見出し画像

信じられなかった

毎日毎日7週の日を指折り数えた。
赤ちゃんのことばかり考えてしまう。
ゆっくり歩いた方がいいのかな。
食事も体に良さそうなものを選ぶ。
仕事にも身が入っていなかったかもしれない。
自分がお母さんになるなんて。
本当に幸せで、フワフワした気持ちで過ごした。

待ちに待った検診の日。
お城みたいな上品な家具や椅子が並んだ待合室。緊張するけど待ち時間も苦にならない。

診察室に呼ばれ、意気揚々と台に座る。
モニターに映る、前回と同じようなエコーの画面。
先生が「んーー」と言いながら角度を変える。
しばらく無言で器具を動かしたあと、「診察室で説明しますねー。」

わたしはまだこの時点でも何が起こったのか分からなかった。妊娠、出産に関する知識も全然なかったのだ。

診察室で、赤ちゃんが前回から大きくなっていないこと。胎嚢の形がいびつになってきていて、もうすぐ流れて出てしまう可能性があるので、数日後から出血が始まるかもしれないことが告げられた。初期なので、今なにも出来ることはないこと、遺伝子の異常で、お母さんのせいではないこと。出血の時にお腹も痛くなると思うので安静にしてね。などの説明があった。

先生は『流産』という言葉は使わなかったが、そういうことなんだ と理解した。

さらに、先日の子宮頸がんの検査結果で、『軽度異形成』であることも告げられた。
初めて聞いた病名で、何が何だか分からなかった。大きな総合病院に紹介状を書くので更に詳しい検査を受けるように言われて、『はい』としか言えなかった。

赤ちゃんがだめになるかもしれないと言われた後で、子宮の病気も発覚。
ついさっきまで浮かれていたわたしには、受け止めきれなかった。

泣きたい気持ちだったが、急すぎて、涙も出ない。先生とも、淡々と話した。

診察後の会計は、待っている人がたくさんいたのにすぐに呼ばれた。みんなお腹の大きな幸せそうな妊婦さんばかり。
可哀想だから順番を早めてくれたのだろうか。

病院から駅まで歩きながら、主人に電話。
話し始めてからすぐに涙声で、声にならなかった。幸い人通りの少ない道で良かった。泣きながら帰った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?