第2回滋賀公共交通ワークショップに参加記録1 資料や議題の前提について

概要
第2回滋賀公共交通ワークショップでは、公共交通の未来に関する3つのシナリオが議論されました。「公共交通を充実させる」「現状維持」「市場原理に委ねる」の各シナリオについて、参加者が暮らしへの影響を考察。ですが、市場原理の概念が歪められた情報が掲示されていました。


湖北地域で配布された資料はこちら


ワークショップの流れ

【開始前】

  • 指示された場所に着席します。

  • メインファシリテーターによる進行が行われるグループ、他のファシリテーターが進行する2つグループ、合計3つのグループに分かれます。

  • 減税会メンバー数名も参加しましたが、全員が漏れることなくメインファシリテーターのグループでした(笑)

そして、以下のような話し合いを3時間程度行います。

  1. 前回の振り返りと情報提供ー3つのシナリオ

  2. ワークショップ1 3つのシナリオから、暮らしがどう変わるか考える

  3. ワークショップ2 朝起きてから寝るまで、「どんな暮らし方」をどんな負担で求めるか

  4. グループ発表


1.前回の振り返りと情報提供

■前回ワークショップでの発言等をもとにした3つのシナリオを説明

シナリオA:公共交通が充実した暮らし

シナリオB:現状維持

シナリオC:市場原理に委ねる暮らし(資料見たら全然委ねてなくてびっくり)

それぞれのシナリオがスライドと資料で掲示され、その内容に対して「このシナリオだとこのように生活が変わる」と思ったことを参加者が付箋に書きます。

そして順番に一人ずつ、その内容と詳細を発表していきます。

ただ、そのスライドについては後ほど紹介しますが、第2回滋賀地域交通活性化協議会で誘導的であることが指摘されていましたが、それは修正されているはずの大津南部、東近江、彦根のワークショップのスライドでもあまり変わりませんでした。

3つのシナリオそれぞれについて説明する前に、一般的な用語の意味を解説させてください。

■キーワード1:「市場原理」とは?

商品やサービスの価格や供給量は、需要と供給のバランスによって自然に決まります。多くの人が求めるものは価格が上がり、売れないものは価格が下がることで、企業は利益を最大化しようとします。

また、採算の取れない事業はサービス内容の見直しによる集客アップや、経費削減による黒字化など工夫を行います。つまり、「自分たちの利益のためにも、人の役に立つ、選んでもらえるサービスや商品を作ろう」と安いもの、高いが優れたものなど、多彩な商品やサービスを作り上げるのです。そして、役に立たないもの、価格と価値が一致していないものは消えていきます。

市場原理に任せるというのは、「市場で自然に起こる上記の流れに任せるということであり、行政など非民間が手を出さないということ」です。

この仕組みが、経済成長や人の生活の利便性向上とも深く関わっています。

その「経済成長」とは、国全体の生産や所得が増え、人々の生活が豊かになることです。市場原理が働くと、企業はより利益を得るために新しい商品やサービスを開発し、技術革新を進めます。例えば、スマートフォン市場では競争が激しく、より高性能で安価な製品が次々と登場し、経済全体の活性化につながっています。そしてスマートフォン技術を前提に様々なサービスも生まれています。

また、市場原理によって競争が生まれ、効率的な経営が求められます。これにより、生産性が向上し、企業が成長することで雇用が増え、賃金も上がる可能性があります。消費が拡大すれば、さらに経済が成長するという好循環が生まれます。つまり、市場原理を活かさない生活も私たちは送ってはいません。料理のまずい店が変わらなければ、ブームが去れば、人は行かなくなります。タピオカ屋が可哀想だから全国のタピオカ屋が倒産しないように補助金を配り続けろという人がいたら、反対する人のほうが多いでしょう。

ただし、市場原理だけでは解決できない問題もあります。例えば、警察や公安、消防については「ニーズはあるけれど、サービスの利用数が多いほど必要とされている」ものではありません。そういったものは、現在の日本のシステムにおいては、政府や行政のフォローが必要という人は当然います。


■キーワード2:「補助金」

現状では、特に公共交通や福祉、医療、教育事業、男女共同参画などの人権系、農業や畜産などの分野において、事業継続や発展を名目に補助金などが配られることは多々あります。

補助金は、良くも悪くも現行サービスの維持、あるいは特定事業の薦めとなります。それが状況によっては必要なこともあるのではと思いますが、どちらにしても社会のニーズに合わせた業界の発展を妨げる要素があることも、併せて考える必要があります。補助金を出さなかった場合、そのビジネスは潰れてしまう、でもニーズ自体はある…なんていう場合は、ニーズに合ったサービスが生まれるでしょう。

赤字鉄道やバスに補助金を出せばそれらは維持されますが、新しいサービスは起こりません。補助金を出さず継続出来ない事業があったとしても、市民のニーズがあるのであれば、採算が取れて人の役に立つ規模のサービスが新たに始まり、それこそが町おこしになる可能性すらもあります。

 

■キーワード3:「政府や行政の介入」

国民が必要とするサービスが十分に行き届いていない場合、または特定の分野の市場を拡大する必要がある時、政府は補助金や助成金の支給、推進事業などを通じて介入を行います。例えば、コロナ禍における飲食店や宿泊業者の保護など、一定の状況下では特定の業界や分野への支援が実施されることがあります。

政府の介入により、本当に必要な事業が守られることも確かにあります。しかし一方で、政府の意向に沿わないサービスは、たとえ明確な需要や潜在的なニーズがあったとしても、成長しにくくなる傾向があります。例えば、タクシーやバス業界に対する補助金や運転手育成の支援が行われることで、完全ライドシェアサービスの導入が遅れる可能性があるのです。

 

配られた資料

A:地域交通が充実した暮らし(公共交通充実)

  • 大津南部地域の年間経費:67.52億円

  • 経済効果 96.3億円(この計算根拠は?)

  • 地域交通積極投資

  • 送迎がなくても「誰もが行きたい時に行きたいところへ」

  • 投資費用を運行コストで賄えない場合、新たな財源が必要

  • イメージは良いことばかり記載

  • 甲賀市のスライド案よりはイラストから笑顔などがなくなってはいるが、それでも誘導的な内容である点は変わっていない

  • 経済効果96.3億円の根拠は?以前、近江鉄道の経済効果が19億円とされていたものも、タクシー券の配布が入っていたため疑問が残る。この計算根拠を知りたい。

※細字は私の感想


B:現状維持

  • 現状維持

  • 現状で必要な公共交通はあるという前提で維持

  • 維持するための収支補填を行わずサービス低下を許容させるシナリオ

  • イメージ:今の滋賀県そのまま

  • サービス低下というのはやや脅し文句にも感じる。

※細字は私の感想


C:市場原理に委ねる暮らし

  • 市場原理に委ねる暮らし

  • 地域交通に対して公的補助を行わず赤字路線などは廃止し移動を個人の確保に委ねる??

  • これまで投じた公費は別の行政施策に充当

  • イメージ:ややネガティブばかり書かれている。

  • 「減ったら困る」以外の想像が貧困ではないか?

  • 赤字路線を廃止するデメリットもある。乗り換えなどもあるから赤字路線は全部廃止するというシナリオはやや非現実的

  • 「市場原理に任せる」「公費負担」が同時に書かれている。市場原理に任せるなら公費負担は入らないのでは?明らかに市場原理とは何かを全く持って理解しているとは絶対に言えない資料や想定。話し合いの土台として確実に間違っている。

  • ファシリテーターは「敢えて極端に資料を作った」と言っていたが、このような一般的な、解釈違いが発生しないはずの経済用語の意味すらはき違えている内容を、何故県民に話し合いの資料として提示できたのか、ひたすら疑問である。

※細字は私の感想

他の湖北(米原)、東近江、彦根地域の資料も似たようなものでした。


ワークショップ2

朝起きてから寝るまで、「どんな暮らし方」をどんな負担で求めるか

と言いつつ、どのワークショップでもあまり財源の話は具体的にはありませんでした。

最後に、シナリオA~Cのどれが考え方に近いか?を考え、意見を言いながら自分の考えに該当する場所に、シールを貼りました。
以下の写真の赤の●が交通事業者、緑が参加者。このグループだと、拡充寄りの現状維持B、現状維持B、現状維持よりの市場原理Cの人がいたということとなります。ちなみに交通事業者ですら現状維持ですね。

グループ発表

各グループ2人ずつ意見を全体に向けて言う機会がありました。

このような流れでワークショップは進みました。
前置きが長くなりましたが、次から実際の交通ワークショップのシェアとなります。


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