ジオゲと認知科学?
はじめに
以前、「GeoGuessrに関する研究論文を書いたら面白そう」という話題が好評だったため、今回は少し踏み込んで、自分なりにGeoGuessrのゲーム性を言語化し、その学術的な可能性について考察してみたいと思います。
ただし、私は情報学や認知科学の専門家ではなく、あくまでGeoGuessr好きの1人の国立大生です。専門的な知識が不足している点もあるかと思いますが、プレイヤーとしての経験を元に議論を深めてみますので、軽い気持ちでお付き合いいただければ幸いです。
GeoGuessrを活用した認知科学的研究の可能性
本稿では、地理推測ゲーム「GeoGuessr」におけるゲーム性を学術的視点から考察し、認知科学や教育への応用可能性を検討する。GeoGuessrはGoogle Street Viewを基盤とした地理情報推測ゲームであり、プレイヤーは視覚情報、空間認知、記憶、注意、推論など、多様な認知プロセスを統合的に活用する必要がある。このような特性を持つゲームは、認知能力の研究や教育モデルの開発にとって有用な題材となると考えられる。
前提: GeoGuessrと認知プロセス
1. 視覚情報処理
GeoGuessrでは、Google Street Viewの視覚的手がかりを効率的に処理する能力が要求される。
形態認識: 看板の文字や建物の形状、地形、植生などの細部を瞬時に認識する能力。
パターンマッチング: 視覚情報を過去の経験や知識と照らし合わせ、特定の国や地域を推測するプロセス。この能力は特に、総合的に判断し迅速に特定する際に重要である。
2. 空間認知
GeoGuessrの5Kを取るようなプレイでは、地図の読み取り能力や現実世界の地形と地図上の情報を比較する能力が不可欠である。これらは、認知科学でいう「メンタルマップ」の構築・利用に関連している。
地図読み取りスキル: 川や山、道路の角度といった地形情報を理解し、位置特定につなげる。
地形比較能力: 実際の風景と地図情報を統合するスキル。プレイヤーの経験値がこのプロセスの効率性を高める。
3. 記憶
GeoGuessrでは長期記憶と短期記憶の両方が重要な役割を果たす。
長期記憶: 地域ごとの道路標識や市外局番など、過去のゲームプレイで学んだ情報を素早く想起する能力。
短期記憶: その場で得た手がかり(例: 看板の地名や道路番号)を一時的に保持し、地図上での推測に反映する能力。
また、プレイを重ねることでスキーマ(認知的枠組み)が形成され、特定地域に関する情報処理がより迅速かつ正確になることが確認されている。
研究の可能性: スキーマと認知バイアスの役割
個人的に興味深いのは、スキーマの形成がプレイパフォーマンスに与える影響である。GeoGuessrにおけるスキーマは、視覚的・文化的な特徴とそれに対応する地理的情報の体系的な関連付けであり、これが高度に発達することで、極めて短い時間での推測が可能となる。
0.1秒モードの分析
「0.1秒モード」のような最難関コンテンツでは、フローチャート的な論理的推論ではなく、過去の経験に基づくパターンマッチング(スキーマ)の役割が大きいと考えられる。このモードでは詳細な情報処理が不可能であるため、プレイヤーは無意識にスキーマを活用し、地域を瞬時に推測する。
スキーマによるモード分類
モードごとにスキーマ活用の重要度が異なる点も注目に値する。例えば、以下のような順序でスキーマの重要性が増大すると考えられる:
Moving < No Move < NMPZ (No Move, Pan, Zoom) < 0.1秒モード
この順序は、情報量の制約が厳しくなるほどスキーマの重要性が高まることを示している。
研究デザイン案
以下のような実験を通じて、上級者と初心者の認知プロセスの違いを比較し、GeoGuessrを教育的ツールとして活用する可能性を探る。
1. フローチャートの完成度測定
方法:
事前に「正解」となるフローチャートが存在するMovingモードの映像を用意し、初心者と上級者に国を推測させる。目的:
プレイヤーごとのフローチャートの完成度を比較し、熟練度と論理的推論プロセスの関連を明らかにする。
2. NMPZでのスキーマ利用の評価
方法:
NMPZモードでのプレイ中に、プレイヤーに思考内容を逐次説明してもらう(プロトコル分析)。上級者ほど言語化が困難な推論を行う場合、スキーマの活用度が高いと仮定する。また、認知バイアスにより上級者が誤答する可能性がある問題を設計し、バイアスの影響も評価する。
教育的応用の可能性
GeoGuessrは、視覚情報処理や空間認知のトレーニングツールとして教育分野での活用が期待される。短時間で情報を整理し意思決定を行う能力を向上させるトレーニングとしても適している。
さらに、スキーマ形成や認知バイアスの研究結果を教育プログラムに応用することで、学習効率を高める新しい教育モデルを構築できる可能性がある。
けつろんどにあ
GeoGuessrは、視覚情報処理、空間認知、記憶、推論といった複数の認知プロセスを総合的に研究する場を提供すると同時に、教育的応用の可能性を秘めている。と。思う。多分。
また、今回はジオゲをプレイする上でのスキーマの話をしたが、ジオゲは現実世界が舞台のゲームである為、プレイヤーは既にある程度既存のスキーマを活用できる。そういう意味では初心者に優しいゲームであると言える。と思った。