気象予報士試験対策 学科 一般知識 大気に働く力
この部門も毎回出題されています。計算力が必要な場合もあります。
🟢気圧傾度力
気圧の高い方から小さい方に働く力を気圧傾度力と言います。
等圧線の高い方から等圧線に垂直で低い方に働く力を言います。等圧線の間隔が込み入っているほど気圧傾度力は大きくなります。
静力学平衡の時に習った式も使います。ある高度の空気塊は地球の重力によって下向きに力を受けますが、重力に逆らって気圧傾度力は上向きに働いていることを思い出したでしょうか。
🟢コリオリの力
コリオリ力とも言います。地球が地軸を中心に回転しているために発生する見かけ上の力です。
緯度θ度の地点でv(m/s)で動いている空気塊に対するコリオリの力(c)は次の式で与えられます。
c=2Ωvsinθ 2Ωsinθをコリオリパラメータと言います。
コリオリの力は、sinθに比例するため、赤道上ではコリオリの力は全くありません。
熱帯低気圧が渦を巻くのはコリオリの力が影響しています。
🔵地衡風(ちこうふう)
平行な等圧線を仮定して、気圧傾度力とこの気圧傾度力が釣り合っている時に、等圧線に平行に吹く風を地衡風と言います。気象予報士の勉強を進めていくと、等圧線に平行に吹く地衡風は当たり前のことになります(不思議に思わなくなるということ)。
最初はどうしてなのかよくわかりませんでしたが、放送大学の「初めての気象学」という講座を視聴したときに、気圧傾度力とコリオリの力が釣り合って、地衡風が等圧線に平行に吹く解説を聞いて納得しました。独学では少々難しいと感じる方もいらっしゃると思います。
地衡風は北半球では等圧線の高い方を右側に見て吹く風です。南半球では逆になります。地衡風の大きさは気圧傾度力に依存するので等圧線が混んでいると大きくなります(高層天気図の場合は等圧線ではなく等高度線です)。
🔵傾度風
地衡風では平行な等圧線を考えました。傾度風は同心円上の等圧線で示される高気圧や低気圧を考えます。(曲率を持った等圧線という言い方をします)
傾度風は曲率を持った等圧線の接線方向に吹きます。
高気圧の場合は外向きに向かう気圧傾度力と遠心力が、中心に向かうコリオリの力が釣り合います。風の方向は、地衡風と同じく気圧の高い方を右側に向いて吹くので時計回りの方向になります。
低気圧の場合は、気圧傾度力が低気圧の中心に向かって(内向きに)、外向きに遠心力とコリオリの力が働きます。風の方向は地衡風と同じく気圧の高い方を右に見て吹くので反時計回りの方向に傾度風は吹きます。
🔵旋衝風
傾度風よりも曲率が大きくて、気圧傾度力と遠心力のみの釣り合いで吹く風(コリオリの力を除く)。竜巻の風がこれに該当します。
竜巻の渦は時計回り・反時計回りの両方があります。コリオリの力が関与しないので、渦の方向も両方あると覚えておけば良いと思います。過去問でも出題されました。
🟢地表付近の風(摩擦力を考慮に入れて)
地表付近では大地や海面などの摩擦を受けるため、等圧線を高い方から低い方へ横切って風が吹きます。等圧線と吹いている風が作る角度は概ね30〜45度(陸上部)となります。海上では陸上よりも摩擦力が小さく15〜30度程度です。
🟣温度風
実際の空気の流れとは違います。温度風とは二つの異なる高度で吹いている風ベクトルの差です。学科試験でもこの温度風に関する問題は出題されます。温度風で暖気移流や寒気移流の状態を知ることができます。上空に向かって風向が時計回りに変化している時には暖気移流が、反時計回りに変化している時は寒気移流があります。ここは重要なので覚えておきましょう。
🟡発散と収束
空気がある場所に集まってくること(空気の密度が増える)を収束といいます。複数の異なる方角から吹いてきた風が集まる場合や、一定の速さで吹いていた風が山などに行く手を遮られて減速する場合なども収束しているといいます。
反対に空気がある地点から噴き出すような場合を発散といいます。積乱雲からのダウンバーストが地表面にぶつかって広がっていく状況で地表面での風の動きは発散しているといえます。
🔴渦度(うずど)
空気が回転している状態である時のその回転状況を示す量として渦度があります。渦度の絶対値が大きいほど回転速度が速いことを意味しています。
渦度の符号ですが、反時計回りを「正」、時計回りを「負」と定義します。
絶対渦度=惑星渦度+相対渦度
惑星渦度の各緯度における値は 2Ωsinθ なので、コリオリパラメータと同じ値です。
絶対渦度は収束や発散がなければ保存されるという法則があります。
🟣試験対策 覚えておくグラフ
大気境界層での物理量の鉛直分布のグラフは重要です。学科試験で何度か出題されています。
最後までお読みいただきありがとうございました。