夫の涙
3回目の移植の判定日。
ついに着床した。
血液検査の結果を見て、「あ、0以外の数字も出るんや。」とバカみたいなことを思った。
仕事中だった夫に取り急ぎ連絡。
その後、hcgの数値で検索してしまい不安ばかりよぎる。喜べない。きっとうまくいかないとマイナス思考が脳内を占拠する。
不安がぐるぐるしながら帰宅。
これからの生活の注意事項として病院がくれたプリントの「妊娠」の文字を見て、夫が泣いた。
結婚してから初めて見る夫の涙。
愛しさがこみあげる。
妊娠そのものよりも夫が喜んでいるのが嬉しくて幸せだった。この幸せを決して逃したくないと思った。
毎日、毎日不安は尽きない。
大きくなっているのか、ちゃんと育つのか。
わたしは夫を悲しませたくない。そればかり考えた。
一方、夫は。
喜びを隠さない。このまますくすく育つことを信じて疑わない。今となれば信じることで、祈っていたんだと思う。
明るく振る舞っていたけれど、わたしの知らないところでたくさん調べてたくさん考えていたんだろう。
7週の検診。胎嚢がほとんど大きくなっていない。
様子を見るけれど、正直厳しい。と先生。
奇跡も願った。できることなら、ミラクルが起きて急成長を遂げてほしい。そう思いながらもどこかでホッとしていた。
毎日、毎日大きくなっているのか、生きているのか、心配で気が気じゃなかった。
そういう心配をしなくていいのか、と。
結果、稽留流産となったけれど、またもう一度、今度は2人で幸せの涙を流したい。
たったの数週間だったし、不安だらけだったけれど、それでも3人での生活はたまらなく幸せだった。
ありがとう。
愛してる。