三人の文豪・敵討ち読み比べ
江戸時代の武士の敵討ち(かたきうち)の話題なんて、今時流行りませんかねぇ?
期せずして、敵討ちをテーマとした、三人の文豪の作品を続けて読むことになりました。
芥川龍之介「或敵打の話」
森鴎外「護持院原の敵討」
菊池寛「恩讐の彼方に」
そもそもは、青空文庫で芥川龍之介の大正九年の作品を読む、というミッションを自らに課している中で、まず芥川龍之介の「或敵討の話」を読みました。
次に、芥川龍之介の知識があまりにも無いので、ネットでこの作品についての情報を調べました。その中で、以下のような論文を見つけました(クリックすると1.1MBのPDFのダウンロードが始まってしまうのでご注意を)。
「『或敵打の話』試論」中田睦美(2011)
この論文の中で、従来この芥川作品は森鴎外「護持院原の敵討」とよく比較され、ある意味不当に低評価を受けてきたこと、そして、むしろこの芥川作品は菊池寛「恩讐の彼方に」にインスパイアされて書かれたと考えられることが論じられています。
そこで、鴎外と菊池寛の二作品も読みたくなったというわけ。
それぞれ、さほど長くない小説なので、すぐに読み終わります。
面白いですね。敵討ちという題材で、それぞれ物語の展開や描写に個性が出ますね。
不遜を承知で感じたことを言えば、芥川の後に鴎外を読むと、芥川の方が見劣りするのは否めないところです。ただそれは時代劇として読んだ場合かも。芥川に時代劇を期待することの方が無理かもしれません。
鴎外作品で見られる女性の描き方は、昔中学の国語の教科書で読んだ「最後の一句」を思い出させます。
菊池寛に至っては、敵討ちの目的すらもどこかへ飛んで行ってしまう、またそんな状況も十分に納得できる筋立てになっているのが驚異的。
青空文庫のおかげで、よき読書体験ができました。