僕の中のthe verveを回顧してみる
昨日ある友人から、
「リアルタイムで聴けなかった人に、
リアルタイムで聴いていた人の体験談を共有して欲しい」
との依頼を受け、ザ・ヴァーヴ(the verve)についての回顧記事を書くことにした。
ブリットポップど真ん中だった学生時代、そしてバンドとの邂逅
当時僕は超が付くほどのオアシスファンだった。高校時代にラジオで聴いた“Live Forever”をキッカケにして、ブリットポップ期をリアルタイムで過ごしてきた僕は、当然の如く「オアシスVSブラー戦争」にも思いっきり乗っかっていた。
刹那的だったブリットポップに終わりの匂いが漂い始めた1995年頃。高校を卒業し、一浪して大学に入った僕はあいも変わらずUK音楽ばかりを聴いていた。そんな頃に買ったNME(イギリスの音楽雑誌)に「アルバムのプロデューサーはオアシスをプロデュースしたオーウェン・モリス」という触れ書きを発見。そこには、とあるバンドのニューアルバムに関する記事が載っていたのだ。
その記事を読んだ僕は「えっ、オーウェンのプロデュースなら期待できるんじゃないか?どんなバンド?」と期待昂らせ、学校終わりで渋谷へ向かった。店舗に設置された試聴機には、ブラーの『The Great Escape』とパルプの『Different Class』、そしてザ・ヴァーヴの『A Northern Soul』 が設置されていた。
リチャード・アシュクロフト(Vo.)の「新しい時代だ!」という叫びから始まるこのアルバムは、今まで聴いたことのない強靭かつ重厚感のあるグルーヴを持ち、何よりもリチャードの圧倒的な声がとてつもなく印象的で、「この機会を逃すまじ!」速攻レジに持っていったのを今でも覚えている。
これが僕のザ・ヴァーヴとの出会いだった。
神番組『BEAT UK』がくれた神曲との出会い
大学時代は週末がすごく楽しみだった。何故かというと『BEAT UK』があったからだ。『BEAT UK』とはフジテレビの深夜番組のことで、ロンドンの最新音楽ヒットチャートをPV(今でいうMV)を流しながら紹介していく“超貴重”な洋楽番組だ。
番組は2002年に終わってしまったが、この番組と後継番組である『THE BEAT』『UK JACK!』の影響力は、僕の中でとてつもなく大きく、番組きっかけで曲を聴き始めたバンドも非常に多かった。
「今週はどんな新しい曲が聴けるんだろう?」と、そこで目にしたのが“Bitter Sweet Symphony”のPVだった。
荘厳なストリングス・パートのループに乗せて、歌詞を口ずさみながら街中を闊歩するリチャード。すれ違う人とぶつかろうとも、全く動じることなく前へ歩み続ける彼の姿がとにかくカッコ良かった。
彼に憧れ、彼の真似をし、“Bitter Sweet〜”を脳内再生しつつ、ガニ股で肩で風切りながら、駅から家までの道を歩いていたのは今だから話せる話だ。(というか、みんな同じことやってたでしょう?)
初来日、たった10曲に表れていたバンドの存在価値
ニック(Gt./Syn.)が脱退した翌年の1999年にバンドは解散。けれど、僕的にはショックはあまりなかったように記憶している。理由は、彼らの輝いている楽曲たちが偉大過ぎて「曲さえ在り続けてくれれば、それでいい」という謎の境地に達していたから。
それから8年が経った2007年にバンドは再結成し、サマーソニックでの初来日が決まった時は発狂しそうになるほど嬉しかった。例えそれが大トリのポジションでなくても(大トリはザ・プロディジー)、あの偉大な楽曲たちを生で拝めるだけで良かったのだ。
2008年8月9日土曜日、あの時、一曲一曲イントロが鳴るたびに湧き上がってきた高揚感は今でも忘れない。
“This Is Music”
“Sonnet”
“Space and Time”
“Sit and Wonder”
“Life's an Ocean”
“The Rolling People”
“The Drugs Don't Work”
“Lucky Man”
“Bitter Sweet Symphony”
“Love Is Noise”
演奏したのはたったの10曲。だが今振り返っても完璧なセットリストだったと思う。
特にラスト2曲、“Bitter Sweet〜”が放つ永遠のカタルシスと、それを燃やし尽くすような新曲“Love Is Noise”のエモーションが作り上げたグラデーションは、ザ・ヴァーヴのバンドそのものだった。