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ヒメものがたり その5(最終回)

2003年8月30日(土)
里親さんが見つかる。

地元のドッグクラブ主催の里親会に参加し、引き取ってくれる人が見つかる。とても、優しいそうな人で、きっとヒメを大事にしてくれること間違いない。本当によかった。

犬猫譲渡会に参加
女の子と遊ぶ

しかし、いい加減なもので、心からホッとしているのに、こうなってしまうと寂しさがこみ上げてくる。何という、贅沢な話だ。

ワクチン接種をして、一週間後にお渡しすることにする。

2003年8月31日(日)
一週間後の嫁入りと思っていたのだが、ワクチン接種後は一週間動かさない方が良いとわかり、急遽、本日お嫁に行くことになった。

突然のことに、息子も悲しそうだった。モーニャン(妻)は、終始泣いてばかり。

ヒメがいなくなった息子の部屋は、本当に寂しく、ケージを片づけながら、涙が出てきて困った。今にも、ベッドの隅からピョーンと姿を現しそうなのである。あの可愛い顔がまぶたから離れない。

2003年9月1日(月)
散々迷った挙げ句に、里親さんに電話をして、ヒメの様子を聞いてみた。元気にしているそうである。泣かないので、行方不明になってしまって困ってしまったとのこと。鈴を首につけようと思っていると、優しい声で話してくれた。

間違いなく、ヒメは幸せにしている様子である。本当にほっとした。

それまで、泣いてばかりいたモーニャン(妻)もこの話を聞いて、吹っ切れたように泣かなくなった。

大変ながらも、楽しい夏の思い出だった。まるで、神様が連れてきた天使のようなヒメ。これからも、飼い主さんのところで一生幸せにな!!

そして、トノの分も一生懸命に生きるんだぞ!!

もうこれで、ヒメに会うこともないだろう・・・・と、思ったのだが。

2003年9月20日(土)
数日前に、ヒメがうちにやってくる夢を見た。

どこからともなく、ピョコピョコと、元気にはねながらやってきて、そのままうちに入っていった。首にはあり得ないほど大きな鈴が付いており、顔はニコニコと笑っていた。良い夢だった。

モーニャン(妻)とイトーヨーカドーに買い物に行く車中で、里親のMさんから電話が入る。嫌な予感がした、というより、それしかなかった。娘さんにアレルギーがでてしまったそうで、これ以上ヒメと暮らすのは困難だとのこと。

「わかりました。すぐに引き取りに行きます。」と即答した。考えてみれば、一度、里親さんになって下さったのだから、それなりの責任があるわけで、わたしが、すぐに「引き取ります」も変な話である。

夕方4時の約束で、電話を切った。もちろん、その後の買い物は気持ちが落ち込んでしまい、何も買わずに帰った。

帰宅して、ボーッとしているともう一度、Mさんから電話。先方でも、もう少し引き取り手を探してみるとのこと。やはり、当初の予想通り、誠実な人だ。

2003年9月27日(土)
午前中に、Mさんから電話。

一週間探してみたんだけど、新しい飼い主さんは見つからないとのこと。連れてきていただくように告げる。やはりだめだったのか、これからBuddyとの関係をどうしよう、と悩んでしまう。

11時半頃、ヒメ里帰り。ヒメは大きくなっていた。大きな鈴は付けていなかったが、お利口に私たちに抱かれて、いきなりノドをゴロゴロならし始める。会うまではこれからの不安でいっぱいだったのに、げんきんなもので、会ってしまうとすぐに離したくなくなる。Mさんのところでもうちと同じくヒメと呼ばれていたそうである。

そそくさと、ケージを組み立て、トイレの用意をする。モーニャン(妻)が妙にうれしそうである。さっきまで、顔に縦筋がでるほど沈んでいたくせに。お腹が空いているといけないので、ドライフードと水を出してやる。少し食べて、早速、遊びはじめた。うちを出ていったときと全く同じヒメに時間が戻ったようである。

その後、借りていた本の返却に図書館にいると、再度Mさんから電話が入る。長男さんがひとり暮らしをしているのだが、彼が飼ってくれるという。今日の夕方、大阪に帰るので、その時に連れて帰りたいとのこと。すぐに家に帰り、あわてて送り出す準備をする。

4時過ぎにやってきた長男さんは好感の持てる人だった。今度こそ、もう帰ってくることはないだろう。今までの、画像をCD-Rに焼いて渡した。

なんか、あわただしい一日だった。まるで、遠くへ行く前にわざわざ挨拶に来てくれたような気がした。幸せになるんだぞ!!ヒメ!!

*****

こうして、私たちがヒメ、そしてトノと暮らした短くも濃厚な時間は終わった。
あれから21年、きっとヒメも天寿をまっとうして、久しぶりに会ったトノと天国で暮らしていることだろう。

ありがとう、ヒメ、トノ!!

ヒメ
トノ

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