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[バレーボール男子日本代表]世界ランク2位アメリカと比較してみた②

(画像:DAZN News JP)

さて、前半の投稿では、主にオリンピック予選の3戦を通じてアメリカというチームがどのようなプレーをするのかについて考えていきました。

後半では、日本代表とアメリカ代表にはどのような違いがあるのかという事を考えていきたいと思います。

その前に、今回の日本とアメリカの比較をしてみようと思った理由について書いておきます。
まず、今回のようにグループ制の試合というのは、総当たり戦になるのでグループ内の2チームを分析するというのに非常に適しています。
自チーム以外の対戦相手が同じであることと、その対戦時期が非常に近いことが理由です。
今回でいうと、アメリカと日本は、それぞれ同じグループ内の7チームと対戦をしましたが、日本vsアメリカの直接対戦以外は当然同じ6チームと対戦をしているのです。そしてその対戦日の違いは長くても4日くらいで、どのチームも選手のコンディションの変化は小さかったはずです。
また、ここまでレベルの高いチームが揃うグループ戦というのもまれだと思います。特に、トルコ・セルビア・スロベニアはいずれもポーランドやフランスなどヨーロッパの強豪に勝ちうる非常に手ごわい相手でした。

このようにオリンピック予選は分析にはうってつけの機会だったわけでしたが、もう一つの理由は、来年のオリンピックで日本代表がアメリカと対戦する可能性があるからです。
今回のオリンピック予選ではアメリカに勝利する必要がありませんでしたが、オリンピック本戦でメダルを狙いのであれば話は別です。
メダル獲得には負けたら終わりのトーナメントを勝ち進まなければなりません。その初戦がブラジルだろうと、ポーランドだろうと、アメリカだろうと勝つしかないのです。

またまた話が長くなってしまいましたが、今回の試合分析をする背景を聞いていただいたうえで、さっそく比較をしていこうと思います。

目次はこちら☟


また、前回の投稿の続きとなっていますので、まだお読みになっていない方はこちらから☟


試合スタッツの比較

項目別成績(上が日本、下がアメリカ)

小さくて見づらいと思いますが、上が日本、下がアメリカの項目別成績になっています。
全体の数値で見てみると、

サーブ効果率    日本:10.6% アメリカ:12.2%
ブロック効果率   日本:22.6% アメリカ:26.1%
アタック効果率   日本:44.0% アメリカ:38.6%
レセプション返球率 日本:62.9% アメリカ:57.5%
ディグ返球率    日本:77.1% アメリカ:77.2%

となっています。
アメリカはサーブ・ブロック・ディグで数値がよく
日本はアタック・レセプションで数値が良いという結果になりました。

これから分かることは3つあります。
それはアメリカが
・強烈なサーブと高いブロックによる「サーブ&ブロック」のスタイル

・ブロックとディグの関係がいい
という事です。
もう一つは、それに対して日本は
・サーブレシーブが良くそこから多彩なスパイクを繰り出すというスタイル
という事です。
アメリカは力強さとそれに基づくディフェンス、逆に日本は高いディフェンスとそれによる多彩な攻撃を得意としていると考えられます。

細かい項目についてですが、今回はアタックとレセプションについて見ていきます。

・アタック - "Attack"

項目:アタック

アタックは全体のスパイク効果率で見ると日本の方が高いですが、その内容は大きく異なっています。
下の表は、レフト・センター・ライトへのトスの割合です。
下の図は、トスがどこにどの割合で上げられたか、そしてそのスパイク決定率を示しています。セッターの正位置はだいたい上の軸の「3」と書かれたライン上部です。
「オープントス」というのは、乱れた状況でコンビが使えない時に上げるゆったりとしたトスを言います。二段トスとも言います。

日本とアメリカを比べてみると、
表から…
・アメリカの方が7%ほどセンターの割合が多い
・日本の方が8%ほどライトの割合が多い
・決定率はアメリカのライトが18%ほど低くなっている
図から…
・アメリカのセッター寄りのクイックの割合が多い
・アメリカのレフトへのオープントスの割合が多い

ということが分かります。

アメリカがセッター寄りのクイックを多用していてその決定率がとても高いことが分かります。

日本のトスの割合とその内訳
アメリカのトスの割合とその内訳


・レセプション - "Reception"

項目:レセプション

注目はやっぱり、高橋藍選手の異次元のレシーブ力ですね。
世界トップクラスのリベロ(L)である22番ショージ選手よりもレセプション返球率がいいという結果でした。
日本はサイドの12番高橋藍選手と14番石川選手がメインでレセプションする形でしたが、アメリカは8番デファルコ選手と22番ショージ選手の本数が多くなっていますね。

レセプションは基本的に前衛・後衛のアウトサイドヒッター(OH)の2人とリベロ(L)の3人で行います。
しかし日本はミドルブロッカー(MB)の2番小野寺選手もレセプションに参加するときがあります。MBの中ではレセプションが上手なので戦略的に参加しているのだと思います。

一方アメリカは、オポジット(OP)である1番アンダーソン選手が劣勢時にレセプションに参加することがあります。もともとアウトサイドヒッター(OH)なのでレセプションも得意です。
基本的にレセプションの陣形は世界共通ですが、日本とアメリカでは多少の違いがあるようですね。

返球位置について図で示してみました。
レセプションが上の軸の3くらいの位置に集まっているのが分かると思います。ここはセッターの正位置になります。
ここを中心に、正確に返った順にA,B,Cパスと評価を付けています。

日本はCパスである青色の散らばりは小さいですが、アメリカは青の散らばりが目立つように見えます。
日本の方がアメリカよりも正位置周辺に返球されていることが分かると思います。

Aパスである赤の散らばりに注目してみましょう。
日本はネット近くとネットから少し離れた位置に分布していますが、アメリカはほとんどがネットに寄った位置に返球されていることが分かると思います。
これはセッターが好む返球位置に関係しています。
日本のセッター(S)の8番関田選手は身長が低いためネットに寄りすぎるときれいにトスを上げるのが難しくなります。
逆に、身長の高いアメリカのセッター11番クリステンソン選手はツーアタックも得意としているのでネット近くの返球を好んでいるのだと思います。

全体を通した比較

ここまで項目別に分析したことをまとめました。

・アメリカは強力なサーブで相手のレセプションを乱し、相手のオープンの
 スパイクをブロックとディグの両方で攻撃のチャンスをつかむ
・レセプションはネットに近めのトスを上げてセッターに近い位置のクイッ
 ク攻撃を多用する

・日本は高いディフェンス力でトスに繋げて、そこからサイドを中心としたコンビを使って得点を重ねる

日本がアメリカに勝つためには

最後に、アメリカを日本はどのように攻略するか考えていきたいと思います。

アメリカはやはりレセプションが少し低くなっていたのが気になります。
セットを失った場面でもレセプション成功率が低くなっていました。
特に2番ラッセル選手はレセプションがあまり得意ではないと思われるので、集中して狙っていくのが重要だと思います。
しかし、アメリカのセッター(S)11番クリステンソン選手は多少乱れてもセンターからのクイック攻撃を使ってきていました。
これは厄介ではありますが、勝負所で強引にクイックをねじ込んでくる場面もあり、これをしっかり2枚ブロックを付けることが出来たら、一気に流れを持っていくことができると思います。

逆に日本はレセプションが良いのでサイドを軸にしながらも、クイック攻撃をより多くしていくことが大事だといえます。
特にアメリカはフェイント処理も含むディグがとてもいいので、石川選手の巧みなフェイントでも得点をするのが難しくなると思います。
フェイントは拾われると相手のチャンスになることが多く、アメリカ相手には多用しない方がいい気がします。
なので、もっとセンター攻撃を増やして、強く打つスパイクを増やすことも必要なのかなと考えています。

最後に

今回は、日本代表を中心にアメリカ代表のプレーを考えてみました。
直接対戦していなくても十分に分析ができるということが分かって、個人的にも成果が得られた試合でした。

オリンピックに向けて他にも試合を観ていきたいと思います。
また、国内外のクラブの試合も分析してみてナショナルチーム時とのプレーの変化とかも見れたらと思っています。

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