鉄コーティングは鳥害がヤバいって聞くけどマジなの?
前回は、「鉄コーティング作業の準備と酸化管理」というテーマで、具体的な手順についてご説明いたしました。
冒頭に軽くまとめると鉄コーティング作業では以下の手順を実施します。
準備するもの
コーティングマシン、鉄粉と焼石膏の混合物、噴霧器、スクレーパ
コーティング作業の手順
種子をコーティングマシンに投入し、鉄粉と焼石膏の混合物を少しずつ加えながらコーティングし、水を噴霧して種子に丸みをつけます。最後にスクレーパでムラを整えます。
酸化管理
コーティング後の種子を管理し、酸化を促進します。酸化反応熱を放散させるために広げたり、水を噴霧したりします。完全な酸化の確認や乾燥後の保管も行います。
これらの手順により、鉄コーティング作業を効果的に準備し、種子の酸化を管理します。詳しく知りたい人は下記のリンクからお読みいただけます。
鉄コーティング栽培における鳥害対策は重要です。特にスズメなどの鳥類が作物に被害を与えることはよく知られています。しかし、後から対策を施すことは効果が限定的であり、鳥の襲来を完全に防ぐことは難しいです。
そのため、鉄コーティングは鳥害対策の一つとして有効です。鉄コーティングによって種子の表面は硬くなり、鳥にとって食べごたえがなくなります。鳥は食べにくい種子を避ける傾向があり、鉄コーティングされた種子は彼らにとって魅力のないものとなります。
さらに、鉄コーティングは播種後も効果が持続します。種子が地中に埋まっている間も鳥にとっての誘引物となりにくくなります。この長期的な効果によって、鳥害のリスクを軽減することができます。
また、鉄コーティングは環境にも優しい手法です。化学的な鳥害対策と比べて環境への負荷が少ないため、農作物の生育環境や周辺環境に与える影響を最小限に抑えることができます。
つまり、鉄コーティングは鳥害対策において効果的な手法であり、後から対策を施すよりも事前に鳥の食欲を刺激しない状態にすることが重要です。鳥害は農作物への大きな被害をもたらす可能性がありますので、鉄コーティング栽培に取り組む際にはこの対策をしっかりと行うことが求められます。
生産者の方々からは、鉄コーティングによる鳥害の実際の被害はあまり感じられないという声もあります。種子が代掻き後に軽く落水され、その後に種子を直接置いていくため、鳥が種子の存在を判別すること自体が難しいのです。
ただし、一部の検証結果では、鉄コーティングによって鳥害が軽減される可能性が示唆されています。実際に行われた実験や調査では、鉄コーティングされた種子への鳥の食害が減少したとの報告があります。鳥は鉄コーティングの種子を好まず、他の餌源を探す傾向があるようです。
このような検証結果は、一定の効果を示唆していますが、地域や環境によって異なる可能性もあります。そのため、実際の栽培状況や鳥の発生状況に応じて、鉄コーティングの効果を確認することが重要です。生産者の皆さんには、自身の経験や周辺の情報を参考にしながら、最適な対策を実施していただくことが求められます。
なお、鳥害に対する対策は地域や作付け条件によって異なる場合がありますので、具体的な鳥害対策を検討する際には、地元の農業関係者や専門家との相談が重要です。それに加えて、鉄コーティングの効果に関する研究や実践例などを参考にしながら、最適な対策を見つけることが大切です。
鳥害の被害と抑制
鉄コーティング比によるスズメ害の試験
スズメ害に対する鉄コーティングの効果を評価するため、以下の手順で試験が行いました。
雀害の影響を排除するため、スズメが接触できないように種籾を保管し、試験のために回収します。
回収した種籾は試験管に分けられ、容量と重量によって正確に測定されます。
試験は公平性を確保するため、コーティングされた種子の配置はランダムに行われます。試験管内での配置は均等に行われ、同じ数のコーティング種子が含まれるようにします。
試験管内のコーティング種子は2回にわたって測定されます。最初の測定後、種子を取り出して再び測定を行います。これにより、コーティングの効果が一貫しているかどうかを確認します。
この試験によって、鉄コーティング比によるスズメ害の効果が定量的に評価されました。試験結果は、鉄コーティングの有効性や効果の程度を明らかにする上で重要なデータとなります。ただし、地域や環境によって結果は異なる可能性があるため、これらの試験結果を基に実際の栽培において適切な対策を検討することが重要です。
スズメの被害
鳥害(特にスズメ)に対する鉄コーティングの効果について、以下のポイントがあります。
鉄コーティングにより籾が硬くなるため、鳥害(雀害)が抑制されます。鉄コーティングによって種子の表面が滑らかになり、鳥が籾を噛んで食べることが困難になります。
鉄コーティング比が0.3以下の場合、地域によってはスズメの被害が比較的少ないと報告されています。ただし、地域や環境の条件によっては、多少の被害が発生する可能性があります。
鉄コーティング比が0.5以上の場合でも、スズメより大きな鳥による食害が報告されています。これは鉄コーティングの効果が限定的であることを示しています。
以上の情報から、鉄コーティングはスズメの被害を抑制する効果があるものの、完全に被害を防ぐことはできない可能性があることが示唆されています。地域や鳥の種類によっても異なるため、実際の栽培現場での観察や対策の検討が重要です。
カラスの被害
カラスによる被害に関する情報について、以下のポイントがあります。
カラスが圃場に入ることはありますが、これまでの経験からは心配されるほどの被害は報告されていません。ただし、地域や環境によって被害の程度は異なる可能性があります。
地域によっては、鉄コーティング比が低い場合にカラスによる食害や引き抜き、踏みつぶしの被害が出ることがあります。鉄コーティング比が低い場合は、カラスの注意を引きやすくなると考えられます。
カラスの被害が心配される場合は、圃場周囲にテグス系(細いワイヤーなど)を張ると効果的です。これによりカラスの侵入を防止することができます。
カラスの影響や被害が心配される地域では、浸種種子に「キヒゲンR-2フロアブル(有効成分:チウラム水和剤40%)」原液を種子重量の2%で塗抹し、その後鉄コーティングを行います。これによりカラスの食害を抑制する効果が期待されます。
以上の情報から、カラスによる被害を防ぐためには、鉄コーティングに加えて周辺の対策や防除剤の利用など、複数の対策を組み合わせることが重要です。地域の特性や実際の被害状況に合わせて対策を検討しましょう。
カモの被害
カモによる被害に関して、以下のポイントがあります。
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