デジタル弱者に冷たい社会 目線を低くしたサポート必要 7 希望のランプ 2024年12月31日 11:29 世の中はどんどん便利になるのに、デジタルに疎い者は置いてきぼりになる―。そんなデジタルデバイド(格差)と世間の冷たさを実感する出来事がありました。 ある路線バスを通勤で利用する私は12月30日、定期をICカードからスマホアプリに切り替えるため、運行会社の窓口で手続きをしました。ICカードの決済サービスが来年春で終わり、新しい乗車券システムに切り替わるためです。 「窓口のスタッフがサポートしてくれて、短時間で終わるだろう」。そんな軽い気持ちで発券機で整理番号の紙を受け取り、窓口に向かいましたが、実際の手続きはすこぶる面倒で閉口しました。【いきなり門前払い。入力にイライラ】 なんと、スタッフにいきなり門前払いされたのです。「アプリに登録してください」と告げられ、封筒大のパンフレットを渡されました。仕方なく、近くの椅子に座り、パンフレットに記載された手順に沿ってスマホをタップしていく。メールアドレスはもちろん、新たにパスワードを設定して入力しなければなりません。何度もエラーが出てイライラしました。 パスワードは英語の大文字と記号を交えて8文字以上が条件。最初はこの条件に気付かず、英語の小文字と数字だけでパスワードを入力していたため、次に進まなかったのです。大文字と記号を入れるよう表示されたエラーメッセージが目に留まり、ようやく突破。さらに銀行の口座番号や住所、電話番号を打ち込み、登録を終えました。ここまで優に10分はかかりました。 これだけではありません。所定の申込用紙にも銀行の口座番号と住所、電話番号などを記入しなければなりません。 さあ、今度こそ。気を取り直し、再び発券機で整理番号の紙を受け取り、窓口に向かいました。スタッフがパソコン画面をじっと見つめ、アプリの登録情報と申込用紙の内容、運転免許証の住所を確認します。アプリと銀行口座をひも付けしてくれました。「これで手続きは完了しました」とスタッフに告げられ一安心。正味約20分の手続きを終え、窓口を離れました。【再び途方に暮れる】 ほっとしたのもつかの間、アプリを確認するためスマホの画面を見て、再び途方に暮れます。 「あれ?肝心のアプリのアイコンがないぞ」 新しい乗車券サービスでは、アプリを起動してQRコードをスマホ画面に表示し、バスの出入り口の端末にかざして決済します。当然ですが、アプリが画面になければバスに乗れません…。 【3回目の窓口訪問】みたび発券機で整理券を受け、窓口で尋ねました。「アプリが画面に表示されない。これではバスに乗れない。どうしたらいいのか」と。すると、スタッフの中年女性から意外な答えが返ってきます。 「ここではスマホの操作は分からないんです。コールセンターは年末年始で休業していますし…。別の窓口であれば分かるのですが、そこもお休みなんですよね」【教えられた最終窓口は「忘れ物センター」】スタッフは困惑の色を浮かべ、しばらくおろおろ。「忘れ物センター」の電話番号を記した名刺大の紙を私に手渡し、「ここで分かるかどうか分かりませんが、かけてみてください」とだけ告げてきました。私は心の中で皮肉をつぶやいていました。「私が何かを忘れたのではなく、あなたたちが案内の重要な部分を忘れているんですけどね…」【基本的なアプリのインストールを教えてくれなかった】仕方なく忘れ物センターに電話をかけてみました。電話に出たスタッフの中年男性に事情を話すと「アプリなので、インストールしないといけません」と、さも当然とばかりの返答。私は少し腹が立って「いやいや、それならば窓口のスタッフが言わないといけないですよ。でもスタッフはアプリのインストールのことは言わなかった。そもそもパンフレットにそれが書いていません。書かないといけないでしょう」と苦言を呈しました。すると相手は「パンフレットの後ろに書いてあるんですけどね」とぼそり。パンフの裏表紙の下に、小さく「アプリはインストールしてください」と書かれていたのです。しかもインストールの詳しい説明は書かれていません。私はあぜんとしつつ「こんな後ろに書いてあるようでは、だれも分かりません。私ぐらいの年代で分からないのだから、おじいちゃん、おばあちゃんが分かるわけがない。あまりにも不親切です。アプリはインストールが必要だと、パンフレットの前のページに大きく記載してほしい。ちゃんと全ての窓口で説明できるようにしてください」と苦情を訴えました。私は窓口で手続きを完了すれば、アプリはスマホ画面に自動的に表示されると思い込んでいました。いや、そうでないなら、アプリのインストールの必要性と方法を、窓口で教えてほしかったと、心の中でつぶやきました。 【デジタル弱者に冷たい】スマホの基本的な操作はみなさんがよく知っておられるだろうから、そこまでは必要ないですよねー。先方のサポート態勢は、そう言わんばかりの冷たい内容と感じました。スマホを持つことが当たり前になり、誰もがサクサクと操作できる「スマホの達人」であることが前提になっていないでしょうか。これは何も今回のバス決済の手続きに限らないでしょう。世間で常識とされるスマホの基本操作でつまずき、官民のサービスを受けられない人はたくさんいると思います。【必要なスマホ基本操作もセットで教えて】民間企業や行政は、サービスだけでなく、スマホの基本的な扱いも含めてセットで教える必要があるでしょう。特にスマホの扱いに不慣れな高齢者は、ますます置き去りにされてしまいます。本来、サービスの恩恵を享受すべきなのに受けられない「デジタル弱者」が増えていくのではないでしょうか。超高齢化社会に入ったニッポン。サービス提供者は、目線をもっと低くして、丁寧にサポートしなければなりません。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #スマホ #アプリ #デジタル #デジタル社会 #デジタル弱者 7