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素人とプロのデザインの差は「文字」に表れる #1 勝てるデザイン

元・任天堂のデザイナーで、現在はオンラインコミュニティ「前田デザイン室」代表として活躍中の前田高志さん。そんな前田さんの著書『勝てるデザイン』は、「Illustrator時短術」「おすすめフォント3選」などデザイナー必見のテクニックはもちろん、「ダサいデザインはなぜ生まれるのか」「プレゼンはラブレター」など、デザインを武器にしたいビジネスパーソンにも役立つ内容。そうそうたる著名人からも称賛の声が届いた本書より、一部を抜粋してご紹介します。

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デザインは「文字が9割」

素人とプロのデザインを分かつもの。

それは間違いなく、文字です。

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逆に言えば、文字さえ押さえればプロっぽくは見えます。だいたいのデザインに文字は入っていますから「この人はどれくらいのデザイナー歴なのか」ということが、文字を見たらほぼわかります。

『人は見た目が9割』という本がありますが、デザインは文字が9割なんです。

実は、フォントにもクオリティがあります。

あまりデザイン経験のない人は「このフォントはちょっとな」というものを割と使っていたりします。いいフォントを使うだけでもデザインのレベルは上がります

だからまずは、「このデザインにはどのフォントか?」ということにこだわってみてください。

一番いけないのは、「このフォントは有料だから」と躊躇することです。無料フォントにも品質が高いフォントもありますが、最初は見極めが難しいでしょう。有料には有料の理由があります。フォントデザイナーの仕事というのは本当にすごくて、僕はとても尊敬しています。

買って試して、合わなかったら次から買わなければいいだけですし。これも「パラレルワールド」ですよね。そのフォントを買えばデザインが良くなるかもしれない、という未来が想像できれば買わない手はありません。

もちろん懐事情はそれぞれだろうけれど、クライアントワークならば、いいデザインにするための有料フォントが必要だと交渉するとか、それ込みのデザイン料にするなど工夫の余地はあるはずです。

料理だってそう。一流の料理人なら、どういう素材でもどういう条件でも美味しいものを作るでしょう。でも、食材がいい方がより美味しくなるに決まっています。

デザインも同じことです。

僕はよく「いいフォントを使おうね」とアドバイスしています。

じゃあ具体的に「いいフォント」とは何なのかを書いてみます。

「いいフォント」4つの条件

(1) 造形の美しさ

デザイナーにはお馴染みかもしれませんが、僕はまず「モリサワフォントを入れてみて」とアドバイスします。

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先ほども書いた通り、やはり有料フォントはクオリティが高いんです。具体的に言えば、読みやすく、形がいびつじゃない。また、レイアウトを組んだ時の気持ち悪さがない。そのへんの造形の美しさを保つための細部調整に時間を割いているかどうかが、フォントの良し悪しを分けます。

もちろんフリーフォントでもいいものはあります。ただし、玉石混交でばらつきがあります。

(2) 世界観に合っているか?

デザインの世界観に合ったフォントを選べているか、も重要です。大きく言えば、明朝かゴシックかに大別できます。繊細なデザインなら細い明朝でしょうし、ポップで明るい感じならゴシック系。

その文字を声に出して読み上げる時のテンションで考えてみるとよいでしょう。早口なのか、ささやく感じなのか? 自信満々な感じなのか?

よくある事例なのですが、初心者であるほどスタンダードなフォントでは弱いと感じ、特殊なフォントを選びがちです。

イラストや写真とフォントの世界観が合っていないものもよくあります。文字を選ぶ際は、世界観に合っているかを気にかけてみてください。

(3) 使い方は合っているか?

フォントには、文字として読みやすいものと、ロゴとして使うと造形が美しいものの2種類があります。

この2つのフォントは役割が違うので、使い分けしましょう。見出し用のフォントを本文に使うと、読みにくいので機能しない。逆もしかりで、本文用のフォントを見出しに使っても見出しとして映えないのでやはり機能しません。

(4) 大きさは適切か?

次に重要なのが、フォントの大きさです。情報には優先順位があります。だいたいダメなものは、なんとなく全部が大きい。チラシにしても見せる順番があります。最初にここを、次はここを読んでもらってという視線の設計が必要です。

(5) 文字間は適切か?

それから、フォントの文字間も超重要

文字間とは、文字と文字の間のスペースのことです。デザインをしない人のために補足すると、世の中のデザインは、パソコンで入力した文字をそのまま並べているわけではなく、すべてデザイナーが文字間を調整しています。それは0.1mm単位以上の細かさに及ぶものです。

そうすることで視覚的に見やすい、気持ちの良いデザインになっているんです。

デザイン事務所に入ると、まずは文字間を叩き込まれるそうです。タイポグラフィー、つまり文字の扱いは宇宙と言われるくらい、やり出したら答えがありません。餅は餅屋と言いますが、作ったロゴタイプをフォントデザイナーに見てもらうデザイナーもいるくらいです。

(6) 行間は適切か?

最後に、行間。行間が詰まっていたら読めないし、空きすぎていても読みにくい。ベストのポイントがあります。雑誌とかがわかりやすいですね。「読みやすく、美しく」。自分の中の最適解を持ち、これを意識していたら、次第に美しくなります。

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勝てるデザイン

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