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ビジネス法務・2025年3月号「CLO・GCを目指す法務パーソンのキャリアパス」

ビジネス法務・2025年3月号が発刊されました。
今回は、「経営の一翼を担う法務―CLO/GCの役割と実践」という新連載が始まり、連載初回の今月号では、「CLO/GCとはどのようなポジションなのか?」というテーマで、法務部門における経営のトップポジションであるCLO(Chief Legal Officer)・GC(General Counsel)についてわかりやすく解説されています。

CLO/GCは法務パーソンにとっての企業におけるトップポジションであり、ここを目指してキャリアプランを描いている方も多いと思います。
この記事では、WEB等の公開情報に基づく日本企業におけるCLO/GCのキャリアをもとに、CLO/GCになるためのキャリアパスを考察してみます。


CLO/GCを目指すためのキャリアパスとは?

まず、CLO/GCへのキャリアパスとしてどのようなものがあるかについて考えます。

勤務先で出世するキャリアパス

一つ目は、勤務先で出世してCLO/GCを目指すキャリアパスです。

勤務先がCLO/GCのポジションを設置している場合には、そこを目指してキャリアプランを描いていく方が一般的です。
ただし、特にCLO/GCポジションを設置するような一流企業やグローバル企業では法務部員も多いため、同僚との出世競争に勝ち抜かなければなりません。
また、人事評価は単なる実力勝負ではなく、上司との相性やタイミング良く上のポジションが空くかどうかといった運の要素も大きくなります。

ただし、後述するように、転職の場合だとしてもいきなりCLO/GCのポジションをつかむのは、四大法律事務所出身でもない限り、かなり難しいと思われ、多くの場合はキャリアのどこかの段階においてCLO/GCのポジションを得るため出世競争に勝ち抜くことが必要になるでしょう。

転職によってCLO/GCポジションをつかむキャリアパス

転職によってCLO/GCのポジションをつかむキャリアパスです。
勤務先のキャリアだとCLO/GCへの出世が望めない、法律事務所からCLO/GCへとキャリアチェンジしたい、という方のキャリアパスです。

もっとも、実際のCLO/GCのバックグラウンドを見ると、転職によってCLO/GCのポジションを得るのは錚々たる経歴の持ち主ばかりです。
以下のCLOサミットに参加されていた著名企業のCLOの経歴が掲載されているので参考まで。

このように、転職によってCLO/GCのポジションを狙うとしても、自分自身がCLO/GCとして採用されるに値するバックグラウンドとスキルを身に着けている必要があるでしょう。

ベンチャー企業・スタートアップにおいて一人法務からCLOを目指す

個人的においしいな、と思うのは、ベンチャー企業やスタートアップで一人法務からCLO/GCを目指すキャリアパスです。
ベンチャー企業・スタートアップでは特にステージが若いほど法務部が存在しないことも多いのですが、有望なベンチャー企業・スタートアップで一人法務のキャリアをスタートさせて、経営陣に法務パーソンとしての力量を認知してもらえば、CLOポジションへ登用されることも期待できます。
CLOのポジションを設置してるJTC(伝統的な日本企業)は多いとは言えませんが、ベンチャー企業・スタートアップの場合は、CxOポジションを置いているケースが多い印象です。

後述しますが、転職によってCLOのポジションを狙う場合、自身のキャリアにおいてCLOの経験があることは非常に有利に働きます。
もちろん企業規模にもよるのですが、ベンチャー企業・スタートアップであったとしても、CLOのキャリアを経験していたというのは転職する場合においてもポジティブな効果を期待できるでしょう。

もっとも、ベンチャー企業・スタートアップは玉石混交であるため、有望な企業を見極める眼力が必要ですし、自身が経営者からCLOとして見初められるだけの力量やキャリアを身に着けていなければなりません。

CLO/GCとして登用されるために身に着けるべきスキルは何か?

弁護士資格

CLO/GCの経歴を見ていると、日本法もしくは海外法(特に米国州弁護士)の弁護士資格を有している方がほとんどを占めます。
法務担当役員である以上、法律の専門性を有していることは大前提であり、専門性の裏付けとなる弁護士資格は必要条件ではないでしょうか。

このうち、日本法の弁護士資格を得るためには、現在は法科大学院から司法試験、司法修習を経なければならずかなりの時間がかかりますが、資格取得まで比較的時間のかからない米国州弁護士資格を取得することを検討するのも良いでしょう。
米国州弁護士資格を取得には、多くの場合で米国のLL.M.留学が必要となります。ただし、後述のように英語力もCLO/GCを目指すにあたって必要となるケースが多いため、この意味でも役に立ちそうです。

もちろん、現存するCLO/GCにおいては、弁護士資格を有していない方も見受けられますが、法曹人口が増加した現在においては、これからCLO/GCを目指すにあたっては弁護士資格はマストになるのではないかという印象です。

法曹としての実務経験

次に、転職によってCLO/GCを目指す場合ですが、法律事務所に所属する弁護士としての企業法務経験があるとプラスに働くでしょう。
現にCLO/GCのキャリアを見ても、四大法律事務所出身の方が多く、名のある法律事務所のキャリアを経ているということは、CLO/GCを目指すにあたって法務の専門性をアピールするという観点で有利になるでしょう。
一方で、著名企業のCLOには検事出身の方も見受けられます。
やはり、CLOは法律そのものの専門性が求められる以上、弁護士等の法曹として直に法律実務に携わっている経験というのは、他の企業法務パーソンとの差別化という意味でも優位性を持つように思います。中でも、四大法律事務所や裁判官、検察官といったエリートと言われるバックグラウンドはCLO/GCを目指すうえで有利でしょう。

英語力

現時点において、日本企業でCLO/GCのポジションを設置している企業は多数を占めているとは言えません。
一方で、外資系企業においてはCLO/GCのポジションを設置しているのが一般的です。
日本企業においても、CLO/GCのポジションを設置しているのはグローバル企業が多く、世界的な日本企業や外資系企業でCLO/GCを目指すのであれば、前提条件として英語能力が求められることが多いでしょう。

ビジネス経験・マネジメント経験

CLO/GCのポジションに就く場合、少なくとも法務部は直下の管轄部門となるため、マネジメント力も求められることになります。
また、CLO/GCは法務担当とはいえ経営層の一員であることから、ビジネスセンスやビジネスマンとしてのキャリアがあると、CLO/GCへの登用に有利に働くでしょう。例えば、MUFJグループのCLOである森浩志氏は長い銀行勤務経験を有しています。
したがって、四大法律事務所から転職するケースでもない限り、法務部長といったマネジメント職の経験や、これに加えて、経営企画等の法務以外のビジネス経験を有していると、CLO/GCの職を得るにはポジティブな要素になると思われます。

CLO/GCとしてのキャリア経験

CLO/GCのキャリアのバックグラウンドを見ればわかる通り、CLOとして活躍している方の多くは、「もともとCLO/GCのキャリアを持っている」ケースが多いです。
CLO/GCは社内法務担当者としての最上位のポジションであるため、ヘッドハンティング等でCLOポジションを渡り歩いてキャリアを積み重ねていくのが一般的なCLO/GCのキャリアケースだと思います。

とすれば、これからCLO/GCのポジションを狙う場合、キャリアのできるだけ早い段階でCLO/GCを経験しておくことが重要になります。
社内出世によりCLO/GCのポジションを狙うのであれば、会社内での評価を上げるための人間力・コミュニケーション力が必要となるでしょうし、転職によってCLO/GCのポジションを獲得するのであれば、この記事で上げたスキルセットを一つでも多く取得していくことが重要です。
そして、CLO/GCのポジションに応募したり、所属先の企業でCLO/GCへと登用されるようアピールを怠らないといった積極的な行動が必要になるでしょう。

参考記事

この記事を書くにあたって、以下の記事を参考にしたので紹介します。

☝法務部員のキャリアについてはこの記事が分かりやすく解説されていました。

☝この記事で語られていた「企業の経営メンバーになるために重要なことは、社内で人事決定者に自分をアピールして、人からもアピールしてもらうことの重要性」が参考になりました。

☝MUFJグループのCLOである森浩志氏のインタビューで、銀行員から海外留学を経て西村あさひ法律事務所のパートナー、そして日本最大の金融グループのCLOへとキャリアアップした興味深い経歴が語られています。
MUFJグループは日本を代表するグローバル企業ですが、このような企業のCLOには並大抵の努力では到達できないことが想像できます。

☝厳しい競争を勝ち抜くCLO/GCを目指すキャリアパスとは真逆の法務のキャリアもあるのでご参考まで。

まとめ

2025年3月号のビジネス法務では、CLO/GCのポジションの記事を参考に、このnoteでは、CLO/GCのポジションを得るためのキャリアパスについて考察してみました。

2025年3月号のビジネス法務では、BCPに関する「主要法令の要請とは 災害・緊急時対応の法務」や「対話の質を高める株主総会」という実務に役立つ特集が組まれていました。

日々の仕事をこなしながら法律知識をブラッシュアップする時間を取ることは難しいですが、忙しい法務パーソンこそ、毎月のビジネス法務で最新の法律論点をアップデート習慣化することをお勧めします。






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