて、大人2人が祭りで下を見ながら歩く。


歩いて来た道はそう長くないが、祭りの人混みで探すのはかなり困難だ。


屋台を見るよりゆっくりと慎重に地面と睨めっこする大人2人。


数十分後。



やはり無い。


先輩曰く、当面の生活費も入っていたと告白をされる。



お祭りでの『告白』は、ときめきメモリアルだけにして欲しい。



キョロキョロ周りを見回すと、事務局的な場所を発見しダメ元でそこに状況を伝えに行く大人2人。


「したっけぇ、わたしのぉ財布が無くなっちまったんですぅ。」



先輩は、
封印していたハズの地元の訛りが出ており、慌てているのが伝わってくる。


「黒いパカパカする財布なんですけどぉ?」



事務局の人は机の下で手をガサゴソし


「名前を伺ってもいいですか?」


と、尋ねられ

「dunhill(ダンヒル)ですぅ!!」



食い気味に財布のブランドの名前を答える先輩。


どうやらこちらの脳内もお祭り状態だ。



すると、

「これですか?」

と、手品のように落とした財布が姿を現す。


驚く先輩は


「おほぉーー!これぇぇぇ!
だぁーれが届けてくれたんですかぁ?」



『聞いてどーする』って質問に対し、事務局の人は笑顔で

「ちびっ子が届けてくれましたよ。」

と、優しく答えてくれて、大人2人は感謝を伝えその場を離れるのだった。

受け取った財布にホッとした先輩は、優しい表情で

「同じちびっ子でも、


周りを見て人の財布を拾う子もいれば、


何も考えずフランクフルトばっかり食ってる子もいる。


これが祭りだな。」


(うるせぇよ。)

こうして

先輩に笑顔が戻り、

KONGの笑顔は奪われたまま、

カップのビールを握りしめた大人2人はミニストップに向かい

『お祭り』は幕を閉じたのでした。


それでは!


また!

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