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『仁義なき戦い 頂上作戦』…アウトロー映画の金字塔が一冊に! #5 シナリオ仁義なき戦い

巨匠・深作欣二によるヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』。菅原文太をはじめ、松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、田中邦衛など、戦後を代表する名優が一堂に会した本作は、今なお映画ファンを熱狂させています。『シナリオ仁義なき戦い』は、第一作目の『仁義なき戦い』から、続編の『仁義なき戦い 広島死闘篇』『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』まで、シナリオを完全収録した貴重な一冊。ファン垂涎の本書より、一部を抜粋してお届けします。

*  *  *

1 前三部のダイジェスト

(主要人物に適宜紹介タイトル)

敗戦直後の広能の喧嘩、殺人。

山守と盃を交わす広能たち若衆。

広能に哀訴する山守、利香(土居殺し事件)。

有田事件の抗争、新開殺し。

坂井の最期。

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村岡組跡目相続式の山守。

山守と睨み合う打本。

明石辰男と兄弟盃の打本。

新年宴会で挨拶する武田。

山守と神和会会長の兄弟盃。同席する副会長伊丹義市。

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数々の抗争、流血事件。

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広能と話す大久保と上田利男。

広能と話す岩井。

明石組宮地、岩井等と対決する武田。

広能・武田の対決。

武田にバッジを返す広能と、挑発する槇原、江田。

打本や岩井から破門状を受ける早川。

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打本会事務所に殴り込みをかける早川指揮下の組員。

銃撃、鮮血、叫喚の中で、

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メイン・タイトルと、クレジット・タイトル

N「昭和二十年、焼土と化した広島県呉の町で、復員兵広能昌三等一団の若者たちは、青春の欲望が奔るままに暴力世界の制覇に命を燃やした。だが、親分山守義雄の老獪な支配と権力争いの仲間割れとで、若者たちは次々と葬り去られていった。

昭和三十七年、広島市最大の暴力団村岡組の跡目を山守が相続して広島に君臨したが、これを不満とする村岡の舎弟打本昇は、神戸の広域暴力団明石組と盃を交わして対決の構えを見せた。

山守組もまた若頭武田明の献策によって明石組のライバル神和会と結託し、広島は西日本を二分する二大組織の対決の最前線となった。広能はその危機を回避すべく、呉の長老大久保憲一、明石組若衆岩井信一と組んで山守引退の工作を進めたが、組の防衛を主張する武田と衝突して山守組を破門された。

これを知った明石組もまた山守に接近する打本の乾分早川英男を破門させて報復した。

早川は山守組に走って打本への攻撃に転じた。こうして広島・呉を舞台に、明石組系列下の打本会と広能組、神和会系列の山守組及び早川組との間で、血で血を洗う一大抗争の火蓋が切って落されたのである」

2 世相モンタージュ

町に溢れるオリンピック・マーク。

演説する池田首相。

ビル工事。

コンビナートの煙突群。

マイカーの行列。

「暴力・脅喝事件はすぐ一一〇番へ」の立看板。

N「昭和三十八年春、東京オリンピックを翌年に控え、池田内閣の高度経済成長政策の下で繁栄に向って急ピッチな前進を始めた市民社会は、秩序の破壊者である暴力集団にようやく批難の目を向け始め、それに呼応して警察も頂上作戦と呼ばれる全国的な暴力団壊滅運動に乗り出していた」

3 打本会事務所の中

凶器探知器や投光機などを動員した警察の大がかりなガサ入れが行なわれている。

涼しい顔で眺めている打本と若頭高石功それに組員の森田勉(34)、福田泰樹(28)、柳井秀一(22)、谷口寛(21)、本田志郎(21)等。

捜査員が奥から火縄銃を一挺持って捜査主任の許へくる。

署員「道具らしいもんいうたら、こんとなもんしかありゃアせんです」

主任「(いまいましげに)火縄銃か……こんとなもんで喧嘩しとる訳じゃあるまアが、お前等!」

呆けて冷笑している打本たち。

4 広島市中心街

自店のクラブ「クラウン」から二十人ほどのボディガードに守られた山守が向いの銭湯に入ってゆく。びっくりして見ている通行人たち。

N「警察陣の躍起な予防作戦にもかかわらず、広島市の中心街は東西に二分されて、打本会と正面から対決する構えになった山守組には山陽道・中国地方から続々と助ッ人の組員が集結していた」

5 広島・旅館の玄関

五、六人ずつ次々と広島入りしてきた各応援組員たちを武田と江田が丁重に挨拶して迎え、若衆たちが部屋へ案内してゆく。その中にキビキビと働く武田組若衆の織田英士(23)、丸山勝(20)、江田組若衆の山本邦明(20)、金田守(19)等の姿。

6 呉・繁華街

槇原組的場保(24)が走り回っている。

的場「非常呼集じゃ! 非常呼集じゃッ!!」

あちこちから飛び出してくる組員の上原亮一等。

N「一方、呉では、山守組傘下の槇原組が広能組と対決して既にゲリラ戦の様相を呈していた」

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7 槇原組事務所

槇原が集結した森久宏(27)以下の組員たちの前で、

槇原「中通りで広能が上田と飯喰っちょるけん、行ってトッてきちゃれい!!」

8 繁華街の料理屋の表

広能が上田と連れ立って中から出てくる。その前に急停車のセダン。若衆の河西清(33)、竹本繁(31)、岩見益夫(27)等がバラバラと飛び降りてきて、

河西「乗ってつかい!! 槇原のやつ等が来ますけん!!」

広能と上田を突き飛ばすように車の中へ。同時に側を通過して停まる的場等の車。河西等は間一髪、反対方向へ疾走し去る。

N「こうした緊張の中で、生き返ったように躍動し始めたのは、かつての広能たちのように若い野心と欲望に飢えた各組の若衆たちであった」

9 広島・露地奥の空地

打本会の柳井、谷口、本田の三人がスコップで穴を掘り、その中に、拳銃類を詰め込んだバッテリー・ケースを埋め、上から用意の鉛板をかぶせて土をかけ、更にバケツの水をまきながら何度も土をかぶせて痕跡を消す。一心不乱な三人の表情。

10 床屋の表

江田組若衆の山本と金田がツルツルの坊主頭をなでながら颯爽と出てくる。

水商売らしい二、三人の女たちが通りかかって、

女A「アリゃア、どうしたん、その頭!」

山本「戦争が始まるけんのう、身心共に清めとるんじゃ!」

金田「お前等とのつき合いも断つけん、近づくなや!」

女B「フン、いびせくてチンポ立ちゃせんのじゃろ!」

山本「なんど、こんクソ袋!」

からかって逃げる女たちを追いかける。

11 河原

停まっているタクシーの中から悲鳴を挙げて逃げ出してくる女高生の千鶴子。

不良運転手の古川が追いかけてシートに引き摺り込み、犯しにかかる。と、いきなり両足を引っ張られて河原に投げ出される。武田組若衆の織田と丸山が若さに委せて凄まじいヤキ入れ。

織田「こン外道ッ、なんの真似じゃい!!」

丸山「わりゃアの腐りマラ、ブチ切ってくれちゃろかい!!」

古川「(売上げ金を掴み出して)こ、これで、こ、堪えてつかい、のう……!」

織田「舐めなや、強姦未遂はなんぼ打たれるか分っちょるんか、おう、二万や三万でカッコつくかい!!」

千鶴子、鞄を拾って夢中で逃げてゆく。

丸山「(その方へ)オーイ、弁償金取っちゃるけん、待っとれえ……!」

12 バー「エデン」(早川の店)(N)

早川と若衆の仲本博、楠田時夫等が集まっている所へ、表から旅装の松井隆治(病身、癌)が情婦の三重子に支えられて入ってくる。

走り寄って手を添える仲本。

仲本「兄貴! そがな体で帰ってこられんでも……!」

松井「(早川に)おやっさん、この度は面倒なことで」

早川「オウ、こんな故郷で入院しとったんじゃろうが」

松井「喧嘩と聞いちゃ、カッカして身が持たんですけん、弾除けぐらいならまだ役に立ちますけん、頼ンます!」

早川「まア養生せんかい。三重ちゃんもこっちの水は久しぶりじゃろうが、のう」

三重「ええ、三年ぶりで……」

と落着かない目で店内の客の目を気にしている。

13 岩国・基地附近の特飲街路上(N)

米兵や娼婦たちの間を縫ってゆっくり進んでくるセダン。車中には、打本会若衆の森田と福田。

短くクラクションを鳴らす。

路傍で米兵とキスしていた売春婦(明美)がそれに気づいて、車に駆け寄ってくる。中に迎え入れる森田。

森田「手に入ったかの?」

明美、持っていた紙袋から米軍用拳銃を二挺と予備弾倉を出して渡す。

森田「ええ手ざわりじゃのう。(と一挺は福田に渡して)また頼むわい、戦争になりゃア消耗品じゃけんの」

と用意の札束を渡す。明美、数えながら、福田に、

明美「ヤッチン、ミーコが広島に戻ってきちょるの、知っとって?」

福田「ミーコ?」

明美「三重ちゃんよ、あんたの前のレコじゃった、広島で見たもんがおってじゃけん」

福田「どんなスケじゃったかのオ……」

相手の米兵が催促して窓を叩く。急いで降りてゆく明美。

福田「(まだ考え込んで)どがな体しとった女かのう……」

森田「馬鹿この、早よやらんかい!」

福田、車を走らせる。

◇  ◇  ◇

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