あいのうた。
2013年11月9日。千葉LOOKにて、初めて彼らに出逢った。
最初に少しだけ昔話。学生の頃から社会人になりたてのころまで、メジャーを目指すインディーズバンドをやっていた周りの人らの影響で私はライブハウスによく通っていた。その頃の音楽シーンは、今よりもバンドが盛り上がっていたように思う。大好きな人たちと時間を共にすることも、ライブハウスで生音を聞くのもとても楽しかった。あっという間に過ぎ去っていった音楽に満たされたその日々を私はとても謳歌していた。きっと所謂青春ってやつだったのだと思う。
時間を過ごしていくということは、自分の置かれている環境も、周りの環境も少しづつ変化していく。夢を叶える人もいれば夢が破れて別の道を選ぶ人も様々だ。皆、進み生きていくのだから懸命に生きていれば尚のこと、共に同じものを目指していたしても、ふと道が分かれることも当然あり得ることだと思う。それはタイミングの問題で人によって人生の区切りをつける時期はどうしたってバラバラだから、投げやりとかではなく前向きにどうにもならないこともあるのだと思うからだ。一緒にいれなくなることは寂しいことかもしれないけれど、道が分かれること、イコール、二度と交わることができないわけではない。縁があればお互いの良きタイミングでまた交わることは出来るはずだ。自分で大切だと想う相手なら縁ってやつをちゃんと大事にしていけばいいだけだとも思ったりする。
数年間とにかく入り浸っていた場所、世界を、自分も例外ではなく環境の変化とともに離れる流れとなっていった。一度離れてしまうと、当たり前に通っていた場所は、いつしか通えない場所になっていた。青春だっただけに甘酸っぱい思い出も楽しい思い出の数だけあって、記憶の奥底に丁寧に丁寧にしまいこんだ気持ちもあったりして。
それから数年、時が過ぎる。
ある日、今までライブハウスに行ったことなんてなかった友達が最近はまっているバンドがあるという。それが
「the other side of love」
だった。
ドキドキしながら久しぶりに踏み入ったその世界で初めて見た彼らは、私が今まで出逢ったことのないバンドだった。技術力よりも魂をと本人たちが言うだけあってリズムはとりにくいし、音響のせいなのか吠えるボーカルのせいなのか歌声もわかりにくい。はっきり言ってしまうとよく分からないバンドだなー、第一印象はそんな感想だった。お世辞にもうまいとは言えなかったのだ。でも今思えば惹かれるところがあったのだと思う。どういうわけか次回も行ってみようと思う自分がいたわけで。ちょうどその頃も環境のかわる時期だったせいか仕事が段々と忙しくなっていっぱいいっぱいになっていったにも関わらず、ふと時間が空くと、あー、アザラブのライブに行ってみようかななんて思い出し、少しづつではあったけれど適度にライブハウスに足を運んだ。最初は確かハコの後ろの壁際で腕を組んで聴いたりしていたように思う。回数を重ねていくうちに彼らの人柄や常連のお客さんたちのこともなんとなく知るようになり、彼らをどんどん好きになっていった。昔のライブハウスで過ごしていた感覚も思い出し、懐かしい記憶と新しく出会う現実の狭間で揺れながら、気が付けば最前列で盛り上げてやろうくらいな心意気を持ち、ライブに行くことが楽しくなっていった。
CDも購入したりした。インディーズのバンドでCDを購入したのは実はアザラブが初めてだった。ちゃんと聴いてみると、ライブハウスの音響ではわからない音を聞き取ることができた。歌詞も目で追いながらプレイヤーの癖を聞き取れるくらいに何度も何度も繰り返し曲を聴いた。そうしているうちに曲もすごく好きになっていった。なんで好きなのか理由なんてよく分からないけれど、きっと私にとって心地よい音だったのだろうと思う。感想を求められても、なんとなく流したりして彼らにちゃんと伝えた事はなかったけれど、作り出された旋律はかっこいいと思っていたし、魅力的だと実は思っていたりした。皆に知ってもらえるといいな、売れたらいいな、って思っていた。だから素直に応援したかった。スケジュール調整が出来る時はなるべくライブに通った。言葉でこの気持ちをうまく伝えることができるわけではないし、単純に売上になることが私ができる、尚且つ彼らにとっても必要な応援の形だと思っていたからだ。
アザラブが解散すると発表した時、びっくりはしなかった。そうか。とただただ思った。5年半。結構な時間だ。簡単に過ぎ行く時間ではない。しかもアザラブのライブスケジュールは凄まじく濃密だったから、感覚的にはもっと長い期間やっていたように覚えるくらいだ。もう観れなくなるのは、寂しい。でも道はこれからだってずっと続いていくのだから、選んだ道を元気に歩んでいってほしいと切に願う。どっちの道を選んでも、悩んで決めたことならばそれがしんどい結果に繋がったとしてもきっと正解だ。
そして。
そんな想いやら今まで観てきたライブの思い出やら、諸々抱えて昨晩彼らの東京でのラストライブに参戦したわけだけれども。(四月に仙台でライブがあるのはその場では知らなかった。)2曲目にやった曲が、実は私が一番好きな曲だった。最後に観れたらいいなってこっそり思っていたけれど、そんなに演奏してるのを私は観たことがなかったし、最近のライブでよくやっていた曲には含まれていなかったからセトリに入っていると思っていなかった。最後アンコールが出来て、何やって欲しい?なんて、もし客席に希望を聞いてくれるポーズが少しでもあったら、ほかの人らからは別の曲名があがるだろうけれど、その曲名を叫ぼうと思っていた。だから曲のイントロが流れた時、頭が真っ白になって一気に胸と目頭が熱くなったのは、ここだけの話。こんな、所謂、感極まるって経験は初めてだ。最後になって、…全くにくい奴らだぜ、なんてね。ライブハウスに入るまで、自分がどんな気持ちで彼らのラストライブを過ごせるか全然分からなかったけれど、曲が始まってしまえば、もう。心の中は熱い想いで満たされて、それが全てだったし、それで十分だった。
いつもは彼らがステージからフロアに戻ってくるまで待って、必ず声をかけていたけれど、昨日は敢えて、そのままその場から立ち去った。
ステージから向けられた、その時その瞬間の彼らの想いが詰まった
あいのうた。
それ以外何もいらなかったから。
最後に
きっと皆んなはビデオメッセージを入れて帰ったのだろうけれど、私は何も残さず帰ってきたからここに。
今までも。多分これからも。
愛してるよ。