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大家から極端な賃料値上げを求められた場合の対応指南書


背景
当社は店舗ビジネスをやってます。自社で所有しているケースもありますが、賃貸で入っているケースもあります。
最近首都圏のお店で、大家さんから大幅な賃料値上げ(今の1.5倍以上の賃料)を打診されることが相次ぎました。昨今の地価上昇、物価上昇というのが賃料の上昇圧力になっています。

しかし賃貸借契約において、大家さんから大幅な賃料値上げを要求された場合、借主としては冷静に対応し、法的根拠や合理的な主張をもとに交渉することが重要です。この指南書では、継続賃料の考え方を中心に、適切な対応方法を解説します。

  1. 継続賃料とは何か?
    継続賃料とは、既存の賃貸借関係に基づき、契約更新時や賃料改定時に算定された賃料のことです。これは、新規賃料(市場相場)とは異なり、現在の契約条件や経済状況を考慮して決定されます。
    継続賃料の特徴
    遅効性:市場価格が変動しても、それに遅れて緩やかに変化する。
    粘着性:現行賃料が基準となり、大幅な変動が抑制される傾向がある。
    これらの特性は、借主を保護し、急激な負担増加を防ぐ役割を果たします。

  2. 継続賃料の鑑定評価手法
裁判所や専門家による鑑定では、以下の手法が用いられます。
    差額配分法:現行賃料と適正賃料の差額を分析し、その差額を適切に配分して算定する方法。
    利回り法:不動産の収益性に基づき、適正な利回りから算定する方法。
    スライド法:経済事情や物価変動などを考慮して現行賃料を修正する方法。
    賃貸事例比較法:類似物件の賃貸事例と比較して適正な賃料を算定する方法。
    これらの手法は総合的に適用され、契約内容や締結経緯なども考慮して適正な継続賃料が導き出されます。

  3. 大幅値上げ要求への具体的な対応方法
    (1) 要求内容と根拠を確認
    大家から提示された値上げ理由を確認し、その具体性や妥当性を検証します。単に「市場価格が上昇した」という理由だけでは不十分です。以下の点について明確化を求めましょう:
    • 周辺相場との比較データ
    • 経済事情(物価上昇率など)の具体的影響
    • 建物設備やサービス内容の改善有無
    (2) 継続賃料の観点から反論
    以下の論点で極端な値上げ要求が不合理であることを説明します:
    • 遅効性:市場価格が上昇しても、継続中の契約では緩やかな変化が前提となる。
    • 粘着性:現行賃料と新規相場との間で調整されるべきであり、大幅な変更は不適切。
    (3) 周辺相場と比較
    近隣物件の類似条件での家賃相場データを収集し、現在の家賃が適正範囲内であることを示します。
    (4) 法的根拠を示す
    借地借家法では、以下の場合のみ増額要求が認められます:
    • 経済事情の変動(物価上昇など)
    • 周辺相場との乖離
    • 固定資産税など経費増加
    これらに該当しない場合、大幅な値上げ要求は正当性を欠くと主張できます。

    4. 専門家への相談と裁判への備え
    交渉が難航する場合、不動産鑑定士や弁護士など専門家に相談しましょう。また、裁判になった場合には以下がポイントとなります:
    • 鑑定士による継続賃料評価書が基準となる。
    • 継続中の契約条件や締結経緯が重視される。
    裁判所は「遅効性」「粘着性」を考慮した判断を下すため、この観点で主張することが有利です。
    5. 値上げ交渉時のポイント
    円満解決を目指すため、以下も検討しましょう:
    • 段階的な小幅増額案(例:数年かけて徐々に増額)。
    • 設備改善や修繕費用負担への協力提案。
    • 長期契約による安定収益メリットを大家に説明。


    結論
    継続賃料は、既存契約関係と市場価格変動とのバランスを取るための重要な概念です。遅効性・粘着性という特性を理解し、それに基づいて論理的かつ冷静に交渉することで、不当な値上げ要求に対抗できます。また、必要であれば専門家と連携しながら適切な対応策を講じましょう。

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