元機械系設計者の独り言 4.ラーメン屋の一言
設計業務で苦労している方やこれからこの業界に足を踏み入れようかという方の参考になればと思い掲載を始めたコラムの4回目。
今回の話は「ラーメン屋の一言」 という話です。
以前、地元人気ラーメン店の特集番組が放送されていて人気店の店主がインタビューを受けていました。そこで話した一言が今でも印象に残っています。
「私はラーメンの達人ではないので、『はかる』ということを徹底しています。」
量を量る、時間を計る、温度を測る。
当たり前のことかもしれないけど、なかなか徹底している店は少ないような気がします。
この内容って、設計の業務でもいえることなのでは?
距離を測る・・・寸法1つ1つに意味(理由)がある設計
重量(体積)を量る・・・必要強度、コストへの影響を意識
強度を測る・・・必要強度を確保できる設計
温度を測る・・・耐用温度や温度の影響を意識した設計
回数、年数を計る・・・必要寿命回数を確保できる設計
コストを計る・・・低コスト設計
等々。
設計の達人なら無意識に実行できますが、設計初心者の方は、なかなか難しいはず。
まずは、距離を測る ということを一番意識するべきかと思います。
例えば、製品の中に内蔵される部品Aと部品Bの隙間はいくつにするべきなのか?
製品を小型軽量にするためには隙間がない方が良いのは当たり前ですが、いろいろな寸法ばらつきや衝撃による変形や組立しやすさなどを考慮して最低いくつの隙間が必要なのか?
これを考えることから設計が始まると思います。
前モデルを参考にして設計する場合も、なぜこの寸法になっていたのか?
その理由をしっかり把握してから設計スタートしていただきたいと思います。
おいしいラーメンを食べさせたもらうのなら、しっかり考えた設計を実行していきたいものです。
今回は本文が比較的短いので、身の周りの設計のヒントになるものの紹介第3弾です。
洗濯物を干すときに使うハンガーの構造に関する話です。
家で洗濯物を取り込む際にいつも思っていたのは、ひとつずつ洗濯ばさみから外す作業が面倒なのでまとめて外すことができないかな と思っていました。
買い物に行ったとき、そんな製品があることに気が付きました。
ニ〇リのハンガーがそんな考慮がされていたのです。もう当たり前の製品かもしれませんが。
普通のハンガーは下記のように洗濯ばさみを片側でのみ支持しているはずです。
このハンガーだと洗濯物を取り込む際に1か所ずつ洗濯ばさみをつまんで外すことになります。
下記はニ〇リのハンガーです。
洗濯ばさみが両側で支持されているのがポイントです。青い矢印方向に洗濯物を引っ張ると、赤い矢印方向の力が洗濯ばさみに発生するので洗濯物を痛めることなく簡単に外せます。これであっという間に取り込むことができるのです。
ただ、強風の時に洗濯物が飛ばされないか という問題があるので洗濯ばさみのバネ力の設定が難しいところですが。
このハンガーの良い点はもう一つあって、普通のハンガーは折りたたんだりほかのハンガーと重ねたりすると洗濯ばさみ同士が絡み合って外せなくなることが多いと思いますが、両側支持の洗濯ばさみは絡み合う箇所がないので外せなくなることが全くないのです。
1つの構造変更が、2つのメリットになるという まさに一石二鳥の良い設計事例だと思います。
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