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ミッシング・チャイルド・ビデオテープに寄せて

映画「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」を観ました。
終始陰鬱な雰囲気が味わえる作品でした。
平日の朝イチ、劇場内には僕ひとりきり。自分が登場人物なら、映画が終わる頃に消えていなくなるんじゃないか…
そんな不安に駆られながら。

※以下ネタバレありです。物語の内容に触れております。お気をつけください。


①派手さをいっさい排除した演出

いわゆる「ジャンプスケア」といわれるびっくり要素はありません。というか、怪異は案外そんなものなのかも。
その代わり、真綿で身体を撫でるかのような恐怖が、少しずつ…少しずつにじり寄ります。

人が消えた瞬間を撮らえたビデオテープ、あるはずのない廃墟、遭難や事件の絶えない山、亡者からの電話、上がれない二階、何かを見つめる子供、遺されたカセットテープ、怪談…
幽霊が人を痛ぶるバリエーションの豊富さと陰険さが窺い知れます。
たくさん提示された怪異と伏線。
それらがどう収束されるのか。

②難解な最後

正直なところ、僕は今作のラストを完全には理解できませんでした。
あちら側のすることなんて、現世に生きる我々に理解できてたまるかと言われれば、それまでですが。
観た日はすでに、背筋さんの短編もパンフレットも無く、副読本が全くない状態の僕。
この考察にどこまで意味があるのかわかりませんが、自分なりに解釈したいと思います。

まず、お兄さんと新聞記者がなぜ、山を降りることができたのか。
お兄さんには母の霊、新聞記者には父の霊が憑いており、それぞれが身代わりとなったのではないか。
お兄さんの前に現れた母の霊は、「早く見つけてあげて」と催促をし、新聞記者には父の霊から電話で「息子をよろしく」とお願いがされていました。
同居人と、二人の大きな違いはそこです。
おそらくは、廃墟内で新聞記者を掴んだ腕は、父の霊なのではないでしょうか。
いま、行ってはダメだ。とりこまれてしまうぞ、と。

同居人は最後、ビデオテープにとりこまれたかのような描写をされていました。
あの山で生きたまま消えた人々は、別の媒体に入れられてしまうということなのでしょうか。
つまり、あのカセットテープには、山岳登山部のメンバー達が、いまでも。

山に捨てられた信仰物により、祀られぬ神々が自身で神殿をこさえて、不敬者を贄としている…ということなのか。

民宿の息子さんは、二人が無事に逃れたことを知って、油断して山に近づいたのでしょう。
では、彼は何に見つかって、何に気づいて、そのまま姿を消したのか。
これが、全くわからない。
それだけでなく、最後にお兄さんの前に現れたのはなんだったのか。
この辺りが、考察の余地として心にもやを残すのでした。

③印象深かったもの

やはり、藤井隆さんの絶妙な存在感が印象強く。
新聞記者の携帯を凝視するシーン、視線がホットホットでした。あれアドリブかなぁ。なんか素で驚かれてる感じでしたよ。

主人公二人ですが、友人という関係とは思えない雰囲気でしたね。それなのになんだか同居人が新聞記者に気のある素ぶりをしたりしてて、軽い性格ということなんでしょうか。

面白いというよりも、雰囲気を楽しみ、考察に耽る映画でした。
なんだか背後から視線を感じる気がしたので、足早に映画館を出たのは、また別の話。

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