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【GENT'S STYLE】 クラフツマンシップ列伝 MINAMI SHIRTS 南祐太氏 後編

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Text by Yoshimi Hasegawa
Picture by Marco Spola

シャツはジャケットと異なり、皮膚に近いことから第二の皮膚とも言われる。ジャケットに比べると、より感覚的で繊細なフィット感が要求される。きつめが好き、緩めが好きなど、適正なフィット感は人によって大きく異なる。

ビスポークでシャツの型紙を作る際の難しさは機能面もさることながら、この適正な感覚を把握し、それぞれの顧客の要望に応じた理想のシャツを製品化することだという。

「うちのシャツは着用した時、人間は手を前にする動きが多いので、後ろのギャザーで動きを確保しつつ、身体全体にうまくゆとりがあるよう作業時の動きやすさも考えて作ります。

実は、日本で売られているシャツのほとんどが着た時に前身頃はぴったりで後ろが余っているものが多いんです。お客様はそれに慣れているので、うちのシャツは今までのシャツと違うと思われる方もいます。

靴紐を結ぶ時に後ろが突っ張るという方もいますが、後ろが余り過ぎるのもおかしい。採寸時に鏡の前に立つ時、海外の方は普段の姿勢でいる人が多いのですが、日本人は胸を張る方が多い。その状態で作り、家で着てみて力を抜いた時にシャツにシワがあると言われることもあるんです。

お客様が気にならないくらいの頃合いを把握しつつ、型紙の精度をあげていくのが難しいですね。袖ぐりも体に沿うように上げる感じですが、ばちばちに上げるわけでもない。脇の下は高め、下ろしても突っ張らないように調整します。

機能性は緩くしておけば楽だけれども、例えば袖は単体になった場合、袖山がある方がかっこいいといった美観の部分もあるので、双方を考えながら全体を調整しています」

「シャツによって可動域を確保するためのギャザーが多く見えるかもしれませんが、普通つまむものを全体に散らしているだけなので、どのスタイルのシャツも分量は一緒です。全体に散らばっている方がなめらかなのでジャケットの下でフィットしやすいですね。

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