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気象予報士試験 学科 一般知識 熱力学その2

本日は、乾燥断熱減率と湿潤断熱減率と温位などについてです。
🟢乾燥断熱減率 dry adiabatic lapse rate  DALR
空気塊がその空気塊の外から熱をもらったり、与えたりすることなく(このことを断熱と言います)変化することを断熱変化と呼んでいます。
乾燥断熱減率は、空気塊が飽和していない(湿度が100%に達していない)状態で空気塊が上昇した時に、周りから熱の出入りがない時の気温の低下率を乾燥断熱減率と言います。
乾燥断熱減率は約10℃/kmです。この数字は重要なので覚えておきましょう。
乾燥断熱減率というのですが、空気塊が下降する場合には逆に同じ割合で気温が上昇します。気温が上昇するのですから乾燥断熱増率とも言えそうですが、そのような記述をしている教科書等はありません。
なぜ、空気塊が上昇すると気温が下がるのでしょうか?
熱力学第一法則で説明ができます。
ΔQ = ΔW + Δu
断熱変化なのでΔQは0です。 すると、 0 = ΔW + Δu となります。
空気塊が上昇すると上空は気圧が低いので、空気塊の体積が増えます。この時、体積を増やすためにエネルギーが必要となるのですが、その元となるエネルギーは空気塊の内部エネルギーから充当されることとなります。
空気塊の内部エネルギーが減少するということは、空気塊の分子の運動エネルギーが減少することを意味するので、空気塊の温度が下がるということになります。

🟢湿潤断熱減率 wet adiabatic lapse rate  WALR
                        moist adiabatic lapse rate. MALR
                        saturated adiabatic lapse rate SALR
飽和(湿度100%)した空気塊が断熱的に変化した時の気温が減少する割合を湿潤断熱減率と言います。乾燥断熱減率の英語は1パターンのみでしたが、「英辞郎」によると、上記の3パターンが表示されました。教科書では湿潤断熱減率のことを「飽和断熱減率」と書いているものもありました。
気象予報士試験で出題されるエマグラムでは、「湿潤断熱減率」という用語が使用されていました。
飽和した空気塊が断熱的に上昇する場合、気温が低下した空気塊にある水蒸気が凝結します。別のところで解説予定ですが、飽和水蒸気圧は温度のみに依存します。
このため飽和した空気塊の気温が下がれば飽和蒸気圧も小さくなり、水蒸気の状態で空気塊に存在できなくなった水分が凝結します。
水蒸気が凝結して気体から液体になるときに、エネルギーが放出されます。相変化により発生する熱を潜熱と言います。
空気塊は上空に行って気圧が下がるために気温が下がりますが、潜熱でも温められることから未飽和空気塊の気温減率である乾燥断熱減率よりも緩やかになります。
空気塊に含まれている水蒸気量の多寡に影響を受けます。
①対流圏下層の場合・・・平均して4℃/km
②対流圏中層の場合・・・平均して6〜7℃/km
エマグラムで乾燥断熱線が負の傾きをもったほぼ直線であるのに対して、
湿潤断熱線が上空に向かうにつれて負の傾きが小さくなるのは、対流圏の上層に向かって水蒸気量が減少することが影響しています。
対流圏中下層における湿潤断熱減率は5℃/kmがよく使われます。

🟢温位 potential temperature
 乾燥した空気塊を高度1000hPa面に移動させた時の当該空気塊の絶対温度を温位と言います。単位は℃ではなくケルビンを用います。
乾燥断熱線に従って空気塊を上昇または下降させるので、乾燥断熱変化では「温位」は一定となります。(温位は保存されるとも言います)

 基本書で「温位」について学科の勉強していた時に、この「温位」の勉強は面倒だなと思っていました。「温位」が保存されるとはどのような場合であるとか、一般知識の過去問で温位の変化を示すグラフを選択する問題などを解いているときは、一体何に役立つのかイメージできませんでした。
しかしながら、エマグラムや実技問題を解いているうちに、この「温位」や「相当温位」は相当便利だな(駄洒落です)と思うようになってきました。

乾燥断熱減率は10℃/kmでした。
例えば1km上空では、地上付近(1000hPa)の気温よりも10度下がります。未飽和空気塊であれば、温位は保存されます。
他方、対流圏の気温減率は6.5℃/kmでしたから、1km上空では気温は6.5℃しか下がらないことになります(未飽和空気塊の場合)。
ということは、対流圏では平均して1km上空の温位は3.5ケルビン高いことになります。
教科書などで、温位は上空に向かって高くなっていると記述してあるのはそういう理由からです。学科試験で出題されますが、温位については実技試験やエマグラムを通じて覚えた方が良いと思います。上記に記述したような無味乾燥なものだと覚えるのも大変です。私は、エマグラムを勉強して温位についてはよく理解できるようになりました。後述する相当温位も同じです。

🟢相当温位 equivalent potential temperature
単位は温位と同じく「ケルビン」を用いています。エマグラムや実技試験で用いられる850hPa面の相当温位の分布図などでお馴染みです。
学科試験の一般知識で相当温位を学習しても、あまり身につきませんでした。エマグラムや実技問題を解いていくうちに自然に覚えますので、焦ることはありません。
相当温位は空気塊の水蒸気量の多寡を示す指標として使用します。
空気塊に含まれる水蒸気をひたすら凝結させて放出して全ての水蒸気を取り除いた後にその空気を高度1000hPa面まで下降させた時の気温のことを相当温位と言います。
相当温位は断熱変化であれば水蒸気の凝結に関係なく保存される便利な指標です。
温位は水蒸気の凝結があると潜熱の影響を受けて保存されませんが、相当温位はその潜熱の影響も考慮して設定されている指標なのです。
(温位)<=(相当温位)

次回はエマグラムについて。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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