河川敷ライドで毎日出会う人々のことを妄想する
毎日、河川敷を自転車で走ることが日課になっている。
7時30分くらいに家を出て河川敷を下り、一番海に近い橋を渡って折り返す。その後対岸を上り、出発から約20kmの地点にある大堰を渡って、家に帰る。時間にして約1時間強のコースだ。
今回は、その河川敷を自転車で走っているときにほぼ毎日出会う人々の話だ。
まずは、黒装束自転車乗りの男性。
日焼け防止なのだろう。全身黒いライディングウェアを着ている。もちろん長袖長ズボン。そして、鼻口も黒い布で覆って、サングラスをかけているので、それは本当に全身真っ黒だ。ただ、ヘルメットだけは白い。
そんな格好なので、年齢はわからない。しかし、ほぼ毎日出会うので、定年退職をしているか、あるいはなんらかの理由で仕事を休んでいるのだろうか。
いや、もしかすると会社を経営しており重役出勤なので、朝活で自転車を走らせているのはないだろうか。1時間ほど自転車を走らせた後にシャワーでも浴びてすっきりしてから、真っ黒のベンツで出勤するのかもしれない。
あれだけの完璧な黒装束からは、そんなことを妄想してしまう。
次は、とにかくライディングウェアが派手な男性。
最初に見たのは全身ピンクのライディングウェアだった。年齢は明らかに私よりも上だ。一見70歳くらいに見える。自転車はロードバイクではなくクロスバイクで、速度は速くないが、それなりの速度でゆったりと走っている。
ピンクのウェアを見慣れたころに、今度はオレンジのウェアで走ってきた。とにかく派手なウェアにこだわりがあることは確かだ。
何かの団体の主催者ではないだろうか。例えば、高齢者だけのダンシングチームとか。自転車を降りるとびっくりするようなキレッキレのステップでダンスを披露して見せたりするのかもしれない。
きっと乗っている車も派手なんだろうな。一時期トヨタが販売したピンクのクラウンなんかが似合いそうな気がする。もしかするとオレンジ色の外車のオープンカーだったりするかも。
さて最後は、ひたすら歩く人。
見たところでは、年齢は私よりも上だろう。とにかく河川敷をひたすら歩いている。実はこの人、私が河川敷を自転車で走るようになった数年前からずっと歩いている。私が少々時間をずらしても必ずと言っていいほど出会うので、相当長い時間をかけて歩いているようだ。
小さいリュックを背負って前屈みになって、手を真横に振りながら、黙々と歩いている。夏場は半袖半ズボンで出ている肌は真っ黒だ。背が低く、前屈みで手を真横に振る姿が非常に特徴的で遠くからでもすぐにその人だとわかる。
これは間違いなく「修行」だろう。外観から判断するのは間違っているが、外観的には宗教関係者には見えない。なにか心中に秘めた思いがあり、それを成就するための行為がこの「歩く」という行為なのではないだろうか。
それは、愛する人を亡くした悲しみを忘れるためかもしれないし、過去に自分が犯した過ちへの懺悔なのかもしれない。彼が自分の気持ちに区切りをつけて、その歩みを止める日はいつなのだろうか、そんな日はくるのだろうか。
個性的な人々の横を自転車で走りながら、私の妄想は今日も止まらないのだった。