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【映画日記】『推しの子 The Final Act』『侍タイムスリッパ―』『ありきたりな言葉じゃなくて』
2024年12月21日(土)
府中TOHOシネマズ 『推しの子 The Final Act』
『推しの子』はアニメ化されるかどうかという時期に娘が注目していた。アニメ化された頃,作中の設定が木村花さんの事件に似ているところがあるということで批判が相次いだし,個人的には小学生に読ませるような漫画ではないと思ったが,娘はそこそこアニメを観,コミックも数冊家にある。ただ,さすがに実写については当初娘は観たくないといっていたが,徐々に心変わりして,結局観ることとなった。公開に合わせて発売されたコミック最終巻と合わせて,実写版のドラマが進行し,映画はその結末を描くというところが気になったようだ。
公開2日目に観ることとなり,映画館に向かう前に最終巻コミックを購入し,電車の中で娘が読む。読み終わったので私も映画館で少し読む。2日目にしては客の入りはよくない。冒頭は一応コミックやアニメ,ドラマなどを観たことがない人向けに一通りの説明がある。途中の展開の説明はほとんどなく,最終話についてもかなり省略や脚色があるが,あまり物語展開を理解していない私のような観客にも十分に楽しめる内容だった。私が知っている俳優が少なかったのも楽しめた一つの要因だったかもしれない。
2024年12月29日(日)
立川シネマシティ 『侍タイムスリッパ―』
息子と二人で出かけることになり,観たい映画を探してもらって選ばれたのがこちら。以前にも似たような設定の映画があったが,こちらはパートナーも薦めていたし(彼女は文化系に詳しいインスタグラム仲間がいて,その手の情報に詳しい),予告編を観ても面白かったので観ることにした。
幕末の武士が決闘中に雷に打たれ,現代にタイムスリップするという話。たまたま来たところが京都の時代劇撮影所ということで俳優として身を立てていくという展開。作り手の時代劇愛が溢れた素晴らしい作品。パートナー情報によるとこの作品は池袋シネマロサでの単館上映が話題になって全国に広まったという。シネマロサという旧来の映画館でまだやっているところはほとんどなくなってしまったし,こういうヒットは嬉しい限り。ちなみに,本作で重要な役どころである,時代劇の助監督を演じている沙倉ゆうのさんはエンドロールで何度も名前が出てきたが,出演俳優というだけでなくスタッフとしても働いていてまさに役どころそのもの。30年前には時代劇があたり前のようにテレビで放映されていたが(実際にはもう少し前だと思うが),最近で週に一回観られればいいもの,という状況に対して本格時代劇映画を作るというのが後半の見どころ。それは作中だけのことではなく,本作そのものがそうした心意気による作品だと思う。ちょうどそんなところに,松平健の『暴れん坊将軍』のテレビシリーズが復活するというニュースがあった。なんと脚本が大森美香さんで監督が三池崇史さんだという。時代劇映画は最近少なくないと思うが,テレビドラマも盛り上がってくるかもしれない。
2025年1月2日(木)
吉祥寺アップリンク 『ありきたりな言葉じゃなくて』
この日は個人行動が許されたので,久し振りに吉祥寺に出かけた。チリの女性運動に関するドキュメンタリー映画『私の想う国』が観たかったが,他の上映作品を探したら,この作品が気になってしまったので,日本映画を観ることにした。
主演の前原滉さんという俳優さんは初めて観るが,台湾映画の俳優のような雰囲気があって好感が持てたが,前半の演技には少し違和感があった。しかし,後半のクライマックスではとても良かった。なお,本作はテレビ朝日の番組制作チームによるものだという。実話をベースにしているということもあり,私もジャンルは違えど物書きであるので,主人公と同じような経験があった。なお,主人公はジェンダー関係の意識が低いというところにリアリティがある。かといって,明らかなセクハラをするということではなく,女性の立場に立てないというところを克服しようとする努力を放棄しているともいえるもので,ジェンダーやフェミニズムをそれなりに学んできた私も同じようなことをしてきたと反省させられた。この作品としては,その辺りに非常に意識して丁寧に描いている。演技に違和感のあった主人公に対し,相手役の女性を演じる小西桜子さんの役どころと演技はなかなか良かった。とにかく,なかなかいい映画だった。