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昭和のサーフィン物語 3
『サー暴』の生き残りをかけた抗争(!?)の末に残ったサーフチーム・・・
当然 そこのリーダーは かなりヤバかった。
丸太ん棒のような太い腕を持ち、Tシャツがはち切れんばかりの胸板の厚みを誇っていた。
やはり 流行りのヒゲを蓄えて 見た目は その頃活躍していたプロレスラーのハルク・ホーガンに似ていたのである。
年齢は俺より3つ年上だったのだが、その危険なオーラ溢れる風貌は 人を寄せ付けないものを持っていた。
ある日曜日の夕方・・・
場所は 俺達が本拠地と狙っていた河原子ビーチ・・・
俺は ホット・ラッツの仲間達と一緒に ピークのはずれに浮かんでいた。
そのピークの先頭には ブルーOャークの神様達・・・
そしてちょっと離れて ホーガンさん御一行様達も浮かんでいた。
「おい ケン!! ホーガンさんの話を聞いたか??」
友達が話しかけて来た。
俺 「えっ!? ホーガンさんが また何かやったの??」
彼は気が短く ケンカでの数々の武勇伝を持っていた。
友 「先週 ホーガンさん達が黒潮ポイント(隣のポイント)に入っていた時に ●×プロが来たらしいんだ!!」
(●×プロとは 売り出し中の若手プロサーファーだった。当時のサーフィン雑誌は こぞって彼の特集を組んでいたものである)
俺 「●×プロが 茨城に来たの?? すげェ~な!! 見たかったな!!」
友 「でも そいつが ちょっと生意気だったらしく ローカルにも挨拶無しで仲間と一緒にピークに入って来たらしいんだよ!! まあ いつでもどこでもチヤホヤされてたから仕方がないんだろうけどね!!」
俺 「ふ~~ん・・・・」
友 「そして 調子に乗って 我が物顔でサーフィンしてるうちに ホーガンさんのそばでも乗ったらしいんだよ!!」
俺 「もしかして ドロップ・インしたのか??」
友 「いや ドロップ・インじゃ無かったみたい・・・ でも 際どかったらしいけどね!!」
(たぶん 無理やりアウト側に回り込んで乗ったのだろう!!)
俺 「ドロップインじゃなければ仕方がないな!! 相手はプロだし・・・」
友 「そしたらホーガンさんは どうしたと思う???」
俺 「どうしたって・・・、どうしようもないだろ!??」
友 「遅れてテイクオフして 近付いて行って そのまま殴りかかったんだって!!」
俺 「海の中でか??」
友 「海の中って言うか ボードの上から飛びかかって行ったって話だぞ!! そして そのままヘッドロックで固めて岸まで引っ張って行って、ボコボコに殴ったんだって!!」
俺 「ボコボコかよ!? 一緒にいた仲間は助けなかったのか??」
友 「うん・・・、それが あまりに突然の事で 誰も手を出せなかったらしいよ!!」
俺 「ホーガンさん・・・ キレちゃったんだな!!」
友 「それで そのあと●×プロが 浜辺で土下座して謝ったんだって!!」
俺 「すっ スゲェ~な!!」
当時この話は 全国的にも有名になり、『茨城の北方面に行く時は気を付けろ!!』と言うのが サーファーの合言葉になったぐらいである。
そのホーガンさんが 今 俺の近くで浮かんでいた。
(死んでもあの人に前乗りは出来ねェな!! ゾクッ!)
冷や汗を感じながらホーガンさんの横顔を眺めていると 何やら浜辺のほうが騒がしくなっていた。
「ブン ブン ブブブン!! パパパパ パン!!」(空ぶかしの音)
「パパラ パラパラ パラパパ パン
(ゴッドファーザー愛のテーマ)」(クラクション)
振り向くと バイクが数台とシャコタン・デッ歯の暴走仕様車に分乗した若者達が 防波堤の上で騒いでいたのであった。
(彼等の暴走の目的地は 昔も今も『海』と遺伝子に刻まれているらしい・・・)
どこから来たのか分からないが 10人ほどのグループが大声で騒いでいたのである。
すると あのホーガンさんが 「うるせ~な!!」と小さく呟いた。
そして すぐさま 近くに居た子分達に ひと事ふた言 声をかけたのであった。
『何かが起こる!??』
俺は 直感的に そう感じたのであった。
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