転職と学芸員と教職の話
生きるだけでも金が要る
もうじき水族館から転職して一年になる。
お給料的に誰かと生きていくには厳しいと思った上での判断、選択そのものが間違っていたとは思わない。優秀な友人たちは軒並み院卒リッチメンへの第一歩を踏み出している中、こちとら雀の涙ほどのお給料に汚ぇ涙で枕を濡らしたものである。
しかしいわゆる社会不適合者の感がある自分に、一般サラリーマンの働き方は厳しいのもまた事実である。
企業は利益を上げてナンボのもん。この商品を作って儲かるんか?どうなんや?粗利は?売上予測は?と常にプレッシャーを感じて仕事をする。そもそも私は数字が苦手である。ポケモンの努力値も取り敢えずぶっぱする程度には苦手である。ついでにスケジュールを立てて動くのも苦手。
生きるのに向いていない。
博物館にも金は要る
話は転職前の水族館に戻るが、博物館相当施設は資料の保存や教育普及が最大の存在意義ではなかろうか(と個人的には思っている)。
ただし施設を維持するだけでも金がかかるので、各館は来館者を呼び込めるよう特別展示やミュージアムショップ運営などに苦心し、何とか資金調達を行うのだ。
前職の水族館は指定管理施設であったため、公務員でも何でもなく立場は一般リーマン同様なのだが、前述の博物館相当施設が担うべき任は非常にやりがいのある仕事として携わっていた。
とりわけ観察会などのイベントは子どもたちの生の反応が見られて面白い。
キッズの限られた語彙で表現される感動からしか得られない栄養がある。
「学芸員資格」って要る?
さて、そこで偉そうに名乗っていたのが飼育員兼「学芸員」である。
学芸員なんぞ興味のない人間からすればなんのこっちゃ分からん職業と思われる。幼少期の私は学芸会を企画する委員的なサムシングだと思っていたので、世間的にもきっとそうだろう(?)。
学芸員が何ぞやという細かい話はここでは省略するが、要するに資料の保管やら研究やらを行う仕事である。
そんな仕事に少なからず憧れがあった私は大学で取得したわけだが、水族館や昆虫館で働くのにこの資格が必ず必要かというとそんなこともない(歴史や美術を扱う館はさておき)。
動物の世話が業務に占める割合が高い園館なら飼育員が多く、採用されるだけなら学芸員資格は不要だと思う。専門学校を卒業して入る人も多く、その場合そもそも学芸員資格を取得するカリキュラムがない(その代わり潜水士など他の資格をとっていることが多い)。
※ただ最近は大卒しかとらない水族館も散見される
実習でお世話になった昆虫館では学芸員資格をお持ちでない方もいらっしゃったが、学芸スタッフという肩書きで学芸員同様、研究や教育普及に従事されていた(実際の業務内容の差異は分からないが)。
また新種発見や執筆・講演など、人気実力ともに凄まじい某有名な館の職員さんは専門学校出身で、最近学芸員資格取得を報告されていた。
というように、動物関係の館は研究に対する知見があれば学芸員は即座に必要というわけではないように思う。
教員免許、欲しい
水族館で働く中で「教員免許とっとけば良かったな」と思うことが増えた。キッズがどうこうは先述の通りで、そもそも自分は生き物や水族館のような施設に加え、子どもと接すること自体に面白さを見出していると再確認したからだ。
大学で途中まで教職の単位はとっていた。が、学芸員のカリキュラムや所属団体で部長を掛け持ちしていたこともあり、教職は切ることにした。
これが今でも尾を引く一つの後悔である。
学芸員と教職で迷ったら
私自身水族館に新卒で入り、数年働いて思ったのは
「大学でとるなら教職を優先した方がいい」。気がする。
そりゃ両方とれるならまとめてとってしまいたい。
しかし実習だなんだと(それも就活やら卒論やら立て込んでくる時期に)重なってしまうと両立はなかなか難しい。
学芸員資格は社会人になってからでも「とれる」。
先にも述べたが、館に勤務しながら合間を縫って資格を取得することは可能である。前職の上司も水族館に勤務しながら取得したそうだ。
しかし教員免許はそうもいかない。
学芸員が可能なら教員もいけるのでは?と思われるかもしれないが、違う。
何故なら教職にかかわる実習の拘束期間はあまりにも長い。
小中高どこを目指すかで変わってくると思うが、いずれにせよ教育実習は最短でも3週間以上要する。しかも平日(学校がある日なんだから当たり前)。
そんなもん働きながらとれるわけがない。
有休がそんなに連続でとれたとして、戻ったところで自分の居場所はないだろう(理由が理由なだけに)。
いつかなるかもしれんからとっとこ~とユーキャン感覚でとれる免許ではないのだ。
資格取得は計画的に
大学卒業後、何の因果か文系学部卒にもかかわらず水族館で働かせていただいたことはとても良い経験だった(なんならいつかまた似たような施設で働きたい。給料は大事だが)。
使うことはないだろうと思いながらとった学芸員資格、たまたま活かせてしまったので取得したことには何の後悔もない。
しかし社会人になってからの取得し辛さ、今後の食い扶持を考えると教員免許をオススメする気持ちが割と強い。
もし教員免許と学芸員資格で迷っている学生がこの駄文を読んでいるなら、今後を考える一助くらいにはなっていれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?