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スマホ、お酒、タバコ、甘いもの…やめられない「悪癖」を一発で直す方法 #2 人間の器

伊藤忠商事社長・会長、日本郵政取締役、中国大使など、数々の要職を歴任し、稀代の読書家としても知られる丹羽宇一郎さん。著書『人間の器』は、その豊富な人生経験をもとに、人として成長するにはどんなことを心がけて生きればよいか、自分の器を大きくするには何をすればよいか、時に優しく、時に厳しく教えてくれる作品です。賢人の知恵がたっぷり詰まった本書、その一部を抜粋します。

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ヘビースモーカーだった私

アメリカに駐在していた時期、私は一日に2箱40本以上煙草を吸うヘビースモーカーだったのですが、35歳くらいの頃、身体のことを考えて禁煙を思いたったことがあります。

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習慣になっている煙草をやめるのは難しいもので、いったん禁煙に成功しても、また何かの拍子で復活することが少なくありません。

それは禁煙の手段が、たいてい吸いたい欲求を抑える方向でなされるからだと思います。吸いたい欲求は抑え込んでも、消えるわけではない。むしろ抑えれば抑えるほど、欲求はバネのようにたわんで反発する力が強くなる。

私も最初は意志の力でコントロールしようと思いましたが、何度試みてもダメでした。同僚と禁煙がうまくいくか否か、お金を賭けるようなこともしましたが、ことごとく失敗しました。

そんなことを繰り返すうちに、欲求を意志でコントロールするやり方には問題があると悟ったのです。私が体験して納得した禁煙方法は、それまでとはまったく正反対のやり方でした。

ある晩、アメリカ人の同僚もまじえ、飲みに出かけたときのことです。私は夜更けまでお酒を飲みながら、友人が持っている分も含め、煙草5箱を全部吸ったのです。ところが翌朝、猛烈に気分が悪い。喉がひっくり返ったようで、死ぬほど苦しい。会社に出勤したものの、気持ちが悪くてどうにもしようがない。仕事どころではありません。

それ以来、45年ほどの間、夢の中で煙草を吸い、反省したことはありますが、現実の世界では一本も煙草は吸っていません。たまにお酒を飲んでいるとき一本くらいいいかと思うこともありましたが、あの人生最大の苦痛のことを思い出したら、いくらお金を積まれても、とてもじゃないが吸えない。

頭でダメだとわかっているけれど、気分がよくなるものは、なかなかやめられない。人間にはこうした性質があるならば、私がとった禁煙の方法のように、むしろその気分がよくなることを徹底して死ぬほどやってみるのは一つの手だと思います。

欲求をコントロールするには

「わかっているけどやめられない」のは結局、頭でダメだとわかっているだけで、身体が納得していないからです。つまり、本当に腹落ちしていない。だからこそ私がとった方法みたいに、ダメなことを、死ぬ思いをするほど身体に徹底して刻み込むより他はないでしょう。

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たとえば若い世代の中には、仕事や勉強をしなくてはいけないのにゲームが好きでたまらず、日常生活に支障をきたすほどゲーム依存になっている人がいます。

こういう人は、たとえばほとんど寝ずにゲームを何十時間、あるいは何日もぶっ続けでやってみるといい。頭が朦朧として眩暈がし、体調がおかしくなるくらいまでやってみる。そこまでいけば、さすがにゲームのやりすぎはまずいと、身体が気づくかもしれません。

たとえがよくないかもしれないが、ダイエットをして痩せようと思っているのに、甘いものが大好きでやめられない。それならケーキをはじめ、いろいろなお菓子を気持ち悪くなるまで食べまくってみてもいいかもしれません。

一日中、普通の食事はとらずに、もうケーキなんか見たくもないというくらい甘いお菓子ばかり胃に入れてみる。身体の調子がおかしくなり、気分が悪くなるくらいまで続ければ、甘いものはもう欲しくないという心境が芽生えるかもしれません。

内容によっては過剰に行うことが身体によくない場合もあるでしょうから、そこは気をつけないといけません。ただ、欲求を意志の力で抑えようとするのに比べれば、ずっと効果があるのではないかと思います。

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人間の器 丹羽宇一郎

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