失意の面接官(怒りと混乱の超売り手市場)
1年間、NOTEを放ったらかしにしていました。
若手が辞め、中途採用もまったくダメ、おまけに新規プロジェクトが失敗しました。
人材不足による業務過多で首が回らなくなり、絶望を極めました。
BPを雇えば良いじゃないかと思われるかもしれませんが、既に何名か雇っており、欲しいのはコーディングする人ではなくて、仕様を考えて人を動かせる人です。中間層というやつですね。
※基本的にBPは会社の重要なデータに触れません。よほどの信頼があれば別ですが、普通はプロパー(正社員)がデータ管理すると思います。
AWS内のデータやユーザーアカウント管理なんてのもうちではプロパーの仕事です。
そんなもんだから、なんとしてもプロパーが欲しくて1年以上中途採用に注力し、プロの人材コンサルを雇って何度も話し合い、疲れ果て、もうこの人でダメなら諦めようと思っていたとき、待望の内定承諾を得たのです。
中途社員採用の難しさ
今宵はIT業界の零細企業がいかに正社員を採用することが大変なのか、どんな苦労があって、実際に何が起きたのか書き綴りたいと思います。
1.ネームバリュー
残念ではありますが、中途採用において会社名(ブランド)がすべてといっても過言ではありません。大企業であれば公式サイトに募集をちょろっと載せておけば、放っておいても続々と応募者が集まってきます。
このことは人材コンサルから散々言われたことでもあります。
結局、大手と戦っても負けるだけなので、中小零細は大手や他社に無い魅力を会社説明に書けと何度も言われました。ちなみに「アットホーム」「ベンチャーだからやる気があればやらせてもらえる」「若くても出世できる」といった内容はNG。他社も書いているから警戒されるとのこと。
だったら何を書けっちゅうの!
※フルリモート勤務や週休3日が有効だそうです。
2.希望年収
あなたは信じられますか?
社会人経験2年目の希望年収が450万ですよ。まだ2年目ですよ。
理系じゃなくて文系卒で、プログラミングは社会人デビューですよ。
実戦経験でいったらまだ全然なわけで、そのレベルにさすがに450万は出せないです。
でもね、大手は余裕でこの金額を出します。それが現実です。歳が24、25の若者が年収450とか500ですよ。外資系ならまだ分かりますがいったいIT業界はどうなってしまったのでしょうか。
ただね、この話には裏があります。そうは美味い話ばかりではありません。これはとあるコンサルから聞いた話ですが、未熟な2年目の若手に450万出すのは企業としての投資であり、戦力にならなかったときのことを想定して自主退職に追い込む策をいくつか用意しているようです。
やってみてダメなら切るみたいですね。おーこわ。
3.年収アップ
希望年収ってだいたい現状維持のケースが多いですよね。でもね、今の20代は違いますよ。
100万アップです。
レジュメ見て「はぁ?」と叫んでしまいます。1人や2人じゃないですよ。けっこういるんです。これは転職エージェントに誘導されているケースが殆どで、なぜそう言えるかというと年収アップの根拠をエージェント経由で問うとだいたい分かります。
殆どの応募者が転職エージェントと相談した上で希望年収を設定しているとのこと。職歴がテストと開発半年くらいでなぜ100万も上がるのか到底理解できなかった私はそれを聞いて納得した次第です。
実際に面接で年収アップの根拠を聞いていますが明確に説明できないケースが多く、事前に台詞を用意していた感が多々ありました。こちらとしては「XXXプロジェクトに参画してシステムのXX割を担当し、売上げのXX%に貢献して、XXのスキルを習得した」といった具体的な回答を期待するのですが、出てくる根拠は「そんなんで100万アップですか?」みたいなお粗末なものばかりで、数字ではなく「がんばった」とか「覚えた」といった抽象的な内容でした。
4.並列10社応募は当たり前
年収アップの応募者だらけでしたが、中には現状維持の人もいてスキルも十分でしたので内定をけっこう出しました。
でもね、他社に取られてしまうんですよ。せっかく内定を出しても同時に応募している企業が他に5~6社あるため、条件提示で負けてしまうんです。結局、金の力ですよね。そこはどうにもならなくて悔しい思いを何度もしました。
転職する側にとって今は本当に良い時代ですよね。私が転職活動していたときは生存競争が激しすぎて、雇ってもらうことが最優先でお金のことは後回しでしたから。
5.自社開発が武器にならない
これは痛かったです。うちはIT業界では少ない自社開発を行っており、それがアピールポイントとなってすぐに中途採用決まるだろうと思っていたのですが、全然ダメでした。
20年前は多重下請け構造のSESがブラックと騒がれて、それが無い自社開発は人気だったんですけどね。時代は変わってしまいました。
今はSESだとしても大手が人気なんです。1にも書いたネームバリューが最も重要であり、そこに人が集まっています。SESもだいぶホワイトになりましたから、大手のSESは人気あるみたいです。給料高いですしね。3のように大手であれば本当に100万アップとかあり得ますし。
そんなわけで上記5点が高いハードルとなり、1年とちょっと何十人と面接しましたが一向に内定承諾を得られず、仕舞いには人材コンサルに不満の矛先がいき、諦めようとしていたところに自社開発希望の応募者が現れたというわけです。
IT業界の超売り手市場、一体いつまで続くんでしょうね。
お金だけがすべてじゃないと思うんですよ。上流工程を経験するにはある程度長いプロジェクトに参画して、下流から勉強し、人を動かすための経験が必要です。コーディングやテストなどの末端の作業はいずれAIにやられます。
生き残るためには換えがきく業務をやっていてはダメなのです。人の上に立ち、悩んで、苦しんで、責任に追われる怖さに打ち勝ってこそ人から頼られ信頼される存在になれるのです。
お金だけでなく、この会社ではどんなことが経験できるのか?そこに注目してほしいですね。
そんなことを思う今日この頃です。
ではまた。
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