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Ф(¨ )創作にキク絵本( ..)φ⑧『バーバ・ヤガー』
こんにちは、鐘古こよみです!
私の好きな絵本の中でも、創作する人に特にお薦め! のポイントがある絵本を、のんびり紹介しています♪
第八回はロシアの民話『バーバ・ヤガー』をご紹介。
森に住む魔女に子供がさらわれる定番のお話なのですが、この魔女、いろいろと設定が定番じゃないんです……!
![](https://assets.st-note.com/img/1717125897842-d6Fel6Z0m8.jpg)
<基本情報>
タイトル:『バーバ・ヤガー』
作:アーネスト・スモール
絵:ブレア・レント
訳: 小玉知子
出版社: 童話館出版
<あらすじ>
母さんにカブを買ってくるよう頼まれたマルーシャ。でも、お金を落としてしまい、森に行けばはえているかもしれないと思って、探しにいきます。
すると、「ずしーん ずしーん」という恐ろしい音が。
この森にはバーバ・ヤガーという、魔女のおばあさんが住んでいたのです!
つかまってしまったマルーシャは、気付けばシチューにされるところ。
なんとか助かろうと、マルーシャの奮闘が始まります。話はどんどん、思わぬ方向に転がって……。
<感想>
ロシアなどスラブ地域の昔話なのですが、まずバーバー・ヤガーという名の魔女のキャラ設定が面白すぎます! ざっとこんな感じ。
・森の中で、ニワトリの足が生えた小屋に住んでいる。
・庭にも部屋にも人間の骸骨が飾られている
・恐ろしい姿のおばあさん
・悪い子を食べる
・臼に乗って杵で舵を取り、空を飛ぶ
・飛びながら箒で自分の移動した痕を消す
知っている魔女と、ちょっと違いませんか?
この絵本の中では、バーバー・ヤガーがさらに濃いキャラクターになっていて、ただの悪者ではなく、実に味わい深いんです。
そして主人公のマルーシャも負けていません。二人のやり取りが面白い!
魔女につかまり、お鍋の中で野菜に囲まれて目覚め、塩コショウされてシチューにされる寸前だったマルーシャは、「私はいい子です」と主張します。するとバーバ・ヤガーは「いい子なんて食えない」とあっさり鍋から解放。
ちゃんと話を聞いてくれるんだ! と、ここでまずびっくり。
代わりに家の仕事をすることになったマルーシャ。バーバ・ヤガーとの生活が始まりますが、摩訶不思議な魔女の生態に、いろいろ知りたいことが出てきます。するとバーバ・ヤガーは、まだマルーシャが何も聞いていないうちから気配を察したのか、「なんにも いうんじゃないよ!」
どうやら、何か一つものをきかれるたび、一つ年をとってしまうようなのです。
でも、バーバ・ヤガーは結局、「ひとつだけだよ!」「よおく かんがえてから きくんじゃ」と言って、何度かマルーシャの質問にちゃんと答えてくれます。
あれ、このおばあさん、意外とものわかりのいい人なんじゃないの。
それに、子供にものを聞かれるたび一つ年をとるような気持ち、ハッキリ言って、わかるなあ。子供って一度「なんで」が始まると、あれもこれも、こちらの事情なんてお構いなしだものね。よく考えてから一つだけ聞いてほしい気持ち、わかる……。
段々とバーバ・ヤガーに感情移入していく私(笑)
この後、マルーシャは再びシチューにされそうになり、放り込まれた鍋の中で、ハリネズミの話を聞くことになります。
このハリネズミがなぜ人間の言葉を話せるかというと、実は……。
という具合に、予想外の話中話が始まり、その話から魔女と取引する材料を見つける一人と一匹。
段々と魔女に対する対処法を身に着け、抜け目なく知恵を働かせるようになるマルーシャの成長も必見です!
いろいろと奇想天外なことが起こる中で、最後にはハリネズミの問題も解決されて、マルーシャは無事に家へ帰り……と、筋としてはオーソドックスな魔女の出てくる昔話。
そのシンプルな筋の中身がいちいち凝っていて、びっくりさせられるところが、私が創作にキク!と感じた何よりのポイントです。
筋はシンプルでも、キャラクター設定やちょっとした寄り道の仕方で、お話はいくらでも面白くできる。創作者の目線で読むと、そんなことを教えてくれる物語だと思いました。
昔話に出てくる「魔女」といえば、普通はテンプレな記号として終わってしまう悪役です。でもこの絵本に出てくるバーバ・ヤガーは違う。
子供を持つ母親が時に感情移入してしまうような、ちゃんと生きている登場人物として描かれているのです。
最後の場面でも、バーバ・ヤガーがなぜマルーシャたちを解放することになったかというと、子どもの相手にうんざりしたからなのです。この辺りの描写も大変コミカルで面白いので、どういうことかは、ぜひご自身の目で確かめてみてください♪
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