おもしろい英単語①~古ノルド語中動態動詞の借用~
0 ノルド語の中動態って?
ノルド語(北ゲルマン語)には動詞の中動態 miðmynd と呼ばれるものがあります。ノルド語の中動態の語形はインドヨーロッパ祖語から受け継いだ本来的なものではなく、動詞に再帰代名詞が後接し母音を失ったものでノルド語に特有です。簡単に述べると古アイスランド語では -sk の形(再帰代名詞4格 sik との類似が分かりますね)、現代アイスランド語では -st の形、古/現代スウェーデン語などの東ノルド語では -s の形をしています。用法としては再帰性、相互性などを示すのが典型的です。
※かなり端折っているので正確に知りたい方はぜひ調べてみて下さい。
さて、今日は古ノルド語の中動態の名残を残す英単語を二つ紹介したいと思います!
1.1 bask
古ノルド語 baðask の借用で「(日光などに当てて)暖める、(日光などで)暖まる、†(湯などを)浴びる」意です。
baðask は baða (ドイツ語 baden, 英語 bathe, スウェーデン語 bada などと同源)の中動態で、英語の bathe oneself と考えると分かりやすいですね。「入浴する」という意味から意味や用法が変化していったと考えられると思います。
1.2 busk
古ノルド語 búask の借用で「用意する」意です。現在では方言での使用が主なようです。
búask は búa (ドイツ語 bauen <建設する>, スウェーデン語 bo <居住する>, ゴート語 bauan <住む>などと同源)の中動態です。アイスランド語の búa はかなり基本的な単語でその分色々な用法がありますが、過去分詞を用いた表現 vera búinn að Inf. などを思い出すと意味の関連が見えてくる気がします。
参考文献
・Oxford English Dictionary
・寺澤芳雄 (1997). 英語語源辞典: 研究社
日本語で読めるということを抜きにしても素晴らしい本だと思います。推しです。