【映画】 ゴジラ (1954年)
『ゴジラ』
東宝が製作し1954年(昭和29年)11月3日に公開した初代『ゴジラ』。
巨大怪獣ゴジラが登場するゴジラシリーズ第1作で、日本の怪獣映画の元祖。海底の洞窟に潜んでいた侏羅紀(ジュラ紀)の怪獣「ゴジラ」がたび重なる水爆実験で安住の地を追われ、東京に上陸して破壊の限りを尽くす。監督は本多猪四郎、原作は香山滋、脚本は村田武雄と本多猪四郎、特殊技術は円谷英二。出演者は宝田明、河内桃子、平田昭彦ら。ジャンルは、怪獣映画・特撮映画・パニック映画・反核映画とされている。キャッチコピーは、「水爆大怪獣映画」「ゴジラか科学兵器か驚異と戦慄の一大攻防戦!」「放射能を吐く大怪獣の暴威は日本全土を恐怖のドン底に叩き込んだ!」
あらすじ
ある年の8月13日19時5分に小笠原諸島近海の北緯24度東経141度2分付近において南海汽船所属の貨物船「栄光丸」が突然SOSを発信して消息を絶ち、それを受けて現場に急行した同社所属の貨物船「備後丸」も同じ地点で消息不明になる。その後、大戸島の漁船が生存者3名を救助したとの知らせが入るが、その漁船もまた消息を絶つ。やがて漁師の山田政治まさじが大戸島の砂浜に漂着し、「やられただ...船ぐるみ」と言い残して意識を失う。島へ取材に来た毎朝新聞記者の萩原からインタビューを受けた政治は「確かに大きな生き物だった。不漁なのもその生き物が海の中で暴れているせいだ」と語り、島の老漁師は、一連の事態は大戸島に古くから伝わる海の怪物「呉爾羅(ゴジラ)」の仕業であり、ゴジラは海のものを食い尽くすと陸に上がってきて人間さえも食らうため、昔は若い娘を生贄にして遠い沖へ流すことでゴジラを鎮めていたと言う。その夜、暴風雨の中を何かが重い足音を響かせて島に上陸し、家屋を次々と破壊して住民や家畜を殺戮する。このとき政治と母のくにも押し潰された自宅家屋の下敷きとなってともに命を落とし、政治の弟の新吉だけが助かる。亡くなった政治と「くに」は大戸島の共同墓地に埋葬される。「調査団のメンバーとして大戸島に到着した山根・恵美子・尾形の3人は、まず島の共同墓地を訪れ犠牲者らの冥福を祈る。このとき3人は孤児となった新吉と出会い、政治とくにの卒塔婆に手を合わせる。
大戸島での大被害を受けて古生物学者の山根恭平博士は至急、調査団を編成して調査する必要があるとの見解を国会で発表し、大戸島への調査団の派遣が決まった。調査団には山根と娘の恵美子、恵美子の恋人で南海サルベージ所長の尾形秀人、物理学者の田辺博士らも参加することになったが、出発の日、大戸島へ向かう海上保安庁の巡視船「しきね」に乗船した恵美子は見送りの人々の中に元婚約者の芹沢大助博士の姿を認める。現地に到着した調査団は破壊された集落の調査を開始。田辺は一部の井戸だけが放射能で汚染されていることを確認し、山根は直径数メートルもある謎の巨大な足跡に絶滅したはずのトリロバイト(三葉虫)を発見する。トリロバイトの個体を見つけて興奮する山根だったが、直後に島の半鐘が鳴り、巨大な生物が八幡山の尾根の向こうで頭をもたげ咆哮するのを目撃する。
帰京した山根は巨大生物を大戸島の言い伝えによりゴジラと仮称し、巨大な足跡から発見されたトリロバイトとその殻から見つかった岩滓に残留放射能ストロンチウム90が認められたことを根拠に「海底の洞窟に潜んでいた200万年前の侏羅ジュラ紀の生物が、たび重なる水爆実験のために安住の地を追われたのではないか」とする見解を国会の専門委員会で発表する。その後もゴジラの仕業とみられる船舶の被害が相次いだため、ついに大戸島西方沖へフリゲート艦隊が派遣されゴジラに対する爆雷攻撃が実施された。その様子をテレビニュースで見て、貴重な研究資料であるゴジラを失いたくない山根は胸を痛める。
そんなある夜、東京湾を周遊中の納涼船「橘丸」の甲板でダンスに興じていた人々が目の前の海面に姿を現したゴジラを目撃し、パニックに陥る事態が発生する。ゴジラ問題を担当する特設災害対策本部は山根を招致してゴジラの生命を断つ方法を訊ねるが、山根は古生物学者の立場から水爆の洗礼を受けてなお生命を保つゴジラを抹殺することは不可能であり、むしろゴジラの生命力を研究することこそが必要であると力説する。一方、「芹沢博士がゴジラ対策につながるプランを完成させているかもしれない」とあるドイツ人が語ったとの情報を毎朝新聞のデスクから聞かされた萩原は恵美子を訪ね、芹沢との面談の仲介を依頼する。芹沢はかつて恵美子と婚約していたが、戦時中に右目を失い、人間不信にも陥って恵美子を遠ざけるようになり、あたかも世捨て人のように自宅地下の実験室に籠る生活を送っていた。恵美子とともに訪ねてきた萩原を芹沢は追い返し、恵美子に他言を固く禁じた上で「ある恐るべき実験」を見せる。それを目にした恵美子は恐怖のあまり悲鳴を上げる。
その夜、ゴジラが品川沖に現れ、重機関銃で迎撃する防衛隊をものともせずに品川埠頭から品川へ上陸する。山根は防衛隊員に「ゴジラに光を当ててはいけない、怒らせるだけだ」と必死に伝えるが受け入れられず、ゴジラは品川駅構内へ侵入。走行中の国鉄EF58形電気機関車と客車を蹂躙し、品川運転所と京急本線八ツ山橋跨線橋を破壊して東京湾に去っていく。この結果、甚大な被害が出たことにより諸外国の調査団が相次いで来日する事態となった。
東京湾に潜むゴジラから東京を防衛するため、対策本部は東京湾の海岸線一帯に巨大な有刺鉄条網を張り巡らせて5万ボルトの強力な電流を通じ、ゴジラを感電死させる作戦を実施する。鉄条網の工事が完成して間もなく、ゴジラが芝浦沖に出現。防衛隊は鉄条網の背後に榴弾砲や重機関銃、軽戦車を展開してゴジラを待ち受ける。やがてゴジラは芝浦海岸に上陸し5万ボルトの電流が流れる鉄条網に接触するがびくともせず、ゴジラが口から吐く放射能を帯びた白熱光で送電鉄塔はたちまち赤熱し水飴のように融け落ちる。防衛線を突破したゴジラは第一京浜国道を北上し札の辻で第49戦車隊を全滅させた後銀座へ侵入し、松坂屋・和光ビル・日本劇場・国会議事堂を次々と破壊するとともに大火災を発生させる。さらに実況放送中の報道陣もろとも平河町のテレビ塔をなぎ倒すと、勝鬨橋を横転させ破壊して東京湾に向かう。そこへ到着した防衛隊のF-86F戦闘機隊が追撃を試みるが、ゴジラはそれを振り切って海中へ姿を消す。東京は焦土の廃墟と化し、ゴジラによる放射能汚染は幼い子供たちにも及ぶ。恵美子は臨時救護所で被災者たちの救護に当たるが、眼前に展開するあまりにも凄惨な光景に耐え切れなくなり芹沢に見せられた実験の秘密を尾形に明かすことを決意する。それは水中の酸素を一瞬のうちに破壊し尽くしあらゆる生物を窒息死させ、さらに液化する液体中の酸素破壊剤「オキシジェン・デストロイヤー」の実験だった。芹沢は酸素の研究をしていた際、偶然にそれを発見したと言う。尾形と恵美子は芹沢のもとへと向かい、ゴジラを倒すためにそれを使わせてほしいと必死に懇願するが、芹沢は「オキシジェン・デストロイヤーは原水爆に匹敵する恐るべき破壊兵器になり得るものであり、いったんこれを使ったならば世界の為政者たちが看過しているはずはない。彼らは必ず武器として使用するに決まっている」と言い、使用を断固として拒絶する。しかし、テレビに映し出された変わり果てた東京の光景・苦悶する被災者たちの姿・女子学生らによる真摯な「平和への祈り」の斉唱を目の当たりにして心動かされた芹沢は、「今回1回限り」の条件でオキシジェン・デストロイヤーの使用を承諾し、それに関するすべての資料を焼却する。
海上保安庁の巡視船「しきね」の甲板で、田辺は東京湾に潜むゴジラの所在をつきとめる。芹沢は尾形のサポートを受けて海底に潜り、ゴジラの側まで到達したところで尾形だけを海面へ浮上させゴジラの足元でオキシジェン・デストロイヤーの安全弁を抜いて発生装置を一人で起動する。一瞬のうちに海水が激しく泡立ち、ゴジラが苦しみ始める。成功を確認した芹沢は海底から尾形に別れを告げると自ら命綱・送気管を切断し、自決することで自身だけが知るオキシジェン・デストロイヤーの秘密をこの世から完全に消滅させる。そして、ゴジラも断末魔の悲鳴を残し泡となって消える。
船上で事態の推移を見守っていた人々が歓喜に湧く中、山根は沈痛な表情で「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれないと呟く。人々は静けさを取り戻した海原に敬虔な黙祷を捧げる。
Wikipediaより抜粋
改めて大人になってから初代『ゴジラ』を観ると、政治色の濃さに驚く。時代背景から映し出される思想とともに。