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元機械系設計者の独り言 1.設計のヒントは身の周りに転がっている

私は、1980年に電化製品の開発設計会社に入社して以来42年間にわたって空調機の構造(筐体)設計に携わってきました。
昨年3月に定年退職した私ですが、42年間の会社(開発)生活で学んだことがたくさんあります。
同じ業種で苦労している方やこれからこの業界に足を踏み入れようかという方の参考になればと思い、このコラムを執筆していこうと考えました。
まず1回目の今回は、「設計のヒントは身の周りに転がっている」 という話です。
私が携わっていた構造・筐体設計の業務では、ある程度決められたスペースの中に必要な機能部品(モーターや熱交換器等)や電装部品を効率よく配置し、組立性やコストやサービス性(分解しやすさ)や強度等を考慮しながら部品の分割位置や固定方法を考えて、部品の設計や機構設計をしていました。
設計段階で、
狭いスペースでの後の取り外しやすさを考えるとどんな固定手段にしたらよいのか?
どんな機構で動かそうか? 
いままで以上にコストを下げる手段はないだろうか?
いつも頭を抱えていました。
こんな時に参考になるのは、身の周りのものです。
電化製品、家具、玩具、自動車、自転車、文房具等を見ると、何かヒントになるものがあります。
在職中若手社員に対していつも言っていたことは、「身の周りの物を常に見るように」。

以前、私が身の周りで「この構造よく考えてるなぁ」と思ったものを紹介したいと思います。
今回は、スタバ等のカフェのゴミ箱構造です。
紙コップを集めるゴミ箱ですが、普通のゴミ箱だと下記のようにほとんど空気を捨てているようなもので、すぐにいっぱいになってしまいます。店員さんもゴミ箱の処理で大変ですよね。

スタバ等のカフェでよく見るゴミ箱は、入れるところが写真のように透明の筒になっていますよね。よく中を見ると紙コップがいくつか重なって置かれた状態になっていると思います。多分これは、図のように紙コップをいくつか重ねてから下に落下させる構造にしていると思いました。ここからの話は実際に中を見たわけではなく自分の想像ですが、下図のような構造になっていると思います。

この構造なら、紙コップを重ねて入れていくのでかなりの量の紙コップが収納できるはずです。
紙コップは、もともと輸送や保管時の効率を考えて筒の部分を斜めにして重なる形状にしていると思いますが、それをごみ箱でも利用とするという考え方が素晴らしいと思います。
下記のように最初から筒の形状をしたゴミ箱もありますが、オシャレじゃないですよね。

このようないろいろな構造が身の周りにたくさん転がっています。
「こんなの自分の製品設計には参考にならないよ」 と思うかもしれませんが、今は参考にならなくてもいつか参考になることがあります。
私は、面白い構造を見つけたときは、内部を見る前に(見れないことが多いが)まず自分だったら具体的にどういう機構や部品構成にするか を考えるようにしています。
そうすることで発想力もアップするし、記憶にも残りやすくなります。

「会社を出たら仕事のことは考えたくない」 と思うかもしれませんが、この行動で設計者として引き出しの数が決まってくるような気がします。
今日から、あなたも常に身の周りのものを見る習慣をつけてみては?

今回の記事は以上です。
記事をお読みいただきありがとうございました。

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