#1 昼下がりの情事…「社宅妻」のリアルを描いた官能小説
「少し汚れた指でされるのが、レイプみたいでぞくぞくするの」。34歳の官僚の妻・九條冴子は、年下の電器店修理員・俊一が吸った乳房を自分で揉みしだき先端をつまむ。キッチンで後ろから押し入れられた興奮がよみがえる。小学生の息子はまだ帰宅しない……。今回ご紹介するのは、過激でスリリングな官能小説『社宅妻 昼下がりの情事』。どうぞお一人で、こっそりお楽しみください(笑)!
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第一章 浮気妻のキッチン
「あなた、朝食は?」
「いや、いい。食べてる時間、ないんだ」
エプロン姿の九條冴子はキッチンから声をかけたが、夫の敏樹はすでに身支度を終えて出かけようとしているところだった。
「スープだけでも……」
「じゃあ、ひとくち」
冴子が差し出したマグカップを受け取り、口をつけた敏樹は「熱い!」といった顔をしてすぐにテーブルに置いて玄関に向かった。
「ゆうべ、帰ってきたの気がつかなかったわ。何時だったの?」
「ええっと、三時過ぎかな」
「家には五時間しかいないで、また出勤なんて。これで体壊さない方が不思議なぐらいね」
「しょうがないだろ。仕事だから」
靴を履いた敏樹は、振り返る暇も惜しいといった様子でそのまま出て行こうとした。
「気をつけてね」
「ああ、送らなくていいよ」
だが冴子はドアを半開きにして敏樹がエレベーターに向かって行く後ろ姿を見送った。平日はいつもこの調子で、深夜に帰宅し朝は八時過ぎには出て行く。ろくに会話もできないので、何か用事があればメールに書いて送っているほどだ。
小学校四年になる息子の翼と三人暮らしだが、ほとんど母子家庭のようだ。土日ぐらいは家族でゆっくりしたいのに、その貴重な休みも半分ぐらいつぶれてしまう。役人がこんなに多忙な日々を送っているとは結婚前には夢にも思っていなかった。
敏樹とは友人のパーティーで知り合い、半年後には結婚していた。当時二十三歳だった冴子は、官僚は堅い仕事だし安定している、というぐらいしか認識していなかった。官舎は「都心の一等地」とまではいかないが、便利のいい場所に建っている。三人暮らしには不足のない広さの部屋をかなりの低家賃で提供してもらって、大変ありがたいと思っているのだが、もう少し夫に家庭を顧みる時間があれば言うことはない。しかし、そんな生活も何年も続くと慣れてしまうのだが。
冴子は家中のくず入れの中身を集めて袋に詰め、階下にあるゴミ集積の場所に持って行った。部屋に戻る途中で同じ階に住む友美と会った。
「九條さん、きょう、時間ある?」
驚いたことにまだ朝の八時過ぎだというのに、友美の顔にはもうフルメイクがほどこされていた。素顔はめったに見せない友美は、メイクやファッションにも手を抜かない。
「きょう? 何時ごろかしら。何か用?」
「自由が丘のお店でセールがあるのよ。きょう一日なんだけどね、すごくお安くなるの」
以前、友美に連れられて行ったブティックのことだろう。値段が高くて、セールで半額になってもまだ高いと感じたし、冴子の好みとも少しセンスが違った。
「きょうは午後、電器屋さんが来るの。修理で呼んでいるんだけど、時間がはっきりしなくて」
「あらそう、それは残念。ずらせないの?」
「ごめんなさい。DVDのデッキ、早く直さないと主人が機嫌悪くて」
「じゃあ、仕方ないわね」
「また、今度誘ってね」
別れぎわ、友美が体の向きを変えた拍子に胸がぶるんっと揺れた。体格がいいので胸も大きいが、ノーブラだったようでTシャツの上から先端のポッチが透けていた。顔は完璧でも首から下はまだ支度が済んでいない様子で妙になまめかしい。
「近いうち、表参道のレストランにランチに行かない? ウエイターがイケメンばっかりの店を見つけたのよ。味もいいし値段もそこそこだし。ね。来週、行きましょ」
「そうね」
イケメンのウエイター、か。冴子はさほど興味はないが、友美に付き合って外出するのもたまにはいい。官舎の先輩、というだけで奢ってくれることもある。翼が学校に行っている時間には冴子が部屋に呼んでお茶を飲んだりもしている。
だがきょうは、友美に付き合っている暇はないのだ。冴子は部屋に戻り、掃除と洗濯をてきぱきとこなし、普段より時間をかけてメイクした。下着も取り替え、服は迷いに迷ったが、外出用のおしゃれ着を家で身につけているのも不自然なので、カジュアルだが見栄えのする薄手のシャツブラウスとデニムのミニスカートにした。
冴子は若い頃からミニスカートが大好きだ。スーツでもスカートはミニ、と決めている。アメリカのキャリア・ガールのイメージで、かっちりとしたジャケットを着て、スカートはタイトのミニ。すらりと伸びた足の先はヒールのパンプス、というスタイルに憧れていた。結局、冴子は二十三歳で敏樹と結婚してしまったので、OL生活はたった三年しか続かなかった。だが憧れのファッションだけは、子持ちになっても続けていたいのだった。
午後一時より五分前にインターホンが鳴った。彼もまた待ちきれなかったのだろうか。冴子はオートロックを解除し、彼がエレベーターに乗って六階に上がってくる頃合を見計らってドアの鍵も開けた。
「こんにちは。○○電機です」
玄関のドアを開けて入って来た俊一は、紺色の作業着風ジャンパーにコットンパンツ姿だった。軽く会釈した彼の視線はミニスカートから伸びている冴子の生足に注がれていた。
「早かったのね」
「午前中に行った家のエアコン修理が早く済んだから。フィルターが汚れて詰まっていただけで、壊れていなかったんだ。楽な仕事だったよ」
俊一は用意されたスリッパもはかずに部屋に入って来た。
「そこの家の奥さんって、若い人?」
「いやいや、年寄りだよ」
「なあんだ」
「何? 気になるんだ」
「だって、原因がわかっているのにわざと呼ぶってことも考えられるじゃない」
「そうだね、どこかの奥さんみたいに」
「どこの奥さんのことかしら」
「ミニスカはいて待ちかまえてたりとか」
俊一は修理道具の入ったケースを床に置くと、いきなり冴子を抱いてキスしてきた。
「あ、ん……」
冴子は抵抗するどころか彼に体をあずけ、唇を吸われるままになっていた。キスは濃厚で深く、遠慮がちだった冴子の舌はからめとられそうになっていた。
キスをしながら俊一は下半身を冴子に押しつけ、抱いていた手をずらして左手は胸に、右手はミニスカートの裾から進入しようとしていた。
「だめ、早く修理しちゃって」
「いいじゃないか後で。こんなのすぐ直るから」
「いいえ、お楽しみは後で、でしょ」
冴子は俊一の体を押しのけると、DVDのデッキを指さした。彼の下半身がすでに固くなっていたのを感じて、冴子もついその気になってしまったが、仕事だけはきちんとしてもらわなければならない。
「ディスクを出し入れする時に、止まるのよ」
「ああ、よくあるんだ」
「子どもが乱暴に扱うからすぐに壊れるの」
「面倒な修理の時は、買い換えた方が安くあがりますよって言うことにしてるんだ」
「あら、これも? まだ買ってから一年ちょっとよ。出し入れの時以外はスムーズに作動するのに」
「奥さん、あっちの方の出し入れの時はスムーズなのかな?」
俊一は口元に下品な笑いを浮かべながら振り返った。
「いやあね、それ、どういう意味よ」
だが冴子は口ぶりとは裏腹に不快な表情は見せていなかった。ミニスカートの腰に手をあてて、俊一の作業を見下ろしていた。
彼はジャンパーを脱いでポロシャツ姿になっていた。大手電器店と契約している修理専門の会社から派遣されているのだが、冴子はもう彼を直接指名して来てもらっている。三カ月前、テレビの修理が最初だったが、その時はとても感じのいい青年としか思わなかった。だが次にまた同じ箇所が壊れて出張してもらった時には、冴子の中によこしまな考えが浮かんでいたことは確かだ。
「終わった? こっちに来て飲み物でもどう? アイスティーぐらいしかないけど……」
「飲み物じゃなくて、欲しいものがあるな」
冴子がアイスティーを用意するためキッチンに入ると、俊一も続いてやって来た。
「何が欲しいのかしら、ビールでも?」
「決まってるじゃないか」
いきなり背後から襲われた冴子はさすがに抵抗した。
「だめ。待って……」
「さっきからもったいぶって。待てないんだよ」
俊一は冴子をシンクに押しつけると即座にスカートの下に手を入れた。まくる手間もいらないほどの短いスカートの下は、こざっぱりとシンプルな白のショーツだった。
「こんなところで、いやよ。ねえ、あっちで……」
「こっちは一刻も早く出し入れがしたいんだよ」
もがく冴子の腰からショーツを剥がすと、白くつややかに光る剥き卵のような臀部が現れた。適度なボリューム感はあるが、引き締まって皮膚には張りがあり充実したヒップだった。
手早くズボンを下ろした俊一は、すでに棍棒と化している自らの分身を握りしめた。
「あっ、あはぁっ」
その瞬間、冴子の頭ががくっと後ろにのけぞった。