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社内弁護士として大切にしている3つのこと

私は法律事務所の弁護士を経て、現在のIT企業での社内弁護士というキャリアを歩んでいます。
外部のアドバイザーという弁護士の仕事と、組織内の法務担当者という社内弁護士では果たすべき役割や責任が大きく異なります。

ここでは、社内弁護士として働くうえで大切にしていること記事にしたいと思います。
それは、①当事者意識、②スピード、➂ビジネス理解、この3つです。

①当事者意識

「当事者意識」
自分自身が、その事柄に直接関係すると分かっていること。関係者であるという自覚。「―をもつ」

goo辞書「当事者意識」より

企業法務の仕事は、契約書の作成・チェックや新規事業の適法性審査、M&Aから取締役会や株主総会運営、トラブルやインシデント対応まで多岐にわたります。

これらの業務を通して一般的にいえることは、法務はあくまでサポート役であるということです。
しかし、サポート役であったとしても、いや、サポート役であるからこそ、「当事者意識」を持った行動が大切だと感じています。

例えば、日常業務の中で、明確に業務管掌の定まっていない狭間の仕事や他部署のミスに起因するトラブルについて、「これって本来は自分の仕事じゃないんだけどな。」「このトラブルの責任は私(自部門)ではないのに。」という態度は、すぐに周囲に伝わります。

実際にそのような状況にあったとしても、自分もその仕事の「当事者」であるという姿勢で仕事に取り組むことで、周囲からの信頼を得ることにつながるのだ、と感じてきました。

特に、法務は前述の通りサポートの役割が主なので、当事者意識を持った行動はなおさら評価されるように思います。

「この仕事の業務管掌は今は定まっていませんが、私が引き取りますね」
「このトラブルは解決までちゃんとサポートしますね」
「難しい仕事ですが一緒に頑張って乗り切りましょう」

私は、こんな言葉を使いながら、仕事に取り組むことを心掛けています。

②スピード

ITビジネスにおいては、競合をはじめとする外的環境も、組織異動といった内部環境も、とにかく変化が速いです。

例えば、ChatGPTは1年前は世にも出ていませんでしたが、今では仕事に不可欠なツールとなっています。

このような変化の速い環境においては、求められる法務の動きも「スピーディ対応する」、これに尽きると考えています。

実際に、私はある経営者から、法務に期待することは「とにかく早く対応すること、それがすべて」という言葉を聞いたことがあります。

以下は、私がスピーディに対応するために心掛けていることです。

・メールやSlackでメンションがついたらすぐに返せるものはすぐに打ち返す
・回答まで時間がかかりそうなら「いつまでに返事ができるか」をとりあえず返信し、期待値調整を行う
・難しい案件については経験に基づく一次回答を行い、調べたうえでの最終回答を提供するという二段階で対応する(対応例:「印象としては大きなリスクはないと考えますが、念のため法律・ガイドライン、判例を調べたうえで○月○日までに最終回答をさせてください」と回答する)
・自分だけで対応できない案件、部内でのリソースでは対応までに時間がかかる案件は外部のリソース(顧問弁護士等)を活用する

➂ビジネス理解

弁護士や法務担当者が法律に詳しいのは当然です。

しかし、企業内弁護士をしていて一番大切だと感じるのはビジネス理解です。

自社のビジネスを深くわかっていなければ、自社ビジネスから発生する法律問題に適切に対応することが出来ないからです。
また、社内弁護士の仕事は法律事務処理という純粋な弁護士業務を超えて、社内調整を含めた合意形成や、自社ビジネスの円滑なオペレーションの構築等、単純な法律問題の解決にとどまりません。

社内弁護士としてよりクオリティの高い仕事をしていくためには、法務という領域を超えて、自社のビジネスを深く理解すること。

そのために、私は以下のような工夫をしてきました。

○ヒト・カネ・モノ・情報の観点から、自社のビジネスがどのようにまわっているのかを調べる/社内人脈を活用してインタビューする
○自社のビジネスに興味を持つ自社ビジネスのマーケティング、営業、契約手続、生じやすいトラブル、契約の終了までをテキストや図解で可視化してみる
○自社プロダクトのアカウントを作って実際に触ってみる

法務は、契約書の作成・整備をはじめとする契約の成立から債権回収、知的財産権の管理まで、幅広い業務完了をカバーすることになります。
自社のビジネスやプロダクトを理解したうえで法務として関わることが出来ることが、社内弁護士としての醍醐味だと思います。

弁護士の世界には、刑事弁護専門の弁護士や、著作権法や独占禁止法といった特定の法律の第一人者がいます。
同様に、社内弁護士は、所属する事業会社のビジネスに最も詳しい弁護士になることができるのです。
私自身、社内弁護士として、自社ビジネスに最も詳しい弁護士になるべく努力を重ねています。

まとめ

法務担当者としてどのように仕事に取り組むか、人それぞれによって千差万別だと思います。
一人ひとりが仕事に対する哲学をもって取り組むことが出来るのが、法務という仕事の面白さだと思います。

この記事では私が社内弁護士として仕事に取り組む際に大切にしている3つのことを紹介させていただきました。

この記事が少しでも皆様の仕事の参考になれば幸いです。

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