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元機械系設計者の独り言       3.DIYは設計者の修業の場なり

設計業務で苦労している方やこれからこの業界に足を踏み入れようかという方の参考になればと思い掲載を始めたコラムの3回目。
今回の話は「DIYは設計者の修業の場なり」 という話です。
みなさんは、DIYの経験がありますか?
私は、家の中に収納棚を作ったり車のなかで軽く食事をするための小さなテーブルを作ったりいろいろなDIYをすることが多いのです。
このDIYをすることで設計の難しさを実感することができます。

だいぶ昔の話ですが、車に犬をいれて走行する際に後ろのラゲッジスペースに置くことが多いのですが、ミニバンの場合窓の位置が高いため犬が外の景色が見れなくてつまらなそうだったので犬を入れるケージを載せるテーブル形状の台を作ることにしました。下記写真が完成した状態ですが、下の木枠の部分をDIYしています。

設計にあたって、最初に必要条件をまとめてみました。
・犬が伏せた状態でも外の景色が見える高さを確保
・犬の体重とケージの重量に耐えられる強度を確保
・幅寸法は車内寸法ぎりぎりまで拡大したい
・装着、取り外しが簡単にできるようにしたい
この条件を頭に入れながら、車内寸法を測定し簡単な図面を描いていきます。
ホームセンターで強度を確保できそうな木材を探しながら必要な寸法にカットしてもらいます。

家に帰って組み立てて、1つ目の問題発覚
ねじ固定の際に、誰かに支えてもらわないと固定ができません。
基本は一人で完成させるつもりだったのですが、かなり難しいのです。
なんとか周りのものを利用しながら一人で組立て完成。

車内に入れてみます。
ここで2つ目の問題発覚
リアのハッチをあけて挿入しようとしたのですが、なんと入らないのです。
ハッチから向きを変えて入れることはできても、車内で回転させることができないのです。最終的には、車内で1軸で回転させるのではなく3軸(斜め)で回転させることで苦労しながらも何とか入れることができました。

ケージを載せて、犬をケージに入れてみます。
ここで3つ目の問題発覚
横揺れに対して、足の取付け部の強度がもちそうもありません。
さすがに強度計算はしていませんが、このくらいの取付け形状なら大丈夫だろうと思っていたのですが、考えが甘かったのです。犬の体重+ケージの重量 が横に揺れる時の荷重は想像以上でした。家屋で言ったら、地震のときに縦と横の柱だけでは簡単に倒壊してしまう のと同じで、筋交い(斜めの補強材)のような補強が必要だとわかります。
台の下にも犬用カート等を出し入れしたかったので斜めの補強はできず、金属の補強材で強度アップを図りました。

実際に車を走行してみます。
ここで4つ目の問題発覚
台の強度は問題ないのですが、台の上のケージが動いてずれてしまうのです。左右方向は、最初からずれを想定してレール形状にして固定していたのですが、前後方向はケージの方が台よりも大きいため規制ができなく固定していなかったのが原因です。
形状での対応が困難だったので、底面に薄いゴムを貼って摩擦で動かないようにして対応しました。
これでやっと完成して、犬も喜んで車に同乗しています。

このときのDIYで設計およびモノづくりの難しさを実感しました。
・組立性・・・それぞれの組立工程ごとにどのような向きで保持してどんな工具を使用してどうやって組み立てるか を想定した設計
・取付性・・・現場での取付方を想定した設計
・強度・・・組立時、取付時、使用時の必要強度の確保
これらを、身をもって実感できるって、”DIYは設計者にとって修業の場”と思いました。

今回のDIYでは上記項目を実感できましたが、本来は
・コスト・・・安価に製作する方法
・輸送性・・・出来上がった製品を効率よく輸送することを想定した設計
       例えば、取り付け足を折りたたみ式にして小型にするとか
・使いやすさ・・・ユーザーのいろいろな使い方を想定した設計
・安全性・・・ユーザーが使用時に怪我をしないための設計
こんなことも考えていかないといけませんね。

是非、DIY をして、設計者としてのレベルアップを図ってみましょう。



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