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寝つきがよくなる!「覚醒のスイッチ」をオフにするお風呂の入り方 #2 スタンフォードの眠れる教室

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

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体温を下げて脳をリラックスさせる


人間が入眠するときは、皮膚内部の血流が増え、体の表面の体温(顔や手足の体感温度=皮膚温)が上がり、やがて皮膚から放熱することで深部体温(体の中の体温)が下がります。覚醒している時、皮膚温と深部体温の差は約2℃ですが、入眠時は深部体温が下がって1.2℃程度の差に縮まります。

深部体温を下げて、皮膚温との差を縮める。これが体温による覚醒のスイッチをオフにし、入眠モードにする方法その1です。
 
覚醒のスイッチをオフにする方法その2は、脳をリラックスモードに変えること。寝つきが悪い人は、体温を下げて脳をリラックスさせましょう。
 
アメリカには湯船に浸かる習慣を持たない人も多くいます。日本人に多いお風呂好きなら、深部体温を下げてぐっすり眠るためのスイッチとして、入浴を活用したいものです。
 
人間はヘビやトカゲと違って恒温動物なので、深部体温の変動は大きくありませんが、昼間に高く、就寝時に低くなります。それならお風呂は入眠に逆効果だと思われる人もいると思うのですが、一時的に上昇した体温はその後下がるのです。
 
例えば、15分ほど入浴すれば、「芯から温まる~!」という言葉通り、皮膚温も深部体温も上がります。ただし熱いお湯や長風呂は禁物。刺激が強すぎて交感神経が優位になってしまいます。38~40℃のぬるめのお湯に15分程度浸かるといいでしょう。
 
ゆるやかに体温が上がると、体温上昇は体にとっては危険信号ですので、体温を一定に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)の働きで汗をかき、手足から放熱するなどして、皮膚温・深部体温はともに下がり始めます。
 
入浴して1時間半から2時間後、元に戻った深部体温がさらに下がり、皮膚温との差が1.7℃程度と小さくなります。このタイミングで入眠すると、覚醒のスイッチがオフになります。入眠モードなので寝つきは良くなり、「黄金の90分」が手に入るというわけです。

寝る直前のお風呂は入眠の大敵


入浴後、上がった深部体温が元に戻り、さらに下がるまでの所要時間はおよそ1時間半から2時間。逆にいうと、入浴直後は下がりきっておらず、眠りにくくなります

従って、「ああ、のんびりしていたらもう寝る時間だからお風呂に入ろう」というのは、入眠のためには良くないこと。さっとシャワーを浴びて寝たほうがいいでしょう。あるいは38℃程度のぬるめのお湯に短時間浸かることをお勧めします。
 
ちなみに朝風呂でも、入浴後の1時間半から2時間後に眠くなるので、仕事が始まる頃にぼんやりしてしまうため、お勧めできません。
 
良く眠るためには、お風呂とシャワーを時間帯によって使い分けるのが正解です。
 
最近はサウナがブームになっており、サウナを利用すると寝つきが良く深い睡眠が得られるとよく耳にします。サウナのあとも、一度上がった深部体温が皮膚からの熱放散によって下降しますので、当然眠くなります。
 
有酸素運動では、寝つきも早くなり、持続する深い睡眠が出現することは広く知られています。サウナは有酸素運動ではありませんが、心地よい疲労感をもたらし、自律神経も整いますので、眠りにも良い影響を与えるのではないでしょうか。
 
しかし、サウナも入浴と同じで、そのタイミングと時間が重要だと思われます。

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