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毛が抜け始めた高校2年生の夏…ただただ不安で、怖かった #3 無いならメイクで描けばいい

髪やまつ毛、眉毛など、全身の毛が生えない難病、全身脱毛症。そんなハンデを負いながら、美容系ユーチューバー・メイクアップアーティストとして活躍し、同世代から多くの共感を集めているGYUTAE(ギュテ)さん。初の著書『無いならメイクで描けばいい』は、そんなGYUTAEさんの壮絶な半生と、力強いメッセージが詰まった一冊。ページをめくるたびに生きる勇気がわいてくる、そんな本書の一部をご紹介します。

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お風呂上がり、鏡を見ていたら……

高校2年生になると、休日に遊びに行く時、メイクをして外出することも多くなりました。メイクをして外出できるようになったのは、Twitterのフォロワーが増えて自分に自信が出てきたから。よく遊んでいたのも、Twitterで知り合った友だちでした。

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まだ母にもメイクをしていることは隠していたし(多分バレていたけど)、地元の友だちにも見せていなかったけど、Twitterで知り合った友だちは逆に僕のメイクした姿しか知らないから気が楽でした。

高校デビューしてからは少し自分に自信がついて、性格も明るく社交的に。友だちとギャグとか言い合ったりしていました。

そんな高校2年生の夏。お風呂上がり、鏡を見ていたら頭に十円玉くらいの大きさの毛がない部分があるのを見つけました。そのころは美容師になりたいっていう夢があったし、毎朝ヘアセットをちゃんとして、髪に人一倍気を遣っている子だったから、本当にショックで。「これからどうやって生きていこう」というレベルで落ち込みました。

でも「ちょっと抜けているだけで、放っておいたらすぐ髪が生えるんじゃないかな」と思い直して、その時はそこまで深刻にとらえていなかったんです。毛が抜けるような心当たりもないし、そもそも脱毛症という病気があることも知らなかったし、病院に治療をしに行くものだっていう知識もなかったから。

恥ずかしさもあって親にも言わず、誰にもバレないように、毛のない部分を他の部分の髪で隠していました。

どうして自分だけこんなことに?

でも、小さかった脱毛部分が、十円玉サイズからいつの間にか五百円玉サイズになって……。毎日毎日、髪が抜けていくから、どんどん毛がない部分が広がっていきました。ネットで調べたりもしたけど改善方法も全然わからなくて、ただただ不安で、すごく、怖かった

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毛が抜けるのって、確かに命にかかわることじゃないんだけど、本当にすごく怖い。頭を洗うたびに指にゴソッと髪がついてきて、お風呂場の排水溝にいっぱい髪がたまって……。何コレ? なんで? って。どうして自分だけ、こんなことになるんだろうって思っていました。

「これはもう病院に行かないとヤバいかも」と思い、初めて母に髪が抜けていることを話しました。8月ごろに抜け始めて、打ち明けたのが10月。その状態になってやっと病院に。それで診断された病名が「ストレス性円形脱毛症」でした。

だけど診断されたからといって、何かが変わるわけではありません。病院に行って変わったのは、通院するかしないかだけ。もしかしたら、症状が出始めてすぐ病院に行っていたら、違っていたのかもしれません。

でもストレス性って言われても思い当たる原因はなく、少し前に彼女と別れたけどそんなにストレスを感じていたかというと、そんなこともない。しかもストレス性円形脱毛症の直接的な治療法はなく、「ストレスをなくしてください」とか言われても……って感じでした、ずっと。

病院での光線治療がスタートしたものの、一向に改善されず、毛が抜けている部分に「スーパーミリオンヘアー」という中高年の方が薄毛をカバーするために使う黒い粉を振ってスプレーで固めて、病気を隠して学校に行っていました。

11月、毛がない部分は握りこぶしくらいの大きさになっていました。そうなると、もうごまかすのが難しくなってきて……。制服の白いシャツに落ちた黒い粉を見て、友だちから「何、その粉」って言われて、「あぁ、もう隠せないな」と思い、仲が良かった親友ふたりにだけ、脱毛症のことを打ち明けました。

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無いならメイクで描けばいい

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