ビジュアル実証経済学8 エチュードとヴァルールのフェッテ ー都市間格差による文化資本の不得手ー
マリアコレヴァがただ飛んでいるだけで溜息…画面越しにオーラが漂っているのだから,おそらく生で見たら卒倒するだろう.
これが無料(タダ)で見られるのだからきっといい時代なのであろう.
さて,以前筆者は,スポーツ施設に関して上梓した.
次に同様のロジックで文化施設に関しても考察してみたいと思う.
例えば,バレエ施設はどこにどのように分布し,そこにどの程度競技人口が存在し,いくら程度の市場規模になるのか,そして浮かび上がる選手のキャリア形成はどのようなものになるのか?
これらに関して,まずは,先行研究を確認する.
http://id.nii.ac.jp/1060/00008339/
http://id.nii.ac.jp/1060/00003126/
どうやらバレエ研究の論文で,経済学あるいは社会科学的な分野の先駆者は2~3人しかいらっしゃらないようである.前回のスポーツ施設の時の検証と同様に,今までアンタッチャブルであったのは,特定の種目に限ると経済学の対象分野にしては狭小すぎたり,異質であったり,それでもなお説得力のある理論を構築できるほどのデータがないため,これまでの経済学における理論モデルで説明することが極めて困難であったのだろう.
あるいは広義の文化財に関するデジタルアーカイブは,池内克史や坂村健が提唱していたものの,およそ多くの情報・工学研究者の関心の対象ではなく,バレエ関係者が情報・工学を道具として使うこともなかったため,データ解析的なアプローチが介入していなかっためであろう…
正直,さほどデータ解析的な研究にはなっていない.
結果的に下記のような,芸術・美術・音楽あるあるを生む…
上記のような二律背反は頻回に聞くが…特にアンケートコメントが,すごいドエグイな.
なるほど,ことの真偽を確かめよう.
まず,前述の先行研究に関してであるが,基本的に都道府県を単位として執筆されているが,データ解析としては粒度が荒い.可能であれば市区町村粒度で計算を行いたい.細かなという点では,DID(Densely Inhabited District)人口集中地区に基づいて計算を行っている.論文には掲載されていなかったがこれを可視化する.
確かに多くのバレエ・ダンススクールが人口集中地区にあることは認められるが,それなりに取りこぼしも多い.また,市区町村といった行政区域での集計では,既知の人口などの情報に関しては既にデータがそろっているが,市区町村の統廃合・合併などに伴う変更に対して脆弱であることが知られている.
そこで,筆者が提案したいのは,夜間光と文化施設からの移動距離に基づいたデータの追加と分類である.
先行研究の仮説に記載されている.
所得や人口に関しては,夜間光との相関は報告済みである(大友, 2021).ただ,趣味・教育・娯楽としてのバレエに限らず,多くの文化活動は所得に依存する.またその所得の多いところは人口も多い.結果,都市と地方で統計的に有意な差が確認されるのである.
もちろん,人口集中地区だから明るい,商業的に発展しているところは明るい,そういったところはほぼ必ず文化活動が盛んになる.これは,ほぼ必ず成立するので,そもそもの仮説の説明を行う際にも多重共線性に関して慎重になる必要があると思われる.
文化施設は,体育施設に比べて公共財(公共施設)であっても,都市偏重に立地することが見てわかる.そして,そのいずれかの文化施設の周辺(概ね60分以内)にバレエ教室が立地している.先行研究で挙げられていた仮説を説明する要素としては,十分に意味のある指標と考えられるのではなかろうか.
また,文化施設が体育施設と比べて都市偏重になるのは,恐らく,体育施設の方が医療と結びつくためではないかと考えられる.つまり,健康な生活のためには運動習慣が必要であるため,運動施設があることで医療費の削減につながる.一方,文化活動は価格弾力性が高い(瀟洒な贅沢品)と思われているためではなかろうか.
また,おしなべて文化活動と一括りにしたが,博物館などは人口密度の低く,アクセスも微妙なところに建設されることも,それなりにはある.これは,本人がいる必要のあるものバレエ,ダンス,音楽といったインプロヴィゼーションの要素があるものと,歴史的遺産や文化財,古美術品などで多少扱われ方が異なるためかもしれない…
バレエ教室データを抽出するために jquery.xdomainajax.js を使ったんだけど,文字列を模様としてみると,カルティエのバレリーナに見えてくるから不思議…
数値解析編は後日…