ケリー 7
奥のカウンターで チーママらしき女性とヒソヒソ話をしていたスーさん・・・
その様子を チラチラと横目で窺っていたアケミママだった。
しばらくして スーさんが こちらを見ながらチーママに何か呟いたようだった。
チーママも 同じようにこちらを見ながら頷いた。
それを待っていたかのように アケミママが「ちょっと席を外しますね!! すぐ戻って来るからゆっくりしてて下さいね!!」と言って席を立った。
「馴染みのお客さんに呼ばれたのかしら・・・」
K村の脇のマリちゃんがつぶやいた。
(しかし スーさんが「ママを呼べ」と言ったのは 誰の目にも明らかだった)
一旦 カウンターの奥に引っ込んで 何やら高そうなバッグ(!?)を持って戻って来たママ・・・
チーママに代わって そのまま スーさんの横に座ったのだった。
その様子を 眺めていたK村・・・
「あっ!?」
小さい声を漏らした。
俺 「どうした?? 何か思い出したのか???」
K村 「えっ!? ああ・・・ 奥のお客さんなんですけど・・・、店に入って来た時に 『どこかで見たな!』と思ってたんですけど 今 思い出したんですよ!! たぶん あの人 仕事がらみで行った展示会で会った どこかのお店の人ですよ!」
俺 「仕事がらみ??? 宝石関係ってこと???」
K村 「いや 宝石じゃなくて 確か バッグ関係じゃなかったかな?? ママのあのバッグを見て気付いたんですけど たぶん デパート関係者を集めた展示会で会ったバッグ屋さんだ!! 間違いない!!」
俺 「あの高そうなバッグか・・・ もしかして・・・」
K村 「あっ 先輩も分かりますか?? エルメスのケリーバッグですよ!!」
俺 「ケリーバッグ??? 銀座のママ御用達のバッグっていうのは聞いたことあるけど、アレ・・・、クロコじゃないのか??」
K村 「そうですね! クロコですね!!」
俺 「オイ! あれはいくらくらいするバッグなんだ?」
K村 「いくらって たぶん 500万円以上はするんじゃないスかね!!」
俺 「500万以上??? 定価がか???」
K村 「いや 定価はもっと安いんですが あのクラスを買うお客さんは ほぼオーダーっスから デザインを少しいじったり、特別カラーを指定したりして ドンドン値段が上がるみたいッスよ!!」
俺 「車のオプション追加と同じ仕組みか???」
K村 「そういえば同じッスね!! ギャハハハハハ・・・」
ダイヤといい バッグといい さすが銀座仕込みの高級志向???
感心しながら眺めていると 俺は 或ることに気付いたのだった。
さっきから2人は バッグを手に取って何やら話しているようなのである。
2人の話題は ケリーバッグ???
えっ!? もしかして・・・????
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