『ノルウェー語入門』(文芸社)で誤りを疑う箇所
下宮忠雄先生の文芸社『ノルウェー語入門』(画像右)が先日発売されました。ノルウェー語の本としては税抜1100円と手に入れやすいです。
今日の記事は私個人が見て間違い乃至誤植ではないか、と思った部分ですので間違いと思ったのが間違いということもある(ないように努めていますが…)かもしれません。そのような箇所があれば教えて頂けると幸いです。
念のため書いておきますが、軽微な誤りがあるのはごく普通のことです。ただ、学習時にそこで引っかかってしまうこともあるので、情報を共有できるといいなと思った次第です。不当に本を貶す意図はありません。
また、語源、綴り、屈折形、発音などに複数の流儀があるが1つだけしか表記していないという部分については取り上げていません。
以下、ページ数、原文(『』で囲みました):コメントの順番で書いています。微妙な箇所にはページ数の左に?を入れました。
1 誤りを疑う個所
19、『1音節語の中性名詞は、大部分が単複同形である(他の古いゲルマン語もそうであった)。』:「大部分」や「古い」の取り方によるところですが、ゴート語の全中性名詞、古英語や古サクソン語の light stem の a-幹名詞(割と多い)や古高ドイツ語の一部のz-幹名詞 (lamb, kalbなど;これは少ない)、また西ノルド語におけるU-umlaut を受ける名詞(多い)をすべて「大部分」の外に追いやってしまうのは不適切だと思います。
?20、『複数形のみの名詞 (pluralia tantum) :[中略] søsken』:søskenはpluralia tantumではない気がします (単数形でも使うことは皆無ではない)。
26、『onn [ウン] わるい』:onnという単語もありますが、『農繁期』という意味の別の単語です。ondの誤りかと思います。
29, 30、『femti, tretti, førti』:発音がアクセント2として発音表記されていますがアクセント1かと思います。
32、『5-2 = 3 To minus (or fra) fem』:Fem minus toではないでしょうか。
?37、『Nationaltheater』:既知形Nationaltheatretの方がふつう?
45、『ubstemte pronomer』:ubestemteのeが抜けています。
107、『livkunst』:livskunstのsが抜けています。
115、『「物り」』:「物語り」あるいは「語り」あたりでしょうか。
121、『angripe [àngri:pə]』:アクセント1かと思います。
122、『atter [àttər]』:アクセント1かと思います。
122、『befolket [bef´ɔlkət]]』:右括弧]が二重になっています。
124、『bråne [bå:nə]』:発音の中でrが抜けています。
124、『både [中略] ~ engesk』:engelskのlが抜けています。
137、『[kne:pən]』:強勢表記がありません。
137、『Kristinia』:Kristianiaのaが抜けています。
142、『nitti [nìtti]』:アクセント1かと思います。
145、『perfektum partisipp [pártisipp]』:partisippの強勢は後音節かなと思います。
145、『personlige pronomer [pæʃú:liə prunú:mənər]』:personligの発音でnが抜けています。
147、『seter [sè:tər]』: アクセント1かと思います。
153、『undertiden [´ʉnnərti:dən]』:強勢は後音節かなと思います。
2 その他
誤りではありませんが思ったこと。
まず、č 、ō、āだけ他の欧文フォントとフォントが違い統一性が気になりました。また、強勢記号が、èやìなどは一纏まりの文字として表示されているのに、´ɔや´ʉなどは記号+文字の形式になってしまっているのも少し気になります。
3 参考
Bjarne Berulfsen (1969), Norsk Uttaleordbok
基本的に上の二つを信頼しています
Bokmålsordboka | Nynorskordboka
jisho.no - ノルウェー語→日本語のオンライン辞書
下の二つも適宜参照しました。