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幻列車 準急スワン

軸配置C―Cの電気機関車。
フランス国鉄ではこのタイプに、いくたりもの名車が生まれました。
1955年に世界最速時速331キロを記録したCC7100しかり、3電源区間を駆け抜けたTEE用CC40100しかり。
日本のC―Cは山岳線用のEF62一形式に留まりましたが(事実上は試作機か?)、私はこの軸配置に高性能機の幻を見てしまいます。
そこで模型の世界では、長距離夜行急行の間を縫って走る、東海道線東京口の夜間準急として、EF62の仕業を差し込むことにしました。
BL小説のパイオニア(?)森茉莉の「恋人たちの森(61年8月発表)」に登場する架空の列車、奥白行き準急「スワン」がプロトタイプです。
天賞堂のC―C、EF62に列なるのは、サロンカー・オシ16を挟んだ銀色に輝く1等客車ナロ95-900番台5両と荷物車スニ41の7連です。
オシ16は大学ノートの表紙を素材にしたペーパールーフの自作。
寸法は、製作時すでに十数年を経ていた古雑誌「模型と工作」誌の記事に拠りました。筆者西村正平氏に感謝を捧げます。
ステンレス製の1等客車、ナロ95-900番台の正体は、トミックスのサロ153-900。
昭和30年代、急行・準急の空調など夢のまた夢だった時代ながら、外観だけはCC40100が牽く白銀眩い特急ミストラルの客車を真似たかったのです。
153系のサロは111系に転用された例が実際にありましたが、ここでは客車にコンバート。
しかし、客車に見立てるならば車軸発電機と蓄電池を、電車のまま押し通すならば電動発電機とパンタグラフを装備しなくてはなりません。
トミックスのモハ152非冷房の屋根板が入手できたなら、パン付きサロも面白いけれど、それはないものねだり。
ジャンクボックスにプラ製の新型蓄電池箱が5両分見つかったので、車軸発電機の手配は他日を期すとして、両面テープで床下に仮止めして当座は客車扱いとするつもりです。
テールには円板付きの後部標識(ダミー)をこれも仮止め。
原状回復を命題に据えるのは、いささか寂しい気もしますが。
サロ95の自重は29トン。ナロ10の26.9トンよりは重くても、「ナ」の範囲に収まります。そんなチェックを試みた上でナロ95と命名しました。
スニはアダチの完成品。
これのみ実車の登場は69年と時代が下がります。準急廃止は「よん・さん・とお」即ち68年のことでしたが、ここは機関車から荷物車まで青15号と銀の二色のみでまとめた編成美に免じてお許し願います。
我儘な上客の要望に応えたスニによる自動車輸送が、後年の「カートレイン」のヒントになった、などという作り話も、お役所臭い国鉄の歴史をあっさり骨抜きにする「偽史」として愉快ではありませんか。
手ごろな価格のプラ車両の普及は、妄想列車、妄想編成の自由度を大いに高めてくれます。
長く続けた道楽の途次、たまたま手元に集まったEF62、オシ16、スニ41を、好きな小説作品を触媒に、結び付けたのはプラ製電車でした。
もっとも、このサロ、発売からだいぶ日が経ってから、あっちの店で一両、こっちの店で一両とかき集めたので、購入価格には随分ばらつきがあります。
5両まとめて15万円で譲ってほしい、という方がもしあれば、どうぞお申し越しください。
少し考えてみたいと思います。

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