![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/167339545/rectangle_large_type_2_998392074a82b4fef3ac4a0e491c9773.jpg?width=1200)
旅の記憶:日常に溢れるビアサ@インドネシア・スラウェシ島②
翌日は良く晴れた。
トラジャは一言で言えば、インドネシアの白川郷みたいなところである。合掌造りの代わりにトンコナンという、屋根が舟形をした家が沢山ある。白川郷と大きく違うのは、彼らが長い歴史の中で、今もトンコナンに住んでいるところだ。てっきり一部でしか見れないと思っていたが、村々を歩くとトンコナンだらけ、市場もトンコナン、銀行もトンコナン、お墓もトンコナン、何でもトンコナン。トンコナンにすりゃいいってもんでねえやろっつうところにもある。
「俺の村、今日祭りある」とか言っているバイタクの運転手を一日チャーターし周る。「祭りではバッファローをばんばんサクリファイスするんだ、すげえぞ」とか言ってた。そんな楽しそうに言わなくても…。
垂直にそり立つ絶壁に人形が連なっている(どうやらその奥に死者が埋葬されているらしい)所を見に行ったりした後、例の祭りとやらに向かう。どうせそんな遠いとこじゃねえだろと思っていたら、えらい獣道を1時間以上登っていく。ケツが痛い。ほんとに祭りあるの1?てゆうか「俺の村で」とか言ってたからこんなとこの先に住んでるの?とか色々考えていると、
村にちゃんと到着。
村はトラジャ特有の舟型の屋根をしたトンコナンハウスで埋まり、中央に広場があってそこに巨大な牛が10頭程いた。村人も200人は集まっていてものすごい空間。どう考えてもこのご時勢の空間には見えん。ザ・アミニズムみたいな感じである。とか色々言いながらも、小さく祭りの出店出してた子が結構可愛かったので簡単にインドネシア語の勉強をさせて頂きながら、10円のオレンジジュースを買った。で、祭りが始まる。
割とえらそうな人達が10人位、マイクを回しながら順に呪文みたいな歌を歌っていく。すごく不気味である。不気味とはいっても9人目くらいになると飽きてきて、早く終わらねーかなーと思っていると、牛が中央に差し出された。
左前足を杭から伸びた太い綱で固定され、若い衆がヘルメットとナイフを持って近寄っていく。どうも戦うらしい。で、これまた何とも激しい光景が繰り広げられ、遅かれ早かれは牛によってまちまちだが、次々と牛が可愛そうな目にあっていく。
とにかくすごい光景で、村人さえ儀式の間は声を出すことが殆どなかった。
で、その後にその牛がどうなるかとなると、その場でえらい手際よく解体され、今度はその場がセリ市に変わるのである。牛革などは相当な高値で売れていた。で、たまに肩ロースあたりをぐっと掴んだ男が「これいる?」みたいな感じで寄ってきた。いる訳ねーじゃん!目の前であんなんになった牛を家に帰ってぐつぐつと鍋で煮込もうなんて奴いるのか?とはいえ、ここまできれいに解体され、売られていけば牛も何ぼか本望なのかも。
解体の際は線香のような(多分線香じゃないけど)煙が炊かれ、魂が天に昇っていったように思えた(続く)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/167339254/picture_pc_6b866b7eb5d971a32a8f9bf5bd65432c.png?width=1200)