見出し画像

棺の中の私は、たぶん笑っている…佐伯チズさんが遺した言葉 #4 今日の私がいちばんキレイ

昨年、惜しまれつつ他界した、美容家の佐伯チズさん。晩年の著書『今日の私がいちばんキレイ 佐伯流人生の終いじたく』には、チズさん流の生き方、老い方、そして死に方のヒントがつづられています。多くのファンから愛された、チズさんの「遺言」ともいえる本書。その中から、心に響く「最後のメッセージ」をお届けします。

*  *  *

お葬式は質素でかまわない

お葬式は限りなく質素でいい。私がそう周囲に伝えたことは確かです。だからといって、地味で湿っぽいものを想像しているわけではありません。

画像1

祭壇はごくシンプルでいいし、豪華な花で飾りたてなくても構いません。ただ、カサブランカやアジサイ、スイートピーなど私が好きな白い花が写真の周りにあればうれしい。そして、お香典の代わりに、皆さんが思い思いに選んだ好きな花をもってきて、棺の中へ入れてくだされば私は幸せです。

花以外のものは一切棺に入れないでいただきたい。手ぶらでルンルンで、夫の待つあの世へ行くから。そもそも棺だって一番簡素なもので充分ですし、そのほうが隙間にいっぱい花が入るでしょう。

たくさんの花に囲まれて福山さんとマイケル・ジャクソンのBGMで送られる、それ以外、私がお葬式に対して望むものはありません。皆がお別れに来てくれれば、それだけで私は上機嫌です。もちろん、来てくれなくても恨みません。私があなたのもとへ会いに行くわという気持ちです。

「また格好つけちゃって。実際には立派なお葬式をするんでしょう?」などと思われるかもしれませんが、正真正銘これが私の本心です。

それよりも私にとって大事なのは、お骨の“終い方”です。死んだら夫の遺骨と私のお骨をミックスしてください。最期は夫と一体になるのが私の夢ですから、これだけはお願いしたいのです。

よく死ぬことは、よく生きること

ちなみに、三十年前に亡くなった夫はお墓に入っていません。お骨は滋賀にある私の母の実家に安置し、私はお舎利さん(喉仏の骨)だけを手元に置いて今も一緒に暮らしているのです。

画像2

私たちにはお墓を継ぐ人はいません。だから、「私が死んだら夫と自分の骨を一緒にして、永代供養にしてほしい。そのための費用は残しておくからね」と、ずいぶん前から弟と甥に伝えてあるのです。

自分でこんなことを言うのも変ですが、たぶん私、ニコッと笑って死んでいると思います。だからみんなにその顔を見てもらいたいのです。そして、「この人、笑ってるわ」と言ってほしい。

私は死ぬまで日焼け止めクリームをつけているはずだから、「やっぱり最期までちゃんと塗っていたのね。だからきれいじゃない」と言ってもらいたいと思っています。

「よく死ぬことは、よく生きること」といいます。

私が自分は笑って死ねると信じているのも、「そのときどきを生き切ってきた」「もう思い残すことはない」という実感があるからです。

気持ちよくきれいに死んでいくためには、いろいろな欲を捨ててただ今を生きる、生をまっとうする、それに尽きると思います。

◇  ◇  ◇

連載はこちら↓
今日の私がいちばんキレイ 佐伯チズ流 人生の終いじたく 佐伯チズ

キレイ

紙書籍はこちらから

電子書籍はこちらから