子どもの認知能力を育てる 教師のためのソーシャル・スキル 著 河村茂雄
久しぶりに非認知能力の分野に戻ってきまして,今回はこちらの本を紹介させてください。
最近は「非認知能力」に関する研修会に参加したり,書籍を読んだりする機会が多く,書き手によって見る角度が結構違うことに驚かされました。
まだまだ研究中の分野なのですね。
とはいってもなんでもありではありませんので,核になる部分はしっかり「よりどころ」としていきたいと思っているところです。
非認知能力のイメージ
noteの非認知能力のコーナー前半では,「数値化しにくい能力」として書いてきました。
ある方は,「非認知能力と認知能力はコインの裏表のような関係なもの」,またある人は「人間の深いところにある願いや願望が言語化されたもの」という方もいました。
どれがいいとかではないかと思いますが,とにかく,その人そのものと深く結びついたものと言えそうです。
どの方もおっしゃるのは,一朝一夕に手に入るものでもないし,一方的に教え込むことができるものでもないということです。
それでも教員は「主体的に学習に取り組む態度」を評価しなくてはなりませんよね。
担任を受け持てる1年スパンではなく,せめて校種ごと,在籍している児童の構成年齢の一般的な発達に合わせた物差しをもちながら,あくまでも目の前の一人の子を見続ける姿勢が必要そうです。
なぜ非認知能力が大切なのか?”ふつう”の子が抱えているもの。
本書では,”ふつう”の子たちが抱える問題の原因の一端に,非認知能力の欠如があると指摘しています。
ここでいう”ふつう”の子というのは,発達障害の診断を受けていないお子さんたちを差すのですが,そのような子たちにも,例えばグループ活動が難しい,自分で判断行動できない,他者に攻撃的な態度をとってしまうといった悩みが多くみられるということです。
この点は,感覚として,おそらく日本各地,多くの学校でそのような状況にあるのではないかと思われます。
教師も子どもも,そしてお家の方も,こういった困ったことがあると,さまざま作戦を練るわけですが,その一つに「特別支援」の観点から見て対策を練っている場面も多くみられると思います。
ですが,現段階で私が感じているのは,「対応は似ているかもしれないけど,アプローチの視点は違う」気がしています。
発達障害と非認知能力は似てる?それとも?
非認知能力は発達障害の分野ともかなり近い,似通った問題行動が見られるのかもしれませんが,それらの分野は別のものとして考えなくてはならないことなのではないかと今のところ考えています。
発達障害というよりは,「愛着障害」の分野と近いものがあるのではないでしょうか?
ここでは「愛着障害」については触れませんが,幼児期の養育が大きく関わってきます。
幼児期の教育は大きく成長した後の教育と比べて,その人に与える影響が大きいといわれています。
それらの項目は非認知能力ともとても似ている部分があるのではないでしょうか?
ぜひ,そこら辺を体系化している資料があれば教えていただきたいです。
私たち教員にできることは?
一朝一夕には手に入らず,教え込むこともできず,幼児期の影響が大きく関わってくる「非認知能力」ですが,これだけ見ると,私たち教員にできることがとても困難なものに思えてしまうかもしれません。※私は小学校教員です。
ここは考えようですが,「幼児期の教育は家庭の問題だ。」「学校には最低限のマナーを身に着けた状態にさせて入学させるべきだ。」「長期的にしか見とれない成長の面を,一担任が責任をもって指導するのはおかしい。」といった他責志向ではなく,「今の年齢の子どもたち,目の前の子どもたちとどう向き合うことがベターなのか。」を考えれば,多少は気楽になるのではないでしょうか。
よく一般的に言われる,「目の前の子どもを大切に」ということの解像度を上げていくことで,その中に「非認知能力」の視点も組み込まれていくはずです。
私個人的には,上越大の西川純先生の提唱する『学び合い』という考え方が最もしっくり来ているのですが,そこはたくさんの発信がすでになされているので,検索していただけたら嬉しいです。
ということで,『学び合い』の視点からは考えず,本書にあることを参考に,具体的に教員ができることをもう少し考えていきたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
誰かの「よりどころ」になりますように。