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臨機応変というのは規則の中では通用しないのか、たとえお年寄りが困っていても....。

昨日の病院での出来事である。16時からの予約で、5分前に受付を済ませて、待合室でnoteを見ながら、順番を待っていた。

平日の16時となると働いている人は来るのが難しい時間なので、中には、会社を早退したであろう若者もいるが、患者さんのほとんどは定年退職などで現在は働いていない年齢だと思われる方々だ。

しばらくすると、一人のお年寄りが自動ドアから入ってきて受付に向かって歩いて行った。年齢は80代くらいで、足取りもおぼつかない雰囲気だ。ゆっくりとした足取りで受付まで行くと、保険証と病院の診察券を出した。

受付には50歳くらいの女性が座っていた。

その受付の女性がお年寄りの保険証を見るなり、
「〇〇さん、この保険証期限、切れてますよ!」
とお年寄りの方に向かって顔を上げた。

「えっ、この前はこの保険証でみてもらったんやけど….。」
とお年寄りの頼りない、消え入りそうな声。

「前回は7月だったのよ。この保険証の期限は7月31日で、 
 今日は8月でしょ。」
と受付の女性。

「そ、そうなんか….。」
とお年寄り。

「新しい保険証が自宅に届いてるはずなんやけどねぇ。」

そんなに広くない待合には二人の会話は丸聞こえである。待合室の患者たちの耳は二人の会話に釘付けだ。私の隣に座っている、同じく高齢の患者はニヤニヤと笑いながら見ていた。

私は黙って、スマートフォンでnoteの記事を読み続けた。いや、読み続けているふりをした。

以降の二人の会話。

お年寄り「今日のところはこれでなんとかならんやろか,,,,。」
受付女性「これやったら、全額払ってもらって後から返金ということに
     なるんやけどねぇ。」
お年寄り「……..。」
受付女性「まだ、16時30分までに受付したらええから、一度自宅に帰って
     持ってくる?」
お年寄り「……..。」
受付女性「それなら予約を取り直すので、出直してもらえる?!」
お年寄り「……..。」
受付女性「明日の〇〇時なら空いてるわよ。」
お年寄り「わかった….。そうするわ。」

その後、お年寄りは足を引き摺るようにして、自動ドアまで歩き、開いた自動ドアの向こうに消えて行った。

どこからどうやってきたのか知らないが、車の運転はすでにしていないかもしれない。本数の少ないバスに揺られて市内のハズレから来たのかもしれない。

今回のお年寄りに悪気がないのは火を見るよりも明らかだ。例えば今回は期限切れの保険証で診てあげて、「次回は必ず持ってきてよ。」というわけにはいかないのだろうか。

もちろん受付の女性を責める気は毛頭ない。規則なのだから、病院としては正しい判断だ。それにお年寄りだからという理由は、規則の前では通用しない。そんなことを言いだしたら、規則の意味がない。

しかし、高齢者の体力的なものや、移動手段の制約などを考えると、もう少し臨機応変にできないものかと、ふと思った出来事だ。できないことは重々理解しつつも….。

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